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村人58

「村長、すんません。ティナを守るためにはこれしかなかったんです。他に行くところも無くて……」


 項垂れたままの村長に俺は謝罪した。


 迷惑をかけている自覚はある。王都から離れるために村へ帰るしかなかったとはいえ、この村を危険に曝すことになるのだ。


 村に帰ってくるまで深く考えていなかったが、あの女ならば村の者達を皆殺しに平気でやる。村長もそれを懸念しているのだ。


「……分かっておる。聞いたことが真実であれば、致し方ないじゃろう。頭が痛くなる話じゃがな」


「俺、強くなったんで皆を守りますよ」


「……あのダクトが、逞しくなったのじゃな」


 感慨深く俺のことを眺める村長だったが、昔の頃と重ねているのかもしれない。村ではしっかりしていたし、ちゃんとやっていたはずなんだけど。


 俺は鼻を高くしてドヤ顔を返す。ユニークスキルを手に入れてから強くなったのは事実だ。


 誰にも負けないと言い切れる。過去の弱かった自分はもう居ない。


「では、わたしたちはこの村に滞在しますのでご理解を。カトレアさん、預けていたバッグの中身を村長様へ」


「どれほどでしょうか?」


「そうですね。わたしの分を半分ほどでしょうか」


「かしこまりました」


 カトレアさんがバッグから取り出したものは金貨だ。棒金となって纏められているものをテーブルの上に並べ、積み重ねていく。


 山となった金貨は平民なら遊んで暮らせる額で、目が眩みそうになったのか細める村長がいた。


「これは……?」


「迷惑料です。先に支払わせていただきます」


 聖女様がにっこりと微笑む。


 顔の半分は黒い布で隠され、口角の変化しかしていないのにどうしてか歪んだ笑顔に映っていた。誰も突っ込んでいないので黙っているけど。


 そのあとは俺とティナの帰りを祝いつつ、聖女様の歓迎も兼ねた会を設けるという話になり、夜には小規模な宴会が開かれることとなって席の場が終了する。




 ざっとした用件を済ませ、村長宅を退出。次はティナの家に寄るつもりだ。


「そういえば、俺は家に帰るつもりですけど二人はどうしますか? 小さな宿もありますけど」


「ご一緒してもよろしいですか?」


「構いませんけど、半年も帰ってないので掃除しないといけないです」


「掃除は私にお任せください」


 カトレアさんがやってくれるというなら安心して任せられる。俺の家なので屋敷みたいに任せっきりにしたくないが、手際の良さは圧倒的にカトレアさんが上だ。殆んどやってくれそう。


 それより、優秀なカトレアさんが村に来てるけど、侯爵様とか怒ってないんだろうか。来るときに馬車内で手紙を書いていたのを見ていたが、文字が読めなくて内容が分からなかった。


 侯爵様宛の手紙とは言っていたけど。


 馬車で待っていたランゼフとクラリッタに出迎えられ、積んでいた荷物をおろして運んでいく。ここから俺の家は馬車で行くほどの距離でもないため徒歩である。


 聖女様の護衛二人でもある彼等は村の教会に寄るそうでお別れだ。そっちでお世話になるらしい。


「では、リシア様。わたしたちはこれで~」


「ええ、早急に対処しなければならない場合は報せを、それ以外は表に出ないようにしなさい。二度手を叩いたら表に出ることを許可しますが、勝手なことは許しませんからね」


「肝に銘じておきます~」


「……うす」


 二人が馬車に乗り、去っていくのを見ながら俺達も歩いていく。


 家は村の中心地にあり、村長宅からほど近いところに俺の家もある。周りは畑に囲まれ、耕された土は何列もボコりと小さな山となっていた。


 獣避けの柵で村全体を覆っているような形の村は中心部に住宅が密集している。


 どれも特徴のない平屋でティナの家は北側に位置する場所で、斜め向かいが俺の家だ。


 無事に辿り着いた我が家だったが、他にも薬屋とか酒場もあり、人もそれなりに外で出歩いているのに俺へ声を掛けてくる者は居なかった。


 遠巻きに眺めている村人達がひそひそと耳打ちしている。


 珍しい車椅子に乗っている聖女様がやけに目立っており、俺も悪目立ちしているのだ。それはまあいい。謁見から直ぐに王都を発ったせいで聖女様は法衣を着ており、俺は貴族の格好だ。


