余裕
花が咲いている。
黄色い花だ。
小さな花が無数に連なって、一つの房が一つの花のようだ。
小魚。たとえば鰯は、群れで行動し、自らを巨大な魚にみせる。あれは天敵から身を守るため、種を残すための先天的行動であると聞いた。
あの黄色い花もその姿に意味があるのだろう。きっと。
受粉をしやすくするためか、危機を分散させるためか、植物に詳しくないために知るよしもないが。
すべての生き物はいつも懸命に生きている。種を残すという一つの目的のために。
もちろん人間だって懸命に生きている。明日を生きるために、未来を育てるために。
けれど自然界に住む彼らとは違って、人間とは実に弱い生き物なのだろう。懸命に生きるあまりプツリと糸が切れる瞬間があるらしい。切れてしまったその糸は、二度と繋がることはないと知らずに。
あの花は「ギンヨウアカシア」というそうだ。立ち止まってすこし調べるとすぐに解った。こんなにも便利な世の中になったじゃないか。
懸命に、
懸命に、
余裕を持って。