第37話 真剣勝負
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スローライフ編は自分の中で息抜き的な感じで書いてるのでどれだけ続くかは作者の気まぐれです。
飽きたらすぐに終わります。
先手は駒を落としている側が本来貰うが、今回はそういうのは無しでキースに譲った。
キースのはまず飛車先の歩を突く。
飛車は将棋でもっとも強い駒。
しかしその飛車も前の歩を進めないことには使えない。
そのことに所見で気が付くとは中々だ。
俺はとりあえず左の銀を上げる。
なるほど、駒を落とす側が後手だと先手の飛車先の歩の交換が防げない。
今まで自分が駒を落とす将棋など指したことがなかったので小さなことに面食らってしまう。
キースは飛車先の歩を交換してくる。
だが俺は飛車の前に歩を打って追い返さず成る場所を潰して受けた。
そしてそのまま10手ほどが進む。
キースは初心者にやってしまいがちな、玉の守りをおろそかにし、飛車単独で攻めてしまうというミスを犯しているようだ。
強力な駒である角の道すらも開けていないようだ。
飛車が4段目に躍り出て、ひたすらに左右に動いてしまっている。
これでは相手に陣地を守る「お手伝い」をしているようなものだ。
そうして自陣が安全になったところで、俺は飛車の後ろにいた桂馬の行き場所がないことに目をつける。
桂馬は頭が丸く、桂頭の歩に弱い。
そのため桂頭はなんらかの駒で守っておかなければならないのだが、そんなことは露知らぬキースは当然なんの対処もしていない。
俺はまず2筋の歩を突き、その後ろに銀を持ってきて2筋の歩を交換する。
そのまま無防備な桂の頭に歩を打ち込み、まんまと桂香の2枚の駒を手に入れた。
だんだんとキースの表情が険しくなっていく。
さらにそれでも無駄な攻めをキースが続けるので、そのスキに香を取るために端に行ってしまったと金を玉の近くまで持ってくる。
その後、俺は田楽刺し、ふんどしの桂といった手筋を駆使して桂香を金銀に変えて、居玉のキースをあっという間に詰ませてしまった。
「嘘だろ……。こんなにも実力差が顕著に出るのかよ」
キースはまさかの6枚落ちで負けて呆然とする。
まあかなりショックを受けてるようだけど初心者ならこの結果は当たり前なんだよな。
「もうやめるか?」
俺は今度は本当に挑発するかのようにニヤリと笑いキースに言う。
キースは悔しそうな表情で「もう1回!」と叫ぶ。
冷静な奴かと思ったけど相当な負けず嫌いの様だ。
今までも一番仲が良かったのはキースだけど、最近はずっと一緒にいるせいか、今まで見えてこなかった面が見えてくる。
「いいぜ。どうせ暇だし何度でも相手してやる」
俺は再び駒を並べ直す。
「キースが勝ったら今度は4枚落ちで相手してやるよ」
ま、キースは中々覚えがいい。
数日やってればすぐに駒落ちなら勝てるようになるだろう。
ま、平手ではそう簡単に負けるつもりはないが。
そして2戦目を始めた時……。
コンコンとドアを叩く音が聞こえる。
「おっと、誰かな」
仕事はまだ先のはずだけど……。
「はいはい」
俺はすぐに立ち上がりカギを開けてドアを開ける。
「あ、あの、この前はすいません……って……」
そこにいたのはミアちゃんだった。
しかし俺の姿を見た瞬間すごく嫌そうな顔をする。
泣きたい。
キースもこちらにやって来る。
「言いたいことはわかるさ。別にいい。俺たちでだってドレイクたちのことを知った瞬間は相当ショックを受けて何時間も落ち込んださ。それに今は覚悟を決めたって表情してる。些細なことは気にすんな。俺たちは仲間だろ?」
「は、はい! ……」
言いたいことキースに全部言われてしまった。
あと最後にキースが「仲間だろ?」って言った時俺に向かって嫌そうな視線を飛ばしてきてたのは俺の勘違いだと信じたい。
「あ、あれ? そこにある木で出来たものは何ですか?」
一通り話が終わったところでミアちゃんが奥に置いてあった将棋の存在に気が付く。
「あ、あれはね……」
俺は俺が作ったことを強調しながらルールを説明する。
「なるほど、中々面白そうですね。私もやってみていいですか?」
おお、食いついた! さっきまでは俺を見るたび嫌そうな顔をしてきたのに。
「よし、じゃあ一緒に……」
「あ、じゃあキースさんとやりますね」
ガーン。
俺がミアちゃんと打ち解ける日は遠そうだ。
それでも俺は諦めない。
頑張れ俺!
作者 「ずっと将棋ばかりやっていて流石に飽きてきたリューン」
リューン「困った俺は新たな娯楽を考える」
作者 「しかしそこで思わぬ問題が発生する。困ったリューンがヴィルフに相談すると……」
リューン「次回『魔王城の地下2階』」




