5
二人でぶらついた。護衛の騎士は後方で着いてきているが、俺は意識せずにティナと他愛ない会話を楽しんだ。
王都に詳しくない俺達が宛もなく歩いていると景色が変わる。露店とかが並んでいた場所からほどなくして、街並みが綺麗になった場所に迷いこんでしまった。
俗に貴族街と呼ばれる場所だろうか。
付き人を引き連れて歩く人達が多い。見栄えのいい馬車が行き交ったり、服装が派手な人達がたくさんいる。
迷いこんだ平民の俺達に不躾な視線を投げてくるが、俺は無視を貫く。俺はユニークスキル所持者だ。今やそこらの貴族と同様な立場なのだ。多分。
いや、勇者とか賢者が我が儘してるっていう話も聞いたことがあるし、発言とかの強さもきっと上だろう。世界救う人間だし。
でも、その視線は居心地悪いので移動することに。ティナもそわそわしてる。
「あそこに座ろうか」
「うん」
景観の良い所を確保し、人通りも少ない横椅子に座る。
「……ダクト、話ってステータスに関係してるんだよね?」
「ああ」
どう切り出そうか悩んでいるとティナが俺の顔を覗き込んできた。
「魔法のスキルか剣術スキルとか出たの? 騎士団に入るとか……かな。それだと、村から出ていかなきゃいけないんだよね……」
「いや、俺のスキルはユニークなやつだからそれとは少し違うかな」
「……面白いスキル?」
言い方が悪かったか。
「俺のスキルは――ユニークスキル、女神様の加護だった」
「え?」
ぽかんと口を開けて、首を斜めに傾けるティナ。言っている意味が分からないようだった。それとも信じられていないのか。可愛いからいいんだけど。順を追って説明していく。
「俺、ユニークスキルっていうヤバイの持ってたんだ。ほら、勇者とか賢者とか聖女様のあれね。だから、これから有名人になる感じかな」
「――え、それ本当に?」
「一応、まじである」
至極真面目な顔で頷いた。日頃、嘘をつかない俺を信用してか突拍子もないことをティナは信じたようで。
「や、やったじゃん。これから生きてくのに困らないし、いいなー。……ダクトは村を出るんだよね?」
「……そう、なるな」
「……そっか」
嬉しそうに言った後に沈痛な表情で俯くティナ。無理に明るくした表情は直ぐに暗くなった。
気楽に絡む相手がいなくなって寂しいのか。ティナが望むなら、ティナがよければそうはならない。俺は深い呼吸をして想いを告げる。
「なあ、ティナ。よければ俺の隣に、これからもずっと傍にいてくれないか?」
「え……それってっ」
赤面して動揺するティナを見て、言葉をミスったと俺は判断した。
まるで、愛の告白だ。それを言うのは結婚するとき。今はそうじゃないし、俺もこっ恥ずかしいぞ。
「いや、ちょっと待ってくれ。今のなしだ、訂正する」
片手を上げて今の台詞を無かったことにする。
何て言おうか口許をもごもごしていると、少し離れているところに貴族がいた。俺と同じような歳の男が、三人の若い女の付き人を連れてイチャイチャしている。
その様子は俺には主従関係に映った。俺には従者とか奴隷とか下僕とかの違いがよく分からない。
だが、そうだこれだと俺は直感した。今、ティナに贈る言葉は愛の告白じゃないのだ。
俺が求めるのは前方でイチャイチャしている貴族のように、お互いの新密度を上げること。
だから、俺は口走ってしまった。
「言い直すぞ。――ティナ、俺の奴隷になってくれ」
――と。
「ハ?」
それを聞いたティナの返答は何言ってんだコイツみたいなものだった。




