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34/66

村人34



 ダクト・ファーム。男。


 Lv1021 クラス、不死者。クラス特性により、死の概念が無くなる。


 攻撃力1021

 防御力1021

 素早さ1021

 技術17

 魔力127


 スキル。


 固有スキル。

 粒子再生、痛覚無効、不老、魔眼(生命)。


 固有技。

 ブラド・トゥール。


 ユニークスキル。

 女神の加護‐生を求めた者。




 泉のところで鑑定石を起動すると、大幅にレベルが上がっていた。千を超えている。スキルも変化していて、痛覚無効に変わっていた。


 これなら、ゴブリンに勝てるか。挑んでみた。


 結果は敗北。


 速さは同等ぐらいになったが、純粋な力と防御力が足りていない。


 もっと、レベルを上げないと。


 俺はゴブリンに挑みつつも、勝てないと判断したら果実を用いたレベル上げに取り組む。


 レベルが上がりすぎた弊害なのか、複数の魔物を倒さないとレベルの上がりが遅くなっていた。


 俺はオークの群れに特攻して、果実を食べて喰われる。


 レベルが上がった。


 黒ゴブリンにはまだまだ勝てそうにない。


 繰り返す。


 オークに喰われて、レベルを上げる。時間をかけて戦うよりも、効率が良い。


 その頃には、ウルフも殴り殺せるようになっていたが、果実を用いた戦法はウルフには通用せず、毒だと理解しているのか見向きもされない。


 戦うと時間がかかるため、オークだけをひたすら狙った。どれだけ共死にしてもオークは湧いてくる。数は減っていないような気がする。


 また、オークに喰われる。


 何度も、何度も、何度も、繰り返す。


 既に1500を超えた。だけど、黒ゴブリンには遠い。


「……勝てない」


 挑んでみても、黒ゴブリンに勝てなかった。


 力と防御力が遥かに足りていない。カギを奪い取ろうとしても阻止される。


 また、オークに喰われてレベルを上げる作業に戻る。既に、オークでも殴り勝てるようになっていたが、突っ込んで果実を食べた方がレベル上げの速度は早い。


 まだまだレベルを上げる。


 死んでレベルを上げて、死んでレベルを上げて、死んでレベルを上げて、死んでレベルを上げて、死んでレベルを上げて、死んでレベルが上がった。


 ――あと、俺は何回死ねばいいんだ?


 レベルが2000を超えた。


 気が狂いそうだ。


 水を飲んで、果実を食べて。


 いつの間にか、俺の心は擦りきれていた。


 目眩がする。


 ダンジョン特有の変わらない天気。炎天下の中で蒸し暑くて、息が詰まる。


 オークとウルフの争った声が響き、ゆっくり寝るなんてことも出来ない。


 辛い。もう嫌だ。なんで、俺がこんな目に合わなくちゃならない。


 あと何回死ねば、俺はダンジョンを抜けられる。


 頭がおかしくなりそうだ。


 カギを奪い取るためだけにレベルを上げているが、気が遠くなるほど果てしない。


 レベルが上がって勝てると思って挑むが、あいつは俺を馬鹿にする。またお前かとでも言うように、ゴブリンは嗤うんだ。


 何度も聞いて、殺された。


「キヒヒッ!」


 そう、同じゴブリンの嗤い声。


「ぁぁ……」


 幻聴だと思ったが、黒ゴブリンが泉周辺を徘徊しているときに、ばったりと出くわしてしまったらしい。


 奴は立派な剣を抜いていて、自分の首に刃を置いて後ろに倒れる素振りを見せていた。


 またお前は殺されるんだぞと、馬鹿にしているようだ。


「キヒッ、キヒッ!」


 指を差して、嘲笑うように地面を飛び跳ねている。


 俺はただ、ダンジョン抜け出したいだけなのに。なんで、お前は俺を馬鹿する?


 たかがゴブリンのくせに。


 俺の頭の中にあった最後の超えてはならない線が――プツンと音を鳴らして切れたような気がした。


「……ブラド・トゥール」


 視界が赤に染まった。





 赤色に染まる世界は気持ちを高揚させる。


「ぁぁぁぁ……」


 涎が溢れ出てきた。強烈な飢えが襲い、頭の中身が書き換えられていく。


 ゴブリンらしき黒い靄へ首を曲げ、鮮明なほど赤い煌めきが鼓動する心臓を直視する。


 オナカが減っタ。


 ナマもノが食べタい。


「キヒ……?」


 黒ゴブリンが様子がおかしい俺に対し、初めて警戒するように一歩下がった。


 捕食者の立場が入れ替わる。


「――ハハ、ハハハッ!」


 俺は欲求に支配されたまま、ゴブリンへ駆けた。


 レベルが2000を超えているおかげなのか、固有技のせいなのか区別は出来ないが、とにかく異常な速度だった。


 ゴブリンの動きが遅い。


 黒い靄に輝く心臓が早鐘を打っているが、魔物に恐怖という感情があるのだろうか。


 俺は素手で襲いかかり、赤色の目でゴブリンを捉えつつ跳ぶ。


 涎を垂らしながら迫ると、ゴブリンは俺を殺そうと両手で持った剣を振り抜いた。


 風圧が地面を揺らし、腕を肘から分断される。辺りの木々も巻き込み、地面が抉れるような亀裂が走った。


 しかし、すぐに粒子が舞って修復していき、片手がゴブリンの頭を掴む。


 いつもは首をハネられて終わった戦闘だったが、今回は段違いの速度で追い詰めている。


 ――俺は、それを第三者視点で見せられているのだが、勝手に動く体は止まらない。


 ゴブリンを地面へ力任せに押し倒すと俺は剣を持っている黒い腕を押さえ、首元に齧り付く。


 血に飢えた獣のように、ゴブリンの小さな首を食い破る。


「キ、シィッ!」


 抵抗するゴブリンが空いている片腕で殴ってくるが、頭を壊されない限り再生する。俺の腹が貫通され、血を周りに撒き散らすものの青色の粒子が浮かび元通りとなった。


 味のしない肉を噛んだ俺は嚥下して、ゴブリンの胸元に顔を近付けて歯を立てる。


 薄い皮を引きちぎり、肉を破り。


 赤色の宝石が見えた――。

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