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 勝ち組とは何か。それは恵まれた環境、または誰もが羨む地位や名誉であること。極論を言えば自分自身が満足し、他者が羨ましいと思えば勝ち組となるのではないだろうか。


 俺は昨日の時点で人生勝ち組コースに入ったのだ。


 だって、目の前に広がる建物がそう証明している。



 ステータス鑑定を終えた俺は、次の日屋敷にきていた。


 やたらと大きい家にティナを連れてやってきた俺は住まう場所を紹介されていたのだ。今朝方、住まう家を見せるとやってきた貴族と護衛の騎士。案内されたのは貴族様が住んでいるようなお屋敷だった。


 周りには昨日会った貴族と護衛の騎士達がいて、ぽつんと村長も混じっている。


 眼下に広がる屋敷は二階建ての一戸建てで赤茶色の壁に透明な窓が何枚も並んでいる。玄関と思わしき場所は村で住んでいた家の居間ぐらいの広さがあった。


「お、おお……これ、本当に俺が住む所……?」


 なんでか、今になって目眩がしそうだ。本当は夢なんじゃないかと疑ってしまうのは俺が小心者だからか。


 屋敷が眩しい。大きさに圧倒されてしまう。


 俺達が今いるのは庭の部分で、まだ何もない。花壇とか植える場所があるだけで、舗装された石畳が道を示している。整えられている芝生は寝転べば気持ちよく眠れそうで、敷地面としては俺が世話していた畑よりも広い。


「ああ、手入れは済ましているが、最初のうちは慣れないだろうから従者を寄越そう。ティナ君にはその者から従者として学びつつ、君をお世話することになるな。君は警護に回す騎士達から学ぶ形だ」


 まあ、最初からこの屋敷を管理するにはティナ一人じゃ無理だろう。この規模の掃除とか大変そうだ。俺だったら玄関で諦める自信がある。


 お偉いさんもそれを分かって気を遣っているのだろう。


 ついでにティナを育てつつ、俺は騎士に教えてもらう形か。剣とか触ったことすらないけど、やっていけば剣術スキルとか覚えるのだろうか。目指すは剣聖なり。


「これは家の家具や生活資金として使ってくれ。月始めに資金は継続して提供する。屋敷での人手が足りないようなら従者を雇う方向でもいいし、好きに使ってくれて構わない」


 後方にいた騎士が持ってきたものを受け取る。流れからお金だろう。有り難く頂戴する。自慢できることじゃないが、なんてったって俺とティナには金がない。


「はい、ありが……重っ」


 二つ渡された袋を持つと重さに驚いた。お偉いさんが言ったように中身はお金だろうが、少々甘くみていた。


 お金は銅貨や銀貨。その上に金貨や白金貨があり、それぞれ重さが違う。価値が高くなるほど重くなるのだが、俺が持った袋はやたらと重量があった。


 二つの袋を覗いてみると銀色と金色。目一杯詰め込まれた硬貨たち。俺とティナは目を丸くした。


「ここ、こ、これ……まじで貰っていいんです?」


 金貨一枚で一般家庭の暮らしなら数ヵ月は持つ。どうみてもこれは俺とティナには余る金額だ。この袋の中身は軽く五十枚は入っている。


 こんな金額のお金を手にしていると、どこかで耳にしたことを思い出した。


 金には邪な気持ちを生み出すとどこかで……冒険者の人だったかな。お酒飲んで過去の失敗談、金に関わることを陰気臭く喋っていた。


 いや、あの時は鼻で笑ったけど、今ならあの冒険者の気持ちも解るよ。俺がまず思ったの、これ持ってトンズラすれば十年ぐらい遊んでくらせるだもの。


「ん、ああ。君には期待しているという意味も兼ねて、陛下からだ。素直に受け取りたまえ」


 陛下から、国王様直々にか。ユニークスキルの扱いが良く分かる。俺は国の重要人物とかそこら辺だろう。


「は、はい、ありがとうございます……」


 責任重大らしくて胃が痛い。俺のユニークスキルは開花とやらがまだなのに、ここまでされると重圧が。


 俺の胃が縮こまるのを余所に、お偉いさんと屋敷の中に入り、間取りなんかを説明されたりした。従者は明後日には用意されるらしく、その人達とは同居する形らしい。部屋は余りまくっているから余裕だな。


 騎士達は今日から俺の本格的な護衛の任に就くそうだ。


 護衛として任されるのは三十代ぐらいの男性騎士が纏める中隊規模の人数である。隊長の名前はアッシュさんといって、騎士にしては細身の方だった。


 笑みを浮かべるアッシュさんと挨拶した俺。優しそうな人だったが、時折部隊に命令を飛ばすときに鋭い眼光が怖い。俺は滑りやすい口を引き締めた。


 たまに出てしまう調子に乗った発言はこの人には止めとこうと思う。この人なら軽く受け流しそうであったが、俺の命を守ってもらうのだ。敬意を忘れちゃならない。


 アッシュさん率いる騎士の中隊は約数十人が交代で屋敷を警護、他数名が俺の護衛となるらしい。


 俺の扱いが既に貴族様並みだ。慣れない歳上からの敬語に背中がむず痒くなる。


「何か分からないことがあるようなら騎士の人間に聞けばいい。すまないが、私は忙しい身であるがゆえ、ここで退出させてもらう」


「は、はい、ありがとうございます」


「次に会うときは陛下との面会があるときか。それまで精進して励んで欲しい。まあ、まずは王都に慣れることだがな」


 そう言って去っていくお偉いさんを見送って俺とティナはお互いに目線を合わせた。


「……とりあえず、中に入ろうか」

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