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村人61

次話以降の投稿遅れます。

 あの二人に絡まれて無駄な時間を食ってしまったが、俺は周辺にゴブリンが居たことを説明するためにも早足で村長宅を目指す。


 畑道を歩き、住宅が並んでいるところまで来ると聖女様とカトレアさんに遭遇した。


 遠くからカトレアさんが会釈してくれたのを見ながら駆け寄る。


「教会の用事は済んだんですか?」


「ええ、おかげさまで。ダクトは急いでどうされました?」


「村長から近隣の村がゴブリンに襲われたってのを聞いて、周りを散策してたら本当にゴブリンが居たんで報告しないといけなくて」


「……確かに、巣穴が出来つつありますね。あちらの方角にある洞窟です」


 聖女様が指し示す。


 奇しくも、俺がゴブリンと戦っていた方角だ。聖女様を疑っているわけではないが、信憑性が増した。


「そんなことまで分かるんですか?」


「ええ、探知スキルは元から持っていましたが、スキルレベルが日に日に上がっているせいか瞭然と知覚出来ています。ゴブリンの数は二十匹ほどですが、これは――」


「もっと詳しい場所を教えてもらえませんか? 俺が倒してきます」


「いえ、魔物を倒すのは冒険者の仕事ですから、ゴブリンだろうと依頼を出すのが基本です。この村もそうでしょうし、ダクトは村に居なさい」


 冒険者の仕事なのか。


 俺はダンジョンに行くまでゴブリンなんて見ずに育ってきた。これまで村長が冒険者に依頼を出していたのだろうが、俺が倒したほうが被害もなく早い。


「俺がサクッと全滅させてきますよ」


「頼もしい限りですが、それよりもやらなければいけないことがあるようです。ダクト、王国の騎士が五十人ほど村に向かって来ています。その後ろにはリゼレッタも居ます」


「……本当ですか?」


「ええ、見間違えるはずがありません。この膨大な魔力量はリゼレッタ本人です」


「……俺が単独でやってきていいですか」


「リゼレッタの周りには従者が居ますし、護衛の兵士も居ます。それでもダクトなら余裕そうですが、国王から命令されているだけの罪無き騎士をあなたは殺せますか?」


「……みんなを守るためなら」


 出来るはずだ。賢者に加担している者は敵である。


「その中にあなたの護衛隊長を務めていたアッシュが居るとしたら? 彼は王国の騎士、我々の敵になるかもしれませんよ」


「それは……」


 アッシュさんは殺せない。その可能性を考えていなかったが、そうなることもあるのか。


「ふふ、躊躇いがあるようですね。その調子では任せられません。一先ず、村を防衛することにして、村の住民を呼び集めることにしましょうか」


 躊躇なく殺すと答えられなかった俺に聖女様が提案し、村に住んでいる者達を急遽集めることとなった。





 村長宅の周りで一堂に会し、訳も分からず集合させられた村人達はみんなが困惑していた。


 酒場のおっちゃんや薬屋の婆さんなど。


 教会の神父様の少し後ろでは、正装の格好をしたクラリッタとランゼフが得心した顔でしれっと混ざっている。


 こうして村で生活している者達が集められているが、その中にはデードやイーホン、ティナも居た。両親と揃ってやってきたティナは不安そうに俺を見詰めてきたので頷きを返す。


 賢者リゼレッタがやってきた。


 村長には既に話を通しているが、これから聖女様による演説が行われる。


 主に、対リゼレッタの説明だ。


「本日はお集まりいただき感謝します。単刀直入に言いますが、現在この村は危機的状況に陥っています。ユニークスキル所持者、賢者リゼレッタによる襲撃が行われようとしているのです」


「……賢者様が?」


「いきなりそんなことを言われても……」


「はい。皆さん、お気付きのようにわたしの目と足はありません。これは全てリゼレッタによる所業です。彼女は貴族至上主義、平民排斥派の一人です。そんなリゼレッタは同じく、ユニークスキルを得たわたしとダクトを狙っています。彼女は平民が女神様の力を手に入れたことを許せないのでしょうね」


「……だからって、戦うっていうんですか?」


「ええ、この村もダクトの故郷というだけで滅ぼすつもりなのです。わたしやダクトがこうして滞在していなくても、いずれ滅ぼされていたことでしょう。我々はここで迎え撃つしかありません」


