魔物退治なんですが
シリーズ第2弾。
彼女は、最近ウキウキしている。
ようやく彼が出来て、休みには2人でデートをしているのだ。
昨日は、1日いろいろ話が出来て、最後の〆には、居酒屋で飲み比べもして
充実した1日だった。
(王都のいろいろな事件の話や今流行っている剣の話に、本当に面白かったなあ)
冒険者である彼女は、騎士の生活や仕事の内容、国内の事件やらは
あまり知らない。
逆に彼は、彼女の仕事内容である魔物退治やパーティの仲間関係のルールとやら
詳しくない。
彼女がギルドと騎士が組めば、いろいろお互いが抱えている悩みは、消化出来るかもしれないね
という言葉に彼は頷いてくれて。
話が合うということは、こんなに楽しいのか。と、浮かれている。
足取り軽く毎度のギルド施設内へ入ると、今回パーティを組む6人の内の4人が既に
待っていた。
「お待たせ~」
美青年が笑顔を振りまきウキウキしながら、4人の前のテーブル席に座る。
「うわ~、頭の中春だな」
「花が飛んでいるようだ」
20代の女性魔術師や、30代の傭兵、20代の弓手、30代の獣人が
それぞれ彼女に感想を持った。
「噂には聞いていたが、先週彼氏が出来たって」
「へへ、ついにだよ。凄く格好良い人でね。勿体ないくらい。
私がこんな男顔でもいいって言ってくれて。
もう、幸せなんだよ~」
聞いてもいないのに、嬉しさのあまり、彼との出会いから
どこへ行っただの、何を買ってもらっただの
肝心な事件とかの話は彼とは公にしない約束なので、幸せな事だけ
べらべらと話しだして、止まらない。
美青年が顔を赤らめて、恋人との惚気話をする姿は、とても見れたものでもなく
引くものだ。
「悪い。美青年姿の君がくねくねさせている姿は、ちょっと」
「ラティ、嬉しいのは分かるが、君が頭が春だと不気味だ」
美青年姿だからこそ、残念なことになっているのだ。
「皆、酷いな」
ぷうと、頬を膨らますが、美青年には似合わない。
周囲がげんなりとした顔をさせるので、ますます彼女は不機嫌になる。
「悪かったね」
「可愛い女の子とか、ここにいる魔術師のベルのような可愛い系なら許せるが。
美青年がすると不快な気分になる」
最後に獣人の真面目な発言は、トドメでも刺された気分で、
ラティはテーブルに顔を伏せてしまった。
「私は女なのに・・」
----------------------------------------------------------------------
「皆、揃っているか?」
5人がいる場所に、最期のひとりがやってきた。
「え?マッシャ?」
「そ。今回のパーティは、俺がリーダー。
このギルドからは、俺達のパーティと後2つある。
他の地域のギルドからも応援チームが来ることになっている」
今回は、先日20頭発見された魔物を退治する為に、国から依頼が来たのだ。
騎士や兵士だけでは、魔物退治は難しく、ベテランの力を借りたいという話を
ギルドに話を持ってきたのだ。
それに3つのギルドから協力を得ることが出来て、編成された。
彼女のパーティと他のテーブルに集まっていたパーティが立ち上がり
集合場所である城の正門前に向かうことになった。
「協力感謝する」
正門で待ち受けていた騎士達は、ギルドのパーティのリーダー達に挨拶をすると、
今回の魔物退治の騎士との連携計画を説明に入った。
騎士は、魔物退治に知識がある100人参加。
その中に、彼がいた。
説明が終わると、それぞれのパーティで受け持つ場所の担当を確認。
1時間後に出発ということで、皆が自分の持ち物を最終確認することになった。
「ラティ」
持ち物確認して、休憩していた中、彼女は昨日聞いたばかりの声に顔をあげた。
「ラリー」
「君の提案、素晴らしいよ」
甲冑を着て、片方にマスクを持ちながら彼女の隣にかける。
「皆で分担すると、きっと早く終われるね」
「そうだな」
彼女のパーティの面々は、美青年とイケメン騎士が楽しそうに語り合うので
彼女の話が本当だったことに驚きを隠せない。
「ラティが言っていたことは、真実だったのか」
「夢じゃないんだな」
「それにしても、似合わない。美青年が笑顔を振りまいている相手がイケメン。
同性に見られてもおかしくないな」
「ああ、違和感を感じたのは、ソレだ。男女のカップルに見えないんだよ」
外野は勝手にあれこれ意見を言い出し、2人には迷惑なことだ。
ただ、彼女の所属するギルドは、彼女が女性だと理解しているが・・・。
