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第30話 敗者と勝者

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 翌日俺たちは魔王城へ帰還した。


 キースとはいまだに1度も言葉を交わしていない。


 ……いや、なんて言えばいいか分からないだけか。


 まあそれどころか姿すら見ていないのだからあながち言い訳ってわけでもないが。


 まだ死んだと決まったわけじゃないなんて言ったって死んでる可能性が高いのは確かなことなんだ。


 俺ですら考えるだけで頭がおかしくなりそうな状態なのに付き合いの長いキースにそんなことを言ったら逆効果なのは目に見えてるよな。


 とりあえず今日は論功行賞がある。


 ヴィルフさんに褒められるほどの成果を残したんだ。


 3級戦功ぐらいは貰えるだろう。


 俺とキースは2人で協力したんだし、キースとは嫌でも話す機会があるはずだ。


 今はそれよりも重要なことがある。


 それはドレイクさんたちの生死の確認。


 この前はヴィルフさんに聞きに行ったが、忙しすぎて取り合ってもらえなかったが、今はここ魔王城の地下迷宮9区の居住区……つまり今俺のいる場所の隊長の部屋の前に死者と怪我人のリストが貼ってあるのだ。


 俺は今そのリストを見るために自室から隊長の部屋の前まで歩いているのだった。


 確認する覚悟は決まっていた。


 昨日ヴィルフさんに叱られて冷静になったというのもあるが、今は他人のことを気遣っている余裕はないと感じていた。


 最低だと思うかもしれないが、それが今の俺の立場なのだ。


 俺は実際あの夜、ヴィルフさんが救援に来るのが数分遅かったら死んでいた。


 魔力切れだ。


 今まで都合よく言っていたせいで自分が強いと錯覚していたが、今回のことで、自分が弱いことがよく分かった。


 これからも下級兵として戦争の前線で戦っていたら確実に命を落とすだろう。


 俺は冷徹にならなければならない。


 人の屍を踏み越えて自分が成り上がる覚悟を。


 人を蹴落としてでも自分の命を守る覚悟を。


 俺は決めなければならないのだ。


 隊長の部屋にたどりついた。


 そこには予想通り沢山の9番隊の下級兵士たちが集まっていた。


 彼らの中のほとんどが仲間を失ったものなのだろう。


 自分ばかりが悲劇の主人公じゃない。


 俺は再び覚悟を決めてゆっくりと怪我人のリストを見た。


 そこには「ミア」という名前が載っていた。


「や、やった!」


 甘いことを考えていたわけじゃない。


 だがやはり心のどこかには「やっぱり生きているのでは?」という願望があった。


 怪我をしたのだから喜ぶのもおかしいだろう。


 だが、死んでいるよりは幾分マシである。


 まあ怪我の重さを知らなくては軽々しい発言は慎まなければならないが。


 しかし現実はそう甘くない。


 その下に「ドレイク」「ロイ」「ローレン」の名はなかった。


 中途半端に希望を持ったせいで、ショックは大きかった。


 俺は塵のような希望に縋りつく思いで隣に貼ってあった死者リストを見る。


 そこに3人の名前はあった。


 その時、右にキースの姿を見つけた。


 リストを見る彼の眼は死んでいた。

リューン「ついに論功行賞が始まる」


作者  「うれしいはずなのに3人の死の影響により気分がすぐれない2人」


リューン「死んだ眼をしたキースは果たして……」


作者  「次回『論功行賞』」

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