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 深い闇の中にいた。一切の明かりがなく、土の中に埋まったような感覚。手足にまとわりつく枷が身動きを邪魔をする。


 暗い。ここがどこなのか、知るすべが俺にはない。


 ――明かりが欲しいと俺は思った。


 そう願った直後に小さな明かりが前方に灯る。思った通りの現象に戸惑う。だが、太陽のような温もりを感じられる光は心地よく、全てがどうでもよくなった。


 温かい。でも、遠い。


 光が灯ったのはずっと奥で、手を伸ばそうにも動かない。


 温もりを近くで感じたくて重い足を動かそうとするが、一歩も前に進んではくれない。


 どうして。あの灯りを身近に。そう、言葉を発することもできず、ただ茫然と眺める。


 次第に光は朧気となって消えそうだった。しかし、奥に女性の影が現れ、両手を添えると光は保たれた。


 誰だ。ここからじゃ、輪郭しか分からない。その女性は俺に問い掛けるように口を開くが、何を言っているのか不明だ。言葉は届かず、唇を読もうにも多分言語が違う。


 何を喋っているのかさっぱりだ。


 女性の方も伝わっていないことに気付いたのか、首を傾げると手を広げる仕草をした。すると、光の中で映像が映し出され、切り替わっていく。


 どうやって、と思ったが、まあいい。


 俺に何を見せようというのか。


 映されたのは上空だった。雲一つない青空。


 太陽がないのに陽光が照らされており、下に広がるのは密林地帯。


 俺がそこで死にそうになっていた。何を言ってるのか俺にも分からないが、俺が映像の中に居た。


 というか、死んでないか俺。


 蔓に串刺しにされたまま、血が固まってこべりついている。俺が青白い肌になっていて、ぴくりともせずに呼吸すらしていないようだった。


 まんま俺だ。何が、どうなってんだ。


 まさか、ここ死後の世界……?


 そして、死んでる様子を見せて自覚させようってか。


 ――嘘だろ。


 俺自身もその映像を見ながら、顔面蒼白になっているだろう顔で混乱する。


 死んでる? じゃあ、今の俺は?


 どういう状況なのかも不明瞭で、訳も分からず言葉にならない叫びを上げる。しかし、虚しくも音にすらなっていない。


 言葉が出ないことによって逆に冷静さも戻ってきた。


 噛み締めるように無理やり理解していく。


 ……ティナに絶対帰ってくるって約束したのに。


 俺は、死んだんだ。


 内心で自嘲気味に呟くと、また映像が切り替わった。死体となった俺自身の周りも映し出されていき、食い入るように眺めていく。


 そして、吐き気を催した。


 騎士や数人の従者も蔓に貫かれているのだ。


 無惨な死体だらけだった。


 なにより、残酷なのは死体を玩ぶ魔物だ。何本もの大きな蔓が地面に横たわっていて、中央には巨大な花をいくつも咲かせている人型魔物が居る。


 そいつが死体で遊んでいるのだ。


 手元で操っている細い蔓で従者の死体を口元の頭上に持っていき、両手と両足を細い蔓で拘束すると大の字にさせ、天高く掲げて引き裂いたりしていた。


 大量の血が飛び散り、それを大きな口を開けて浴びている魔物。嗤っている様に嫌悪感や恐怖を覚える。


 いずれ死んでいる俺も、ああなるのだろう。


 そんな光景、見たくない。


 というか、俺は既に死んでいるってのに、こんな光景を見せてどうしろってんだ。死んだことは理解したぞ。解りたくもないけどな。


 女性の影の心意が汲み取れず、俺は唯一できる精一杯の睨みを向ける。


 死にたくなかった。ただ、生きていたかった。


 無力さを嫌というほど痛感している。


 ――俺に、強さがあれば。と、思っても既に遅すぎるが。


 でも、そう思わずにはいられない。変わっていたのかもしれないのだ。


 こんなことにはならなかったし、救えた命もあった。騎士達は俺が弱かったから死んだ。自分がひ弱なことは分かっていたし、ただの村人、俺はどこにでもいる雑魚に変わりないことは自覚していた。


 だけど、変わりたいと願った。


 もしも、次があるのならば。


 絶対的な力を――と。


 女性の影が大きく頷くと微かに笑ったような、そんな気がした。






 明滅する光が瞼を揺する。瞬きを数度し、意識が半覚醒の状態で辺りを見渡す。


 全面緑色だ。肌触りはザラザラしている。


 なんだこれ。ぺたぺたと手で触れ、気付く。ああ、これ、蔓か。俺は蔓の上で寝そべっているようだった。


 起き上がろうとしたが体が重く、うまく動かせない。それに、酷く怠い。


 顔を動かすのすら億劫だったが、横に向けてみる。


 でかい蔓が転がっていた。何本も折り重なって無造作に横たわっている。奥に見えるのは密林か。今まで見たことのないような木が密集していた。


 真横に巨大な蔓があるのに、なんでそんなものが見えるのかというと、俺が寝ている位置が高い。


 顔だけを動かして辺りを見渡すと俺が動けない理由が解り、ため息を吐く。


 真下にも蔓が重なっており、それなりに見渡せる位置にいるのだが、そこで俺は細い蔓に拘束されているようで、身動きが一切取れないのだ。


 力を込めれば抜け出せそうな拘束だが、今は気だるくて無理だ。


 動けないので、とりあえず現状把握に努めよう。


 ……いや、つうか、なんで俺、生きているんだ?


 俺、死んだんじゃなかったのか。


 五体満足でいるし、蔓に貫かれた体には穴なんてない。でも、服は破かれた跡が残っている。手足が拘束されて寝そべっているから確証はないが、血も出ていない。


 痛みもないし、どういうことだ。


 というか、起きたばかりだが、眠気があって考えが纏まらない。とりあえず寝て、また考えようか。


 疲労もあって安易に考えた俺は、そんな風に一眠りに入ってしまった。

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― 新着の感想 ―
[一言] あらすじ部分が終わって物語はこれからって感じですかね? ティナちゃんは無事に待っててくれるといいなあ…
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