「おい、そこの同性バカカップル。きもいぞ」
他ギルドまでは、伝わっていない。
彼女と彼は、ラブラブに見えたのだが、それが他ギルドには、
同性カップルに見えていたのだった。
騎士達や兵士達は、既に彼本人から彼女は女性だと聞いているし、
身分証明の通行証を確認した兵士が女性だったと話をしていたので、
外見美青年だが女性だと知っている。
「何?同性だと」
彼女は瞬時に、思考が冒険者モードに切り替わり、剣を素早く抜くと、
大きな声で自分達を詰った相手の首に充てた。
まるでアサシン。
しかもやたら美青年顔で睨む顔は半端なく恐ろしい。
あまりに素早く、Aクラスは伊達ではないと誰もが感心する。
「お前、目が腐ってないか?私が頭がすっきりさせてやろうか?」
低く相手を追い込むような言葉に、言った本人(大柄な傭兵)はぶるぶると震えだした。
圧力感というかその気迫が、恐ろしい。
「ダルカン。お前の負けだ」
仲間が仲裁に入ってきた。
「済まない。君がギルド「ベルバ」で、有名な美青年冒険者だね。Aクラスと聞いている。
俺は、そこの大男ダルカンのいるパーティのリーダー クラサム。
こいつは、恋愛が出来ない奴で、ヤッカミなんだ。済まない」
済まなそうに謝罪する彼に、ダルカンはぐっと唾を飲みこんだ。
「うう。確かに羨ましいと思うが、こいつは・・」
「おい、いい加減にしろ、ダルカン」
「話の腰を折るが、もっと重要な事を伝えよう」
きりっと、美青年が剣を腰の鞘に戻し、人差し指を突き出す。
「な、なんだ」
「私は女だ。外見は父親似で男顔だがな。お・ん・な だからな。同性ではない。
異性のラブラブカップルなんだ。そこは訂正しろ」
生真面目に告げるラティに、大柄なダルカンとクラサムは口をあんぐりさせて
動きを止めた。
周囲もざわり。
「「ええ~、君(お前)、女!」」
怒らせると、血の雨が降ってもおかしくないと言われるギルド「ベルバ」の
Aクラスで冷淡な美青年冒険者の話は有名だ。
だが、その美青年が「女性」だという話は伝わっていなかった。
「し、信じられない」
その言葉に、いつものようにラティはギルド発行の通行証を目の前に突き付ける。
「う・・女性という文字が」
「どうだ。分かったら、女性に対してのセクハラ発言は撤回。謝罪を要求する」
直ぐにダルカンとクラサムは「女性に対し大変申し訳ありません」と
頭を下げたのだった。
「まあ、そこまでにしようか」
成り行きを見守っていた彼氏が止めたので、彼女は冒険者怒りモードから
乙女モードに切り替わった。
「そうだね。ラリー、心配かけてごめん」
恥ずかしそうにする
その乙女っぷりに、やはり美青年姿でそれは辞めて欲しいと
その場にいた誰もが思った。
少し離れた場所で静観していた彼女のパーティの面々は
複雑そうに呟いていた。
「以前のラティじゃないな」
「すっかり乙女だねえ」
「あれで魔物退治大丈夫か?」
ちょっと乙女モード過ぎて、仕事に差し支えないか不安が過る。
「あら、きっと前よりも真剣さが違うと思いますよ」
女性魔術師が、くすくすと笑う。
「え?どうして分かるんだ」
男性陣は、首を傾げる。
「彼女は、彼を守るという使命を勝手に持っていますので、
彼に危険が迫れば、いつも以上の力を使うと思いますから」
「なるほど」
「いわゆる愛の力ってやつか」
彼らは、納得したのか頷きあった。
「ま、とりあえず、無事に仕事が終われば文句ねえよ」
マッシャが、たばこを吹かしながら空を見上げた。
ギルド 「ベルバ」
ベル・ソーラ
20代魔術師(中級クラス)ギルドではBクラス
黒髪 青い瞳 160㎝
ワッツ・ジャルダバ
30歳 傭兵 ギルドではAクラス 武器はソード系 魔術は少しだけ使える。
茶髪 茶色の瞳 190㎝
レギル・サバラー
20代 弓手 ギルドではBクラス 目が良く1KM先までは把握出来る。
紺色の髪 黒い瞳 180㎝
ザザン
30代 黄土色のライオンのような顔をした体は人型で、しっぽがある獣人男性。
ライオン系の獣人の国ダザラデ国出身。金色の瞳
ギルドでは、Sクラス。 武器は自身の爪、斧使い。
2M 大柄
マッシャ・ラードン
30代 ギルドではSクラス 武器は聖剣ラグーン
美青年とか美女が好きな男 180㎝
他パーティ
ダルカン 30代 男 2Mの巨体。斧2本が武器。ブーメランのように扱う。傭兵。Bクラス。
茶髪、茶目
クラサム・ダトン 30代 紺色 紺色の瞳 190㎝
Aクラス 弓手 話が分かるリーダー