第57話 侵入
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俺は民家の影から出て門番のもとへ向かう。
だがまずは話しかける前に……。
「詐欺」
俺はまずスキルを発動する。
こいつを使いながら世間話をして時間稼ぎをしながら少し警戒心を解いたところで男爵に呼ばれたとか切り出せば大丈夫だろう。
そして俺が門の付近まで接近すると……。
「止まれ。貴様!」
門番が叫ぶ。
おっと、確かに考えてみればローブで全身を覆い隠している奴が来たらあやしいよな。
「いえいえ、怪しいものではありません」
俺はそう言いながらローブを頭の部分だけ取って顔を見せる。
俺たちは魔王様から自身の牙や爪、角と言った魔族の身体的特徴を幻術により隠す魔道具を貰っている。
魔族はこれらの特徴さえ無ければただの人間と全く変わらないのでバレないという訳だ。
ローブをつけていたのは顔を覚えられないようにという訳だがまあこれ以降はこの作戦に参加する予定はないので別に顔を見られてもいいと判断したのだ。
これぐらいの代償は仕方がない。
「あぁ、そうか。怪しいものでないのは分かったが一体何の用だ?」
ふぅ、少しは警戒心を解いてくれたか。
「いやぁ、ちょっと男爵様に呼ばれましてね。それにしてもこの暑い中門番ってのも大変ですね。ご苦労様です」
「あ、あぁ、ハハハ。本当に困ったものだよ。まあ割と給料がいいからサボらず真面目にやってるけどね。もしもサボったことがばれて解雇でもされたらたまらない。ま、それでもこう熱いと少し邪な考えが出てきたりすることも稀にあるんだけどね……」
……こいつ……饒舌になってくれるのはいいけど……。
それにしても早すぎるだろ。
まあこう暇な仕事の中で話し相手に出会ったら少し喜んじゃうのも分からなくもないが。
「確かにそれは仕方ないかもしれませんね……。ハハハ」
俺はそう言いながら頭を掻く仕草をする。
そうすると2人は事前に決めておいたこの合図を察知して少しづつ門に近づいていく。
いい調子だ。
これならいける!
「ん? なんか向こうで音がしたような」
俺はさらにダメ押しとばかりに「あ、あそこにUFOが!」作戦を実行するべく2人のいる場所の逆方向を指さす。
「ん?」
よしよし、完全にこの門番も2人のことは意識にないな。
よし! 2人は侵入完了だ。
「あれ? おかしいな。気のせいだったのかな?」
俺は2人が入ったことを流し目で確認して話題を強引に終わらせる。
「ま、物音ぐらいよくあるさ」
「ハハ。ですよねー」
俺は苦笑いで相槌を打つ。
よし、俺もそろそろ中に入れてもらえるように……。
「あ、そういえばこんな話をしている場合じゃないんでした。俺は男爵様に呼ばれてて……」
「ああ、そうか。じゃあ入れよ!」
は?
いやいやいや、流石にそんな無警戒に入れちゃダメだろ。
いや、これはこいつがバカだからじゃなくて詐欺スキルの効果か?
「ありがとうございます」
うーん、まあいいか。




