こんな人もいるものさ
女性に振られやすいイケメン騎士と外見美青年の冒険者の彼女
シリーズ第1弾
NLですが、BLっぽい、GLっぽい?
いろいろあります。
とりあえず、面白い男女の恋愛になる予定です。
おもろい(面白い)男女の出会いの話を1つ。
今年25歳になる彼の顔は、まあイケメンの部類。
職業騎士なので、そこそこ運動もしてきているので標準体型。
出世も夢ではない地位。
そんな優良物件な彼だが、中々結婚が出来ない。
彼自身はモテるので、
女性から声を掛けてくることが多い。
出会いはよくある。
過去5人の女性と付き合ったことがある。
ただ、何故か付き合ううちに付き合っている彼女の様子がおかしくなってくるのだ。
問題はここから
付き合ううちに彼の彼女は、次第に濃い化粧になってくる。
次第にやたら臭いがきつく鼻につく香水をしてくるパターンが多いのだ。
服装も通常のドレスから派手なドレスへと移っていく。
「どうしてそんなに化粧が濃くなるんだ?香水もきついよ」
彼が何度となく告げる言葉に、歴代の彼女になった女性達は、
「だって、貴方に釣り合うようにしたいの」
と返答する。
(何故?化粧と香水を付けることの何の意味が?しかもそんな派手なドレスはちょっと・・俺の好みではない)
彼は辞めて欲しいと願い
「釣り合うって何?俺はそんなもの求めてないよ」
何度かデートの最中に、化粧と香水について話をする。
「酷い。貴方はイケメンでモテるからそれに頑張って合わせているのに」
女性は、泣き伏す。
彼女は必死なのだ。
モテる彼を持つと、彼を慕う者達からのバッシングに耐えなければならない運命。
彼に釣り合うよう背伸びしたり、女を磨かないと という勝手な思い込み。
周囲の偏った男性の好みだと言う化粧の仕方。
間違った知識が増えて、彼女は悩み始める。
モテる人に釣り合う為の努力(間違っているのだが)
女性の苦悩が彼には理解されず(彼女のすることが分からない)、
彼と付き合うことを諦めて離れて行くというのが正しい。
「私、もう辛いの。さよなら」
お付き合いして5人目でも、同じような言葉で別れを告げられた。
「どうしてだ?」
きちんと理由を言葉にして彼に伝えれば、彼はそんなことは気にしなくていいと
言っただろう。
だが、誰も彼に伝えてこなかったことで、彼は別れることになる理由が納得いかず
25歳になるまで独身で過ごすことになってしまったという。
顔は良いし、仕事も出来る、稼ぎ頭で、優良物件なのに、それが全て報われない。
「私に何を求めているのか理解出来ん」
彼自身、女性の心理に弱いのも原因。
女性に振り回される意見を言われると、閉口してしまうのも問題だった。
あれから2年。彼女なし歴が加算されていく。
彼は、結婚相手を探すのも婚姻するのも面倒になり
独身を貫こうと決意するが、家族はそれを許さない。
彼の意志に反し、最後のお付き合いした女性との後、
毎月のようにお見合いをさせられることになってしまった。
今回もまた、彼の独身宿舎にお見合い絵姿紙が両親から届いた。
この国では、お見合いする場合、絵姿の紙が略歴と共に届く。
(また、成人式にでも着るような凄いドレスに、化粧がまた凄い凝っているな)
手に持った紙からは、香水の匂いがプンプン。
咽てしまう程のきつさ。
(この女性も、付き合ううちに、また「つり合いが」とか、言うのかなあ)
「どれどれ。ほお、これはまた美人だな」
隣りの部屋の友人が、絵姿紙を彼から取り上げ見る。
くんくん匂いを嗅いで
「ああ、これは今流行りの王都前の香水屋の人気商品の1つかな」
女性に関することは、よく知っている。
「お前が見合いすれば」
「あのなあ。俺は来月昇進したら、客室係の侍女のエルシーと結婚する予定」
友人は、羨ましいほど幸せそうな顔をさせる。
彼は来月、晴れて28歳独身貴族を卒業する。
お祝いをくれるなら
彼女のお守りになる赤い魔法石をと強請られた。
かなり高額だったが、親しい友人なので渋々贈ったところだ。