 しかし、半年だけの間で顔も忘れ去られてしまったのだろうか。髪とか目の色は変わってるけどさ。多分、遠くて顔が分かっていないんだろうけど。


 髪の色で聖女様に気付いた者は多かったが、隣に立つ俺や従者の格好をしたカトレアさんを見て近寄ろうとしない。


 辺鄙な村に何事だと案じているのだろう。


 もしくは、彼等には貴族が闊歩しているように映っているのだろうか。俺から挨拶しようにも怯えている感じで、近付くのも憚られてしまう。


 あとで村長が宴会を開くとか言っていたし、そのときに話をしよう。


 半年も放置していた家に辿り着く。我が家の庭には雑草が生えており、人の気配は全くない。両親は先立っているため、俺だけが住んでいた状況だ。


 まずは中に入り、荷物を置く。次に俺はティナのところに行かないといけないため、聖女様とカトレアさんにそれを告げて家で寛いでいてほしいと案内した。


 ティナには村長宅から帰ってきたことと、ご両親へ挨拶も含めてしないといけない。


 ティナのご両親には俺のせいで心配をかけまくってしまった。俺が勝手にティナを従者に選び、挙げ句の果て誘拐されたのだ。


 殴られても文句は言えない。


 その旨を聖女様とカトレアさんに説明すると、心配されて同行することになった。斜め向かい側にある家へ三人で向かう。


 俺の家と全く同じ形をした一階建ての敷地内に入り、玄関前で深呼吸を挟む。こうやってティナの家を訪れるのも久し振りな気がして僅かに緊張する。


 コンコンとノックしてから玄関の扉を開き、ティナを呼ぶと直ぐに出てきてくれた。


「あ、ダクト! 来てくれたんだ!」


「うん、村長と話し合いは終わったよ」


 後ろに居る聖女様やカトレアさんもティナと顔を合わせ、ティナが二人へ是非とも家に上がってくださいと勧めている。


 そうしていると、年若い夫婦も後ろから顔を覗かせ、こちらのほうへやってきた。ティナの両親だ。


 俺は対面するよりも早く、真っ先に頭を下げた。


「ご無沙汰してます。ダクトです。あの、ティナから聞いたと思いますが、彼女を危険な目に合わせてしまいました。本当にすみませんでした」 


 平身低頭を心掛け、謝罪する。


「ティナから話は聞いたよ。顔を上げなさい」


「あなたのことも心配してたのよ」


 言われた通りに顔を上げるとティナと似ている女性が俺の頭を抱き締めてきた。


「ティリアさん、苦しいです……」


 ティナの姉といっても遜色ないほど若い女性が胸元へ俺を埋めてくる。抜けようと思えば離れられたが、瞳を潤ませているティリアさんを見て拘束を解くことが出来なかった。


「娘のこと守ってくれたんだろ。ありがとうな。ティリアはダクト君が苦しんでるからやめなさい」


「もう少し」


「やめなさい」


「……はーい」


 名残惜しそうに離れていったティリアさんだったが、グレシスさんのおかげで正面からティナの両親二人と対面する。


 彼等は俺のことを叱ろうという雰囲気でもなかった。


「……怒らないんですか? ティナのこと、守れなかったんですよ」


「ダクト君のことは少しだけ聞いたよ。こんなに変わるまで大変だったんだろう」


「帰ってきてくれただけで嬉しいのよ。娘もだけど、ダクトも亡くなったらあなたの両親のお墓に顔向けできないもの」


 ティリアさんがまるで我が子のように、俺へ慈しむような視線を向けている。彼女と俺の両親は親友だった。


 俺のことを大事に思っている二人を悲しませるようなことはしたくない。


「……次は絶対にティナのこと守りますから」


「そんなに気負わなくてもいいけど、お願いね。ところで後ろの方は……その髪の色はもしかして」


 ティリアさんが俺の後ろに居る聖女様に気付いた。


 説明も兼ねて、ティナの家に招かれる。自己紹介も兼ね、一段落したところで俺はこれまでの経緯やユニークスキルについてを全員に話していった。


 ティナにも遠慮して喋らなかったことも全てだ。良い機会だったから知ってもらうことにした。


 俺がダンジョンで勇者に突き落とされたこと、ユニークスキルが開花して不死になったこと。


 何度も死んで再生し、レベルが上がったこと。


 馬鹿みたいに強くなったことを話していく。

数ページほど平淡な話が続きます。必要なことだと思って書いてますので、お付き合い頂ければ……。

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