表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

38/66

村人38

 怯えている騎士を無視して扉を抜け、通路を歩いていく。


 横幅がある道には部屋があったりするが、俺はとにかく出口を目指し、階段を上がった。


 騎士団本部という施設には在中している騎士が多く、警報が未だに鳴っている施設内ではやたらと遭遇する。


 出会い頭に騎士達は剣を振りかざして声高々と「魔族よ、止まれ」と命じてくるのだが、それが何度か続いていた。


 三回目から俺は反応することもなく、またかよっていう心境でため息を吐いている。


 不審者っていうなら分かるよ。上半身は服着てないし、半裸だしな。


 だけど、騎士達は俺のことを魔族と断定しているのだ。間違っている情報だが、届くのが早い。統率が取れていて、さすが王国の騎士。


 誤情報だし、褒められたことではないけど。


 最初は俺も立ち止まり、魔族ではないと訴えていた。しかし、全くといっていいほど耳を貸さない。


 魔族の戯れ言に耳を貸すなだとか言ってくるし、反論しようにも数の暴力で俺の口は閉ざされていた。


 だから、応じる必要性はないと判断する。


 すたすたとスルーして騎士達が塞いでいる道を真ん中から割って通っていき、通路を無理やり突破していく。


 そんな俺へ、果敢に剣を振り回す騎士も居たが、俺の体に当たると折れる。そのため、どうすることも出来ずに俺の周りを囲んで着いてくるという状況になっていた。


 どんどんと騎士の数が増えている。


 百人以上は集まっているんじゃないか。


 そこまで増えると騎士は俺に攻撃をせず、一定感覚を保って追従するだけだった。


「だから、俺はユニークスキル所持者のダクト・ファームなんですよね。ダンジョンを攻略してきたんで、屋敷に帰りたいだけなんですよ……」


 大行列の中で俺は歩きつつ、騎士と話をしてみる。


「その者は死んだ! 名を騙る魔族よ、直ちに止まれ!」


 どうやら、俺は死んだことになっているらしい。


「だから、俺が本人ですって。鑑定石でも持ってきてくださいよ。ちゃんと証明しますから」


「証明しても無断で騎士団本部に入り込んだ罪は消えん! これ以上、罪を増やしたくなければ大人しく拘束されよ!」


 話にならない。


 俺が何をしたっていう感じだが、お叱りならあとで受けるさ。


 一先ず、融通の利かない騎士なんてスルーする。まずはティナに会おう。





 騎士団本部を抜けた俺はそのまま大勢の騎士を引き連れ、貴族区画へ侵入する。


 懐かしさすら感じる風景だ。


 取り囲む騎士が邪魔だが、何と言っても話を聞く気すらないのでどうしようもない。


 貴族区画には高級そうな店が並び、大通りを出ると住居区画に移る。庭付きの屋敷ばっかりだ。


 俺が貰った屋敷まで、あと少しである。


 騎士に見守られながら歩いていると衛兵の格好をした者達が慌てて住民を避難させていた。


 俺の姿を見て、逃げ惑う貴族達。


 護衛を周りに置いて小さい子供を庇うようにして走っていたり、従者達を連れて馬車に大慌てで乗り込む貴族もいた。


 貴族らしくない騒がしさだ。


 俺を見た貴族の焦りようが酷い。まるで、化け物に遭遇したような目をしている。


 そんな目で見ないでほしいけど。何なんだよ、本当に。


 俺が何かしたっていうのか。誰にも危害を加えるつもりはないぞ。


 風評被害を受けながら閑散とした貴族街を通り、屋敷に到着する。


「……やっと、帰ってこれた」


 感慨深いものを感じる。


 門を潜り、石畳で舗装された道の先には二階建ての赤茶色の屋敷。庭には芝生があり、花壇なんかも並んでいる。


 庭師は雇っていないからカトレアさんがやってくれたのだろうか。それとも、俺が居ない間に雇ったのかもしれない。


 屋敷の敷地に入ると警護している騎士が俺の前にやってきた。後ろにも着いてきていた騎士がいるので、大勢の騎士に挟まれている形だ。


 目の前に並んだ騎士は懐かしい顔ぶれで、隊長格の者が一歩前に出てきてくれた。


 俺に良くしてくれていたアッシュさんである。俺の護衛隊長だ。


「……アッシュさん、お久しぶりです。俺、帰ってきました」


「……ダクト君、なのかい?」


 俺の変わりように驚いているが、声を聞いて分かってくれたようだ。


「はい。こんなになってしまいましたけど、ダクトです。やっと、ダンジョンから抜け出して来ました」


「……死んだと聞いていた」


「勇者に囮にされたんです。ユニークスキルのおかげで生きてますけど……」


「そうか。無事で良かったよ……詳しい話も聞きたいけど、後ろの騎士は?」


「ダンジョンを攻略したら騎士団本部の真下に飛ばされたんですけど、それで魔族がどうたらって話を聞いてくれなくて……連れてきてしまいました」


「ああ、なるほど。その髪と瞳では勘違いするかもね。一応、鑑定石もあるから証明したほうがいい」


 アッシュさんから簡易鑑定石を渡され、騎士達に囲まれながら起動する。


「では、俺がダクトだってこと証明するんで……ちゃんと見てくださいね。――ステータスオープン」




 ダクト・ファーム。男。


 Lv4925 クラス、不死者。クラス特性により、死の概念が無くなる。


 攻撃力4925

 防御力4925

 素早さ4925

 技術17

 魔力615


 スキル。


