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20:00 輝蘭の家

「しかし〜、本当になんにも無くなっちゃったね〜」


 メアリーは輝蘭の肩の上でため息をついている。

 すでに引っ越しのための準備は終わり、輝蘭の家の中は、ほとんど残っている物はなかった。

 家具や電化製品で必要な物はすでにイギリスに送られており、後は卒業式に必要な物などの最小限の必需品があるのみだったのである。


 輝蘭は壁に掛けてある1つの制服をじっと見つめていた。

 その胸には、「籠目中学校」と書かれた校章が取り付けてある。

 本来輝蘭はこの制服は必要ないはずなのだが、急に転校が決まったのが1ヶ月前。すでに寸法を合わせて作ってあった制服だった。


「ねぇキララ。明日これ着ていくの?」

 輝蘭には迷っていた様子はある。だが、この時はメアリーには即答した。

「着ていくわけないでしょ。籠目中学校には行きませんからね」

「でもほら、『最後の思い出』っていうのもあるわけだし〜」

「ちゃかさないの!」


 正直言って、輝蘭はなんとなく変な気分だった。

 悲しいのとは違う。悔しいのとも違う。

 なんと言えばいいのだろう。

 まだ何か足りないような、何かやり残したことがあるような、そんな不思議な想い。


 その時、ふいに輝蘭の母が部屋に入ってきた。

「キララ、お友だちよ」

「友だち?誰?」

「ナミさんよ」


 ナミさん?

 輝蘭は階段を下りて1階に向かった。

 実際七海ともここ1ヶ月の間、話らしい話はしていない。

 若干気まずい想いはあったが、まずは会うことにした。


 玄関に行くとすぐに七海の姿があったが、少し様子がおかしい。

 よほど慌てて来た様子で、はぁはぁと肩で息をしている。


 開口一番、七海が輝蘭に言った。

「キララ!詩織が来てない!?」


 尋常な様子ではない。

「詩織ちゃん?いいえ、来てませんけど・・・」

 輝蘭の言葉を聞いて、七海はがっくりと肩を落とした。


「詩織が・・・詩織が消えちゃったの!どこ探しても見つからないのよ!・・・・どうしようキララ!?」


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