村人4
「あの、俺はこれからどうなるんです?」
国が俺の身柄を引き取るというのは分かった。
俺がユニークスキル所持者ということで村にもお金がいくらしいし、村の皆は今まで以上に生活が潤うだろう。冬の夕食が干した肉の端だけとか無くなるのだ。金はあったほうがいい。
ここであれこれ言って顰蹙を買うより、素直に聞いておいたほうが得策である。
相手は貴族で国に仕える人間。村長も固まったままだからこのまま話は拗れることなくいくだろうが。
国に保護されるというのは俺にとっても良い話だと思う。ユニークスキルのおかげで何もせずとも、英雄の仲間入りだ。
ユニークスキル所持者が何をするのか明確な目的は分からないままだが、勇者や賢者は特別扱いされていると聞いている。
それに俺は乗っかる。そもそも、選択肢なんて存在しないけど。
「君にはこれから王都で暮らしてもらう。住まいと世話役はこちらで用意するつもりだが、もし他人が嫌というならば一人だけだが連れてきてもらって構わない。間柄は友達だろうが恋人だろうがこちらは関与しないが、君の従者となってもらおう」
「はあ」
俺に従者だってよ。実感がわかない。
「まあ、その場合は従者としての立ち振舞いを学んでもらうがな。君についてはまずは王都に慣れつつ、ユニークスキルが開花するまで、レベル上げやステータスの基礎値を上げてもらうことになるだろう。女神様の加護を受けた国の重要人物となるからには、不便な暮らしはさせないと約束はする」
「ええと、分かりました」
生返事をする。
やはり、俺は王都で暮らすことになるらしい。予想はできていたが、国のお膝下に居るなら村でのんびり過ごすというわけにはいかなくなった。
もちろん、王都には憧れはあったが、わざわざ村を出てまでの強い憧憬なんてこれっぽっちもありはしない。俺は都会でやっていけるのかと心配だ。
従者もつけてくれるらしいし、心配は杞憂であればいいが。
いやでも、従者か。他人に世話されても緊張しそうだ。だからといって、村の人に来てもらうにしてもな、うーん。
一番頼りになるはずだった村長が使えないし。村長が色々やってくれるっていうなら、楽できそうだったんだけど。
でも、村長を従者にするのもなんか嫌だわ。うん。
従者は幼馴染みにお願いしてみよう。
「君のご両親に挨拶はこちらでしておこう。君はこのまま王都に滞在してほしい。その際にでも、故郷から誰か一人来てほしい場合はその時にでも伺おう。まず拒否する人間はいないはずだから安心したまえ」
「俺の親いないんでそこら辺は大丈夫ですよ。ただ、世話役の件はこっちに一緒に来たやつにお願いしようかなと……相談してきてもいいっすか?」
「ああ、護衛を用意しよう。行ってきてくれたまえ」
許可を貰った俺はさっそく宿泊していた安宿に向かった。お偉いさんと村長は金の件やらを話すそうで教会にまだまだ居るらしい。
俺は妙に居心地が悪いあの場を切り抜け、騎士と名乗る人達を連れて教会を出た。
護衛といっても後ろを付けるだけで、がちがちな警護ではない。事件に巻き込まれないようにと、俺の監視を含めてだそうだ。
外見だけ整った宿に着くと騎士の人には外で待っててもらい、部屋に入る。そこには幼馴染が退屈そうに足をぷらぷらとさせており、扉を開けたのが俺だと分かると駆け寄ってきた。
「よ、ティナ。退屈そうだな」
「あ、ダクトおかえりー。ねえねえ、何があったの? 王都の色々な場所見てたら騎士の人たちがいっぱい来たんだけど。ダクト、何かやらかした?」
自然に俺のせいにするのは納得がいかない。こやつは俺のことをなんだと思ってるんだ。
ティナは一つ下の幼馴染である。村という閉鎖的環境で唯一歳が近いこともあって遊び相手になっていた。俺はティナを妹のようにみているが、本人にそのつもりはないだろう。
ティナは可愛い。茶色の髪を後ろで緩く結って、穏やかながらも無邪気さを表した顔。年齢相応の可愛いさだ。
そんなティナとは、俺がユニークスキル所持者になっていなければ、そう遠くない未来に結婚していた。ティナの両親曰く、俺とティナが結婚することを望んでおり、村には歳が近いのが俺達しかいないってのもある。
俺もティナもお互いを邪険に思っているわけでもなく、何となくそうなるんだなと受け入れていた。
二人とも結婚適齢期であるし、結婚するなら早いに越したことはない。
だが、仲が良いとしても俺をおちょくるのは許さん。
「失敬な。俺がやらかすわけないだろ。まあその、なんていうか凄いことになった」
近付いてきたティナの額に片手を落とし、痛がるティナを横に言葉を濁す。さて、どう説明するか。ユニークスキルがあったことは話すとして、重要なことは王都に来てもらいたいということ。
ユニークスキルのせいで俺が村を出ることになり、ティナの両親の畑を継げなくなった。畑を継ぐ前提で交わした口約束。村にいれなくなったせいで結婚は破棄になるかもしれない。
俺としては妹に接する感覚もあるが、女の子としてティナを好いてもいる。
ティナが良ければ王都に来てもらいたい。結婚とかそういうのを抜きにしても、気心の知れた奴とそうじゃない奴では新天地における苦労は目に見えて変わるはず。
「良いほう、悪いほう?」
「良いほう、かな」
俺にとっては良いほう。ティナの両親にとっては悪いほうだが。
「そっかっ」
安心したような顔で微笑むティナ。結婚するのが破棄になったとして、この笑顔が俺の知らないところで他人に盗られると思うと胸が痛い。
心を決めよう。ティナに俺の気持ちを伝えるのだ。
「……大事な話がある。ここじゃなんだ、適当に歩かないか?」
「うん」




