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5話 魔王様は思い悩む

翌日、朝、いつも通り幹部の女(どうやら順番を決めているらしく、この日はピクシズだった)に起こされ(襲われ?)て、着替えを済ませる魔王ウォルグ。


今日は、あの女、さすがに朝からは来ないのか……


コレットが来ない事に、なんとなくモヤモヤした感情に浸るウォルグ。

来たら来たで、なんやかんや文句を言うだろうクセに、来ないなら来ないで何とも言えない気分になる面倒臭い魔王様である。


会議が始まる前には来るだろうか?

……いや、別に来て欲しい訳じゃないんだけどなっ!?

『来たらうっとおしいなー』って懸念してるだけだしっ!?

ほ、ホントだぞっ!?


心の中で叫ぶウォルグ。

誰もそんな事は聞いていないし、心の中で言い訳がましい事を言っても意味がないのである。


玉座の間に移動すると、幹部たちはすでに揃っており、会議の準備は整っている。


あれー?

まさか、今日は来ないのか?

2日連続で来ていたのに……どうしたんだ?


「では、本日の会議を始めますぞ」


ダミアンが会議の開催を宣言する。

他の幹部たちも、真剣な顔で頷く。

会議はつつがなく進行し、各国の情勢などが報告されていく。


……まっ……まさか!?

ちゅ、ちゅーをしたのがマズかったのか!?

それで、来なくなってしまったのか!?

ぐおおおおおおおおおおお!! 早まったかっ!?

いや、しかし、男女のもつれは、ちゅーで解決するはずっっ!!

……はっ!! 待てよ!!

もっ……もしやっっ!!

俺のちゅーは下手だったのかぁっっ!!??

下手くそなちゅーだったと言うのかっ!?

……あぁっ!! それとも、俺がビビったせいか!?

ビビって、ほっぺたにしかちゅーをしなかったからなのか!?

い、いや、違うよ? ビビってないよ?

本気を出せば、唇にだってちゅーできたよ?

本気の本気を出せば、絶対にできたもんね!!

ちゅーぐらい、余裕だっつーの!!

ああ、それにしても、ほっぺただったけど、柔らかくてあったかかったなぁ……

ホントは唇にちゅーしたかったなぁ……


「魔王様、聞いておりますかな?」


ほぅわ!!

ダミアンが怪訝な目で俺を見ている!!


「うむ、聞いておる。続けろ」


ああ……

なんで、来なくなっちゃったんだろう?

いや、まだ、来ないと決まった訳じゃない!!

会議が終わったら来るかもしれない!!

いや、別に来て欲しい訳じゃないぞ!!

ちょっとだけ来て欲しいだけだ!!

ちょっとだけだぞ!!


そんな阿呆な思考を巡らすウォルグを他所に、会議は進んでいく。

特に大きな進展は無いようだ。


「とりあえずは現状維持といったところか。他に何か問題はあるか?」


ウォルグの問いに対し、幹部たちは特に問題はない事を次々に伝える。


今日も大きな問題は無いか……

よし、部屋に戻って、ちょっと髪型を整えようかな?

あ、いや、歯磨きをしておこうかな?

べ、別に、あの女が来る事を期待してる訳じゃないぞ!!

単に身嗜みは大切なのだぞ!!


「父さんから連絡があったわ」


全員が「問題なし」と答えるかと思っていたところで、最後のシャルシャロールが異変がある事を告げる。


「む? 何かあったのか?」


大陸の南西に位置するドラコニス王国。

そのドラコニス王国を南北に流れるトニトルス川の西側、その最南端に広がる鬱蒼とした森の中に聳え立つクレブスト山。通称『嘆きの山』。そこに君臨する山の(ぬし)であった『獅子王』カイゼルこそが彼女の父親である。

とある事件で魔王ウォルグと『獅子王』は一戦を交え、その時にシャルシャロールがウォルグの元へと来る事になったのだが、それはまた別のお話。

『獅子王』カイゼルは、山の主を退いていおり、今は、全長5、6メートルはあろうかという巨大な狼、ペルグランデダイアウルフのディルスが山の主を務めている。


「どうも、エルレヘムの冒険者が大狼ディルスの子供を拐ったみたいなのよね」


「なんだと?」


エルレヘムとは最南端に広がる森の手前にある小規模な街である。

そのエルレヘムの冒険者が欲を出して、愚かにも大狼ディルスの子供を拐ったと言うのだ。

狩猟が盛んな街だからこそ『嘆きの山』へ手を出す事は最大の禁忌として律していたはずなのだが……


ましてや『嘆きの山』の(ぬし)である大狼ディルスの怒りを買ったとなれば、最悪、エルレヘムは壊滅する恐れすらある。


「『獅子王』は何をしていたのだ?」


「父さんは現役を引退してるからね。それに、人間がどうなろうと知ったこっちゃないってトコロかしらね。ま、でも、一応はウォルグに報告しておけって、私に知らせに来たわ」


「ふむ、大狼ディルスが我が子を取り返しにエルレヘムに乗り込んでいけば、街の被害は甚大なものとなるでしょうな。最悪、壊滅する恐れもありましょう。魔王様、いかがいたしますかな?」


むぅ……

阿呆な冒険者がいたものだ。

放っておいてもいいんだけど、知ってしまった以上は、放置してエルレヘムが滅んでしまったら後味が悪すぎる……


「愚かな人間どもは、いずれこの魔王様が支配するのだ。勝手に滅んでもらっては困る。仕方ない、ディルスの怒りを鎮めに行くか」


あああ……くそぅ……!!

あの女が来るかもしれないから、城で待っていたいのに……!!

あ、いや、違うぞ!? 別に期待してる訳じゃねーからなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!






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