村人3
「ふむ、第四のユニークスキルか。さっそく、確認したいのだがよろしいかな?」
「え、あ、はい。ええと、どうすれば……」
俺に振られた話に慌てて頷く。
国のお偉いさんなのに、俺のような村人に丁寧な聞き方だ。これ、ユニークスキルなかったら本来は話し掛けられもしないぞ。
隣に座る村長は上半身石像にでもなったのか口を挟むわけでもなく、お伽噺で語られるガーゴイルの石化魔法にでも掛かったのか。
とか、馬鹿な思考を止め、俺は致し方なく短い息を吐いて神父様に助けを扇ぐ。
「鑑定石を持って参りますぞ。少々、お待ちを」
と、言ってすぐに戻ってきた神父様が、俺の前に先ほどやった水晶玉を置いた。
「確認してもいいかね?」
なんて聞いてはいるが、俺に拒否権なんてあるわけがなく。
水晶玉に手をかざし、魔導具を起動させる。
「ええ、はい、どぞ。ステータスオープン」
魔導具の起動呪文によって俺のステータスが浮かび上がっていく。
ダクト・ファーム。男。
Lv17 クラス、人間。
攻撃力17
防御力17
素早さ17
技術17
魔力2
スキル。
ユニークスキル。
女神の加護‐
俺のステータスはこうだ。割かし良い数値だろう。魔力以外は均等で万能型だ。中には特化しているステータスとかもあるらしいが、俺は万能型のステータスで何にでもなれる可能性があるのだ。
勇者、賢者、聖女と続いて村人はない。
もし、選べるのなら剣聖とかどうだろうか。
剣なんて触ったことすらないが、女神の加護もあるし、多分なれるんじゃないだろうか。
ステータスの魔力値は低いし、魔法は使えないだろう。なら、剣で戦う剣聖とかちょうどいいんじゃね。甘いかな。いやもうね、ユニークスキルがあるし、人生勝ち組は決まったものだろう。
「……本当だな。開花はしていないようだが」
あまり喜んでいない様子のお偉いさん。浮かれてた俺は少しばかり不安になる。
「開花って?」
「そのままの意味だよ。女神様は唯一無二のものを与えてくださる。どうやれば目覚めるのかは詳しく判明していないが、勇者様や賢者様、それに聖女様は女神の加護の後ろに名が付いているのだ」
なるほど、だから女神の加護の横に小さい棒があるのか。
へー、ふーん。
「え、じゃあこれ、まだ何もないみたいな?」
「ああ、まだ未覚醒のものだ。しかし、いずれは開花するだろう。それまで君を国で保護する。そちらの村長、それでよろしいかな? そういえば言っていなかったが、そなたの領地にはそれなりの見返りがあるだろう。国が計らうのだ。期待してもらって構わない。詳しくは後で煮詰めるとして、この少年はこちらが引き取る、よろしいかな?」
有無を言わせぬお偉いさんが村長に詰め寄る。
村長はお偉いさんの圧力に首をこくこくと頷くだけだった。村長、頼りない。村長が生き生きしてるのって村限定なんだな。少し見る目が変わった。
いや、そんなのどうでもいい。つうか、未覚醒なのかよ、これ。
俺には秘めたる何かが眠っているってか。
まあ、それまで国が俺を保護するらしいし、大出世間違いなしだ。
俺の意思が一つたりとも考慮されていないのは気になるところだが、俺も選ばれた者。我が儘を言えなくなる立場になるらしい。