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年越し蕎麦

作者: Ruria

「もう、夜11時かぁ」


 デジタル時計の数字を見て、ぼんやりと呟いた。


 12月31日。大晦日。

 本当にこの一年、色々とありすぎたなぁ。

 そう思いながらも冷蔵庫から『えび天蕎麦』を取り出し、電子レンジにかける。


 500ワット、4分40秒。


「そういえば、入社したのって、去年の1月からだよねぇ......」


 そう。現在務めている会社は、とある食品加工工場だ。そこの作業員として、去年、1月頃から勤務しているのだ。


 その前は、同じように、工場勤務をしていたが、そこの従業員から受けた、度々のパワハラにより、辞めて休職したんだ。


 本当は違うところに、転職しようと思っていたんだ。

 でも、なんだかんだ言って、今の仕事も『とある事』を除いては、天職だし、平和だ。

 だから実質、辞めることも無く、充実した1年を迎えることが出来たんだよなぁ。うん。


 そう思いながらも、電子レンジのタイマーを覗くと、まだ30秒しか経ってなかった。


「ありゃりゃ。まだ早すぎたわ」


 思わず鼻で笑ってしまったが、なんでこんなにせっかちなのだろうか。焦る気を落ちつかせながら、自分の席に座ってテレビの画面を眺める。


 あ。そうそう。『とある事』というのは、そうだなぁ。入社したての新人の頃から遡ることになる。


 まぁ、レンジのタイマーも、やっと1分経った頃だし、まだ蕎麦は出来上がらない。


 なので、どういう事なのか、簡潔に纏めると、こんな感じである。


 新人から外れて派遣社員になった頃から、会社の先輩に付け狙われ、2人きりになると、向こうから執拗に質問攻めをしてくる。という事だ。


 質問内容は大体、


 今日はどこにいるの? や、

 体調はどう? とか。

 好きなタイプは? 

 海外には行ったことあるの?

 彼氏は年上? 年下? 

 遠距離恋愛とか、経験したことあるの? など。


 こんな感じで、些細なことから個人的なことまで、ありとあらゆる範囲で、聞いてくるのです。


 まぁ、最初は害は無いと思って普通に答えていたが、それが半年以上続くと、流石にしんどくなってきてしまうのは事実。


「あの、私に彼氏いるの、知ってますよね? なので、これ以上、しつこくしないで欲しいのですが......」


 と言ったはいいものの。


「うん。知ってるよ!」


 と言って、何の反省もせずに、次の日も繰り返し聞いてくる。実に厄介な先輩です。


 知ってたらもうやらないで欲しいのですが......。


 ま。そんな状況が、事の今まで続いている訳ですが、あ。タイマーがもう3分だ!


 そういえば、仕事納めの28日の時、先輩から「どこか出かけたりしないの?」て聞かれたんだった。その時、「え? コロナ渦なので、どこにも行きませんよ?」て言ってしまったのを思い出したんだ。


 でも、幸い、住所とか家近辺に何がある、というのは、彼には言ってないし、LINEも教えてない。だから、きっと、平気だろう。うん。


 



――チーン。



 あ。思い耽ってたら、蕎麦が出来てたわ!

 なので、レンジから蕎麦を取り出すと、蓋を開けて食そうとした。


「さてと、いただきます!」



――ガタッ。



「あら? 何だろう? 気のせいかな?」


 1階アパートの窓が、何故か少し、ガタついていた。

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