 淡々とした声で話していく聖女様の言葉に聞き入り、話をまとめてみる。


 賢者リゼレッタは平民を排斥している極悪人で、ユニークスキルを持った俺と聖女様を狙っている。


 誇張しているのかもしれないが、簡単に訳すと発端は俺である。


 ティナが誘拐され、俺が頭にきて賢者の従者を殺した。その仕返しに来ている。


 それだけだ。


「そんなまさか……」


 動揺が村人達に広がっている。


 いきなり同じユニークスキル所持者が戦うなんて言われても驚くだけだろう。


 しかし、大半の村人達は視線を俺に向けていた。


「ダクトがユニークスキルを手に入れたせいで、おれたちが被害を被ってるってことか?」


 デードの発言に他の者も同じことを思っていたのか、数人ほど頷いている。


 聖女様の言い分をそのまま受け取ると、平民の俺がユニークスキルを手に入れたことにより、故郷が滅ぼされようとしているのだ。


 少し違うが、同じようなことだろう。


「そうなりますね。ですが、こちら側に非はありません」


「そんなわけないだろ! 全部、ダクトが悪いんだろ。平民のくせして、大層なもんを手に入れたせいだ!」


「いいえ、彼が平民でユニークスキルを手にしたことを非難するというのならば、わたしも平民の出ですよ」


「そ、それは……。聖女様は選ばれた人間だからでしょうよ!」


 しどろもどろになったデードが苦し紛れに放つ。


「……ダクトも選ばれた一人、特別な者なのです。それを非難するということは女神エクリアト、並びに聖堂教会を敵に回すということでよろしいですか?」


「そ、そんなつもりじゃ……ないです」


 俺も女神様に選ばれた人間である。聖女様と何も変わりはしない。


 デード個人は俺が気に食わないだけだろう。


 聖女様の威圧するような発言に、萎縮したデードが顔を強張らせて後ろに下がる。同じようなことを思っていた村人もバツが悪そうに顔を伏せていた。


「――では、仕切り直して。わたしとダクトは賢者リゼレッタと戦います。あなた方は何も心配せず、村の中に引きこもっていなさい。わたしが皆さんを守り、ダクトが倒しますから」


「ダクトが本当に出来るのかの……?」


 村長が心配して問いかけてくるが、問題ないと首を縦に振る。


「俺は大丈夫ですよ。任せてください」


「同郷の者では考えられないことでしょうが、彼は大陸の中でもトップクラスの実力を持っています。ダクトはユニークスキルを得て、誰よりも強くなりました」


 褒め称えてくれる聖女様だったが、俺は満更でもなく堂々と村の人達を見渡す。


 俺は強くなった。ステータスが証明している。ダンジョンで何度も死んだせいで人間性が希薄になってしまったが、誰にも負けない圧倒的な力を手に入れた。


 敵が賢者だろうと負けはしない。


「俺は勇者よりも強くなったので安心してください」


 自慢気に広場の皆へ言うが、依然として浮かない顔をする村人達だった。


 皆の反応が鈍い。信じられないのだろうか。


 まあ、いいさ。どう思われようと皆を守るだけである。


「……話し合いで解決するために使者を送るのはどうじゃろうか」


「村長様、話し合いの時は既に過ぎております」


「しかし、ですな……」


「村長の意見に賛成です……」


「賢者様と戦うなんて、おかしいですよ!」


 周りの村人達も村長の意見に賛成なのか、至るところから声が上がる。


「……まったく。わたしたちを信じればいいものを。リゼレッタが和解など応じるわけもない。ダクト、この者たちへ言ってやりなさい」


 話を振られた俺は全力で同意しているため、村人達の説得を試みる。


「……賢者は容赦ない女です。絶対に和解なんてしないし、使者なんて送っても殺されるだけですよ」


「あの賢者様が話も聞かず、殺しにくるとは考えられんのじゃがの」


「そこまで言うならいいですが、誰が和睦の使者をやるのですか? 殺されることも考慮に入れて良く考えてください」


「……老いぼれのわしが行きましょうぞ」


「――いや、おれがやる。村長、行かせてくれ。おれたちは関係ねえし、ダクトと戦うってんならそれでもいいけどよ。村に手を出さねえで、他所でやってもらうように言ってきてやる」


 村人達の中でデードが率先して名乗りを上げた。


 誰も行きたくない使者で他に手を上げるものは居ない。


「ダクトはあの方が使者になりそうですが、よろしいのですか?」


「……行ってくれるっていうなら、お願いしたいですけど」


 和平の交渉である。


 村ごと滅ぼしそうな賢者が話を聞くわけがないのは明白だ。俺や聖女様を殺そうとしているのは屋敷と謁見の間で実感している。


 どう足掻いても、殺すか殺されるかの二択しかない。


 使者がデードになってくれるというのなら、正直ホッとしている自分も居る。


 デードが賢者に殺されたところで悲しむことはない。同郷のよしみだろうと苦手意識があるのだ。


 俺はこの人が嫌いだ。


 毎日、デードが死なないか考えていた時期もあった。


 村長が使者になるよりはよっぽど良い。本人が望んでいるのなら、そのまま行かせたい。


「本当にいいのですね?」


 だけど、聖女様が二度目の確認してくる。


 意図が読めない。何の確認だ。


「……村長が使者になって死ぬより、あの人が行ったほうがいいと思いますけど」


「殺されるだけならいいのですがね……」


 聖女様が苦々しく呟いているのを聞いていると近寄ってきたデードと対面する。


「村を代表しておれが行くことになった。ダクト、文句はねえよな?」


「……ありませんよ。賢者が村に手を出さないでくれるっていうなら、俺もそのほうがいいので」


「村なんてどうでもいいが、てめえに守られるのは癪なんだよ」


 デードが苛々しながら地面を蹴り、唾を吐く。


「門から出た道を真っ直ぐにリゼレッタが居ますので」


「ええ、分かりやした」


「デ、デード。気をつけて行くんだな!」


「ああ、行ってくる」


 イーホンに心配されたデードが村の者達に見送られ、賢者の元へと出立した。

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