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 口が悪すぎてそこらのチンピラのほうが似合う勇者だが、外見に関しては女性だったら振り返ってしまうほどのもの。


 所謂、高貴な感じがある。


 ソファに座り、両手に奴隷を侍らせた姿からはそんなの全くないが。


 長めの金髪に整っている顔は口を閉じれば文句のつけようがないイケメンさ。王宮ということで着ているのが礼服だが、着崩しているのも様になっている。


 俺があんな風に着ても滑稽に映るだけだろう。これが勇者としての格の違いか。


「シェイラは優しいけどよ。オレはコイツのこと、仲間だとは思えねえ」


 奇遇だな。俺もだよ。そう同意していると、シェイラと呼ばれた小柄な女の子が勇者の前に立った。


「兄さま、さすがに怒りますよ?」


 こちらに背を向けたシェイラがどんな顔をしているのか見えない。ただ、次第に勇者の顔面が凄いことになっていった。


 奴隷の取巻きもご主人である勇者のために何かを口にしようとしていたが、シェイラが視線を向けるとあからさまにそっぽを向いた。


「あ、いや、違うんだよ。ほら、オレはさ、こんな雑魚が認められないというか、スキル持ったからって鼻高々にしてるバカを見るとさ……」


 しどろもどろになった勇者。良い気味である。もっと言ってやれ。


「同じ仲間です。仲良くやりましょう。いいですね?」


「あ、ああ」


 歯切れ悪くも首肯した勇者。あの勇者を言いくるめるなんて流石としか言いようがない。見習いたいぐらいだ。


 シェイラは勇者の態度に納得したのか一度大きく頷くとこちら側に反転した。勢いで白いドレスの裾が舞い、慌てて押さえるシェイラ。ぎこちなく俺とティナへ笑みを浮かべ、わざとらしい咳払いをして話を切り出した。


「では、まずは自己紹介ですね! わたしはシェイラです。えっと、歳は十三歳で兄さまの妹です! ほら、兄さまも!」


「あー、名前はアークス。十七、勇者やってる」


 実の妹だったのか。全然似ていないのだが。主に性格が正反対。外見はどちらも似た面影があり、シェイラは将来が金髪美人になりそうだ。


 シェイラに促された勇者が気だるげに自己紹介をこなし、俺とティナも挨拶することにした。俺達の名前は公爵様が言ったが、聞いていたのか不明なので名乗ることに。


「俺はダクト・ファーム。十五歳。農民だったけど、ステータス鑑定でユニークスキルが発見されてここにいる。まあ、よろしく」


 今度はティナの番と目線を送るとおずおずと前に出た。少し表情が固い。相手が貴族な上に勇者だからか。こんな勇者に緊張しなくていいのに、ティナはそういうところはしっかりしているから仕方ないか。


 俺は勇者に対して態度を改めることはしないがな。こいつはなんちゃって勇者だ。


「えっと、ティナです。シェイラちゃん、勇者様。よろしくお願いします」


「はいっ、ティナさん。よろしくなのです!」


 勇者の奴隷達も俺達と挨拶を交わし、一先ずの自己紹介が済んだ。元気の良い勇者妹に癒されながら、この子となら仲良くなれそうだなと俺は思うのだった。




 勇者との仲を深める対談は続き、対面に椅子を持ってきて座った。リゼレッタこと賢者の相手は公爵様がしている。


 交流を深める時間はまだまだあるそうで、シェイラにどうぞどうぞとお茶を注がれるまま頂き、見たこともないお菓子類も差し出された。


 ティナがお菓子類を食べつつシェイラと打ち解けたのか楽しくお喋りしつつ、俺と勇者は横で睨み合う。


 無言で牽制していた俺達。しばらくして先にため息を吐いてやめたのが勇者だった。


「なあ、村人。オレたちは魔王を倒すのが目的だ。魔物も活性化してるし、その日は近い。そのことは理解してるんだよな? 開花もしてねえで戦えんのか。つうか、お前レベルいくつだ?」


 勇者はソファに座ったまま足を組み替え、真面目な表情で質問してきた。そこに俺をバカにするような感じはない。


 ガラっと変わった雰囲気に飲まれつつ、俺は自分のレベルを勇者に告白する。


「……17だが」


「……話になんねえな。今まで何の苦労もなく過ごしてきただろ。のうのうと生きてきたか、それすら必要のない恵まれた生活ってやつか。チッ、何でオレらがコイツに合わせなきゃなんねえんだよ」


