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第29話 帰還

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「しかしまだ戦争は始まったばかりなのに準備とかしなくていいんですか?」


 俺は数分で心を整理し、今はヴィルフさんの作業を手伝っていた。


「何を言ってるんだ……? ……ってあぁ! お前は下級兵だから伝えられてないのか」


 ヴィルフさんは自問自答を勝手にしている。


 蚊帳の外の俺には何のことかさっぱりわからん。


 しかし、そのあと伝えられた一言は衝撃的だった。


「だって戦争は終わったからな」


「へ……?」


 戦争終了……? たった1日で?


「ふっ、言いたいことは分かるぜ。流石に俺も1日で戦争終了なんて言うのは初めてだからな。まぁ説明してやるよ。この夜、何があったのかを」


 ヴィルフさんはニヤリと笑い、話始めた。


 まず、始まりは敵軍による俺たち左翼への夜襲だった。


 数分後、この情報が味方にほぼ完全に伝わり、急遽こちらの左翼を除く全軍で攻撃を開始することが決まった。


 魔王軍の最高戦力であるヴィルフさんを除く幹部を3人投入したことと、奇襲であること、さらに主力戦力である人類の精鋭部隊が2体も左翼の夜襲に参加していることの3つが功を奏して、攻撃は順調に進んでいた。


 だが、数の差により少しづつ前線が押し戻されていき、カウンターを受けるかというギリギリの状況にまで来ていた。


 そんな中、ヴィルフさんが左翼にて黒鋼騎竜隊隊長『覇王』のディランを討ち取ったとの情報が。


 これには自軍、敵軍問わず衝撃が走った。


 最初は敵が我々の動揺を誘う作戦だと思い、奮戦を続けたが、隊長を失った黒鋼騎竜隊が敵軍本陣に戻ってくると、先の情報が事実だと分かり、撤退した。


 たった1人で万人力のディランが死んだからと言ってこれは大げさではないかと思うだろう。


 実際俺もそう思った。


 だが、人類の誇る7精鋭部隊の隊長が戦死したことは、過去1000年続くデュリニット大陸の歴史の中でも両手の指で足りるほど少ない。


 そんな100年に一度あるかないかということが今起こったとなれば、学があればある人間ほど衝撃的に感じるだろう。


 以上がこの夜に起こった出来事だそうだ。


「なるほど、俺の知らない場所でそんなことになっていたんですか……。ってかヴィルフ様全然誇ってなかったからディラン倒すなんて全然すごくないことなのかと思ってましたけどめっちゃくちゃすごいじゃないですか!」


「はは、冷静な状態のディランなら俺が現れた時点で逃げただろうし奴の冷静さを欠かせてくれたお前らも大手柄さ。もっと誇っていい。……あとヴィルフ様はやめてくれ。さんでいい」


「あ、はい」


 言われてみればそうだ。


 自分ではディランを足止めしたことを大手柄だと思っている物の、足止めだけじゃ評価はしてもらえないという卑屈な考えも少し浮かんでくるんだ。


 だけどヴィルフさんに言われて何となく自身が付いた。


 俺の働きは客観的に見ても大きなものだったのだと。


 俺は仕事をする手を速めた。


 論功行賞の日が楽しみだ。

作者  「濃密で短い戦争が終わり帰還したリューン」


リューン「待っていたのは論功行賞で俺は高い級の戦功をを貰い……」


作者  「しかし一方で絶望の現実が」


リューン「次回『勝者と敗者』」

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