第28話 終戦と怒り
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「……ヴィルフさん」
俺は今ヴィルフさんのいる本陣に来ていた。
その後ろにキースの姿はない。
目的は当然ドレイクさんたちの生存確認だ。
俺たちでは持っている情報が少なすぎてこれ以上の捜索は困難なのだ。
そこで頼れる上層部の人は誰かと考えてみた結果、ヴィルフさんしかいなかったのである。
幸いというのは不謹慎かもしれないが、こちらに多大なる被害がでているためヴィルフさんは事後処理のためこんな朝早くから起きて現場で自ら指揮を執っている。
普段は魔王軍幹部に会うなんて下級兵じゃ不可能だ。
そして俺は今当初の目的通りヴィルフさんに会うことができたのである。
「おまえは……」
ヴィルフさんは振り向いて俺の顔を見るとほんの数秒考えて……。
「下級兵のリューンか。こんな朝早くから一体何の用だ? 話を聞いてやりたい気持ちはあるが今は忙しい。重要なことでないなら出直してきてくれ。重要なことなら手短にな」
確かにすごく忙しそうだ。
事実、ヴィルフさんは俺と話しながらも作業する手を止めていない。
申し訳ないとは思うがこっちも仲間の安否に関することだ。
引くわけには行かない。
「33班の仲間が朝からどこにもいないんです……。何か知りませんか?」
ヴィルフさんは幹部という高階級にいながら偉そうにしていなくてすごく真面目で優しい人だ。
だからきっと力になってくれると思った。
「なんだ、そんなことか。悪いが後にしてもらいたい」
だが、そんなことはなかった。
俺は「そんなこと」と言われたことにいら立ちを覚えた。
当然だ。
人の生死は重要な問題だ。
どう考えても「そんなこと」ではない。
「そんなこと? それは俺の仲間の生死なんてどうでもいいということですか?」
俺はヴィルフさんを強く睨みつける。
「その通りだ」
ヴィルフさんは軽く一言返し、作業を続ける。
ぷつり。
俺の心の中で何かが切れた気がした。
「殺す!!」
俺は一言そう叫び一気にヴィルフさんとの距離を詰めた。
近くにいた兵士が慌てて俺を取り押さえようと集まってくる。
だが今の俺は動きがもっと早い。
そして喉元に爪を差し込もうとした……瞬間だった。
「うぐっ!」
首を片手で捕まれた。
俺はあまりの苦しさに無理やり手を引きはがそうとする。
するとヴィルフさんは俺を軽く放り投げた。
そして一言。
「冷静になれ」
なんだと!?
俺は思わず再び殴りかかろうとするが、その前にヴィルフさんは何かを話し始める。
「お前は今冷静じゃない。考えてみろ、今は多くの兵士がけがで苦しんでいる。今は彼らの手当てが先だ。そしてお前の話を俺が聞いて誰か人を救えるか? お前の仲間が死んでいればどうしようもないし怪我なら治療を受けていることだろう。俺は確かにお前の仲間の生死などどうでもいいと思う。だが俺はお前の仲間の命ななんてどうでもいいとは思っていない」
俺はヴィルフさんの言葉を聞いてハッとする。
まさしくその通りだ。
俺は冷静じゃなかった。
仲間が行方不明であること、初めての戦であること、いきなり夜襲を受けて心身ともに知ろうしていること。
このようなことが積み重なってストレスがたまっていたのだろう。
そして最終的に今、当たりどころのない怒りをこの人にぶつけてしまった。
そんな俺に対して冷静に叱ってくれた。
「す、すみません……」
「いいさ、ちょうどよかったお前も手伝えよ」
俺は思わず涙をこぼした。
作者 「長い長い絶望の夜が明け……」
リューン「人類軍、魔王軍共に甚大な被害を受けて互いに退却することに」
作者 「そういえば俺たち左翼軍以外はこの夜の間いったい何を……?」
リューン「次回『帰還』」
こんな感じ?