「兄さま、言い過ぎです」


 舌打ちした勇者を咎める妹。


 そう言われても困るのだが。まだユニークスキルが判明したばかりである。レベルが上がってないのも必然ではないか。


 のうのうと生きてきたつもりもないし、俺なりの苦労はあったさ。勇者にとやかく言われる筋合いはない。


 レベルだって一応年齢よりは高いし、標準よりは僅かに上だ。


「シェイラ、こいつは足手まといだ。今から魔物を狩ってもオレたちにレベルが追い付けるとは思えねえ」


 ここまで言われると腹が立つというより、何なんだこいつはという感想しか出てこない。


「お前のレベルはいくつなんだよ」


 ここまで言うならさぞや高いのか。レベル30ぐらいか。レベルが30も超えれば熟練の騎士と周りにちやほやされ、冒険者ギルドであれば高ランクに匹敵する。


 大口を叩くからにはそれぐらいはあるのか。


「オレか? まあ、見せてやるよ。――ステータスオープン」


 自慢気に言う勇者は懐から水晶玉を取り出した。教会とかにあるステータス鑑定できる魔導具と同じものだが、あれよりずっと小さめのやつ。


 こんな小さなものもあるんだな。これがあれば持ち運びが楽で逐一自分のステータスを確認できる。俺も欲しいなと見ていたら水晶に浮かび上がった文字に愕然とした。


 勇者が起動した水晶玉にはこう書かれていた。


 アークス・リヴル・フォンディーネ。男。


 Lv48 クラス、勇者。クラス特性により、全ステータス大幅上昇。


 攻撃力144

 防御力144

 素早さ122

 技術130

 魔力94


 スキル

 家事Lv1

 裁縫Lv1

 剣術Lv3

 肉体強化3


 固有スキル。

 見切り、回避、魔法耐性、物理耐性、全属性魔法、危機察知、空間把握。


 固有技。

 ソード・アストレア


 ユニークスキル。

 女神の加護‐全能を求めた者。



 俺のとステータスと数値が違いすぎる。レベルも48って、この国の騎士団長と同じくらいだぞ。護衛してくれているアッシュさんだって30前半ぐらいと話していたし、どれだけ強いんだ。


 ここまで差が歴然としているとは。騎士団長並みとなると国の最高戦力ぐらいの力はある。


 それに、固有スキルやら何やらがあるから上の可能性があるし、そもそも騎士団長を見たことがないから実際どれぐらい強いのか知らないが、魔物の軍勢を片手で滅ぼすぐらいなら造作もないのか。


 酒場などにいる吟遊詩人が勇者の英雄譚を歌にすることに納得した。大袈裟に語ってるだけだと見ていたが、そんなこともなかったわけだ。


「……でたらめすぎだろ。開花するとこんなんになるのか……?」


 女神様の恩恵か。スキルが開花するとここまで強化されるものなのか。


「女神のスキルが発現すればある程度は上がるけどな。俺が言いたいのはそこじゃねえ。お前は何も努力しなかったってことだよ。オレが十五の時にはレベル30になってたぞ」


「……嘘だろ?」


 レベル30を超えている人間は全体からして人口の三割ぐらいと言われている。冒険者の人だってレベル30の壁を突破できなくて挫折するというぐらい、ほとんどの人間がレベル20台で止まってしまうのだ。


 なのに、勇者は俺と同じぐらいの歳――つまり二年前にはレベルが30を超えていた。これは才能とかの問題じゃない。ひたすら修練をこなし、魔物を倒した成果だ。


 それが真実なら、見かけが貴族のお坊っちゃまという割には壮絶な生き方をしている。


「ア? こんなことで嘘つくわけねえだろ。あのお姫様だって十五の時には20後半ぐらいはあったろうよ。今じゃ、あのベヒーモスを単騎で落としたってんだから40はあるんじゃねえか」


 どうしてそこまでレベルを上げていたのか。


 ステータスが分かるのは十五歳だ。必ずステータス鑑定を行い、将来を見据える分岐点。貴族だろうと平民だろうとステータス鑑定をやる日は同じ。そこに例外はない。


 自分のステータスを知り、ユニークスキルを持っていることが判明してからレベルを上げたのなら解る。今後、魔王を倒すために必ず必要なことだから。


 だけど、どうして。勇者と賢者は十五歳になる前にレベルを上げていた。


 貴族だから?


 貴族はレベルを上げることが義務なのか。


「……何のためにそこまでやってたんだ?」


「必要だったからに決まってんだろ。闇雲にレベル上げなきゃいけなかったんだよ。家の権力なんてほとんど無かったからな」


 吐き捨てるかのように勇者は下を向く。その顔は勇者らしくないもので、俺は言葉に詰まった。勇者も苦労してきたのか。こんなに態度が大きいと今まで好き勝手やってきたイメージがある。


 勇者の言葉で気まずい雰囲気が流れ、無音となった時間が訪れた。しかし、微妙な空気を払拭するように一拍置いてシェイラが付け足すように兄の努力を語った。


「……ダクトさん。わたしたちは貴族の生まれで没落しそうな家だったんです。状況が状況だけに兄はレベルを上げて騎士を目指してましたが、そこでユニークスキルが発現したのです。なので、ダクトさんのレベルは普通なのです。これから上げればいいのです」


「いや、関係あるだろ。シェイラ、こいつは能天気に生きて戦闘経験も無しで、足手まといなのは確実――」


「――兄さま、ちょっと黙るのです」


 勇者も口が悪いだけで大変な過去を生きてきたのだろう。その話だけで勇者に対しての見方が変わったし、ちょっとだけなら俺から譲歩してやってもいいっていう気分になる。


 勇者が喧嘩腰できてもまあ話だけは聞いてやろう。


「……お前が苦労してきたってのは理解した。俺はお前みたいに何の取り柄もないけど、足手まといだけにはならないようにする。そんな簡単にレベルは上がらないかもしれないけどな」


「ああ、そうだな。雑魚はオレの背中に隠れてるのがお似合いだ。まあ、賢者とお前を守るってんなら、あのお姫様を優先するしな。お前は邪魔にならねえようにしろよ」


 本当に口が悪い勇者だ。一言余計だ。まあでも、勇者が言っていることには一理ある。お前の邪魔だけはしないことにするよ。

 

勇者より賢者のほうがチートっぽい。賢者のステータスは公開するか未定。勇者は万能型で、賢者は一極型です。


 地味に書いていた短編投稿しました。

 駆け出し冒険者が駆け出し冒険者を助けるお話です。特にオチなんて無い話なんですが、よければ見てください。


Nコード

N1317EF

ttp://ncode.syosetu.com/n1317ef/

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