 固有スキル。

 粒子再生、痛覚無効、不老、魔眼(生命)。


 固有技。

 ブラド・トゥール。


 ユニークスキル。

 女神の加護‐生を求めた者。




「おお、めっちゃレベル上がってる……」


 黒ゴブリンのときには2000を超えていたから、アルラウネとドラゴンを倒して更に倍になったようだ。


 スキル関連と技術値は増えていないが、基礎ステータスが平均的に伸びている。


 これが、ダンジョンを攻略した成果だ。


 俺はどや顔で反応を待っていると、騎士達は訝しんでいた。


「なんだ、これは……」


「数値が……」


「……鑑定石が故障しているかもしれないね。ですが、彼は間違いなく女神様に選ばれた者の一人、ダクト君です。報告などは後にしましょう。まずは彼から事情を聞かなければなりません」


「しかしですな……騎士団本部に無断で侵入したことは無くなりませんぞ?」


「四ヶ月前にダンジョン攻略が行われたことはご存知でしょう? 彼は、あのときの生還者ですよ。我々一般騎士では彼の処遇を決めることは出来ません」


「……しかし」


「あなたにそこまでの権限は無いはず。これは、国王自らが決める案件になりましょう。ですので、騎士の方々はお引き取りください。我々が後を引き継ぎますので」


 言い淀む騎士にアッシュさんは追撃し、渋々というように騎士達が去っていく。大勢の騎士を追い返したアッシュさんが頼もしい。


 というか、四ヶ月も経ってたのか。感覚的には一ヶ月ぐらいのつもりだった。


「騎士の人たちが話を聞いてくれなくて困ってたんで、助かりました。ありがとうございます。それで、ティナに会いたいんですけど、屋敷に居ます?」


「……ティナ君は、居ないね」


 アッシュさんが歯切れ悪く返答する。俺に目を合わせることもなく、他の護衛騎士達も俺の視線から逃れるように明後日を向いた。


 その様子に首を傾げつつも、ティナの居所を聞いてみる。


「買い物とかですかね? なんなら、探してきますけど」


「――ダクト様」


 アッシュさんや護衛の騎士を問い質していると屋敷から従者の格好をした女性が出てきた。


 ティナに礼儀作法を教えていたカトレアさんだ。ティナの先輩である。


「あ、お久しぶりです。その、帰ってきました」


「はい、ご無事で何よりでございます。お召し物をどうぞ」


 半裸の俺に気を遣って服を持ってきてくれた。有り難く受け取る。


「それで、ティナにも報告したくて会いたいんですけど、どこに居ますか?」


「拐われました」


 淡々と事実を告げるように、カトレアさんは言った。


「ん?」


 うまく意味が理解できない。拐われたって、拐われたってことか?


 どういうことだよ。


 俺が納得できずにいるとカトレアさんは二度同じことを告げる。


「ティナは三ヶ月前に誘拐され、未だ行方が分かっていないのです」


「――は?」


「ダクト君、申し訳ない。警護は万全だったんだ。だけど、いつの間にかティナ君は居なくなっていた。ダクト君が死んだという情報で傷心し、村に帰ったとも考えたが……部下に確認させたら里帰りしたわけでもなかった」


「最近、王都で誘拐が多発しています。女児ばかりを狙い、拐っている者が居るのです。それに、運悪く遭遇したのではないかと……」


「ティナが誘拐された……? は?」


「ダクト君、気を確かに。捜索は難航しているが、必ず騎士たちが捕まえる」


「いや、どの口が言ってんだよ。そもそも、誘拐されるとかおかしいだろ……。警護は万全だった? ふざけんなよ、ならなんで誘拐されてんだ」


 せっかく、戻ってきて元の生活に戻れると思っていたのに。


「……すまない」


 アッシュさんが頭を下げて謝ってきた。だが、それで済む話ではないし、俺がキレて殴ってもティナは戻ってこない。


 俺は大きく深呼吸した。


「……何か、何かないんですか。誘拐される前に起こったこととか」


 何かしらの手掛かりが必要だ。ティナを探して救い出す。俺のステータスならどんな敵だろうと可能だ。


「……引っ掛かることと言えば、勇者様一行がわざわざ訪れたぐらいでしょうか。ダクト様のお墓を作り、ティナを従者として勧誘していました」


 カトレアさんが話したことに、俺はあの時の記憶が甦る。


 俺を囮にしたとき、勇者は叫んでいた。ティナをメイドにしてやると。


 あのときの台詞は本気だったらしい。


「――あの野郎ッ」


「ひっ……!」


 カトレアさんが俺の形相を見て、一歩引いた。


 俺の殺気が漏れているらしい。ステータス差で感じるのだろうか。それとも、そんな酷い顔をしているのか。


 アッシュさんも冷や汗を流し、俺の動作を一挙一動を見逃さないように固唾を飲んでいる。


 二人を怖がらせるつもりはない。俺は平静を装い、誘拐犯の場所を問う。


「……勇者は今どこに居ますか」


「い、今は草原で魔物を狩っている頃かと……」


「そうですか。では、勇者本人に聞いてきます。犯人はあいつです」


 俺は屋敷の庭から出ると、全力で跳躍した。


 地面を抉らせ、暴風が辺りの屋敷や舗装された道を粉々にするが、そんなことを気にしている余裕はなかった。


 空を駆けて、俺は草原に繋がっている城壁を目指す。


 もしも、ティナに何かしていたら殺してやる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