「あ、そう」
「お前は、選り好みし過ぎ。
そういえば、お前ここのところ毎月お見合いしても、会って直ぐに断っているから
同性説が噂されているが・・・。本当はどうなんだ?まあ、それはそれでいいが」
この世界では、同性でも異性でも結婚出来るから、珍しくはない。
ただ比率は、1割。男でも女でもからかいがある。
7割は標準の異性婚が多い。
他の割合は、異種婚(人外と婚姻とか、別種族と婚姻)
「ああ。まあ、そう言われても仕方がないな。周囲が皆むさい男ばかりで、
見回しても視界に男ばかりしか写らないからな。
間違われても仕方がない環境だからな」
騎士なんて、男ばっかり。
女性騎士は、1割程度で、上層部位でないとほとんど出会うこともない。
今は、地位的には中間職の実行班の班長。真面目に仕事をしているが、それほど目立つことを
していないし、今は平和なので活躍して昇進するようなことがほとんどない。
目の前の友人は、盗賊集団討伐で運良く活躍出来たからだ。
「はは。まあ、出会いっても、街に出た時とか、城内部で侍女か。
いろいろな侍女とお茶会の催しにお前も参加してみればいいだろ」
出会いがないので、貴族出身の侍女との交流会もある。
「香水臭いのは・・ちょっと。顔も化粧で誤魔化しているところも・・」
「お前、苦手だったか」
「ああ」
友人も苦笑する。
「はは、美人だと思って、共にして。朝見たら 誰ですか?と問いたくなる女性もいるからな」
「・・・。恐怖だよ。昼間と顔が違うから」
彼は、自分の姉達が主な原因(弟をしもべのように扱う)で女性は面倒だと思っている。
ただ、我慢すればいい、そう思って女性と付き合いを始めるものの
女性側が自分とは釣り合わないからと、振られてばかり。
皆同じ理由で、彼を振った。
自分はもしかして男性の方が好みなのでは?と自分でも迷うくらい。
自暴自棄に陥って早数年。
「俺、女性が苦手で、結婚出来るか分からないよ」
「・・うわ・まあ、まだ枯れてるわけでないし、とにかく巡り合うまで、頑張れ。
男性を選んでも驚かないからさ」
それは、それで虚しい。
「でも、またお見合いするんだろ?」
「ああ。仕方がないよ。家族の頼みだからな」
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そして、お見合い当日。
中流の貴族が使用するというちょっと豪華なホテルのレストラン会場。
今年20歳の妹がお見合いとするということで、少し離れた場所の物陰から見守る姉が1人。
フードを被り、怪しい人物に見えるが、誰も何も言わない。
この国は、昔は13~18歳が結婚適齢期だと言われていたのだが
女性も社会的地位を築き、男性並みの仕事もする者達も現れたことで
一気に13~24歳辺りまでが適齢期とされた。
25歳以上は、婚期が遅いと言われる時代だ。
物陰から見守っている姉というのは、23歳。既に適齢期終盤。
20歳の妹よりも先にお見合いをするべきなのだが、いかんせん。
彼女の職業はギルド所属の冒険者。かなり優秀でAクラスという逸材。
そこまではいい。
彼女が中々相手が見つからないのは、彼女の外見に問題があった。
「まあ、素敵」
「あのおひとりですか?」
顔を隠す為に被っていたフードがとれかかり、直そうとした彼女の横で、
彼女を見た女性2人がうっとりと
見惚れながら声を掛けていた。
「あ、間に合ってます」
お見合いする妹の様子が気になるので、直ぐに断るが、中々理解してくれない。
「おひとりでしたら、ご一緒に食事しませんか?」
「君ね、間に合っていると私は言っているだろ?」
「うわ、声もいいわ~」
そう、彼女は見た目まるっきり美青年。
父親に瓜二つの姿で、声も少しハスキー、身長も男性並み、しかも胸はまな板。
どこからどう見ても、男性にしか見えない。
それがネックで、男性好きな男性には声を掛けられるが、もちろん断る。
彼女がタイプの男性に声を掛けると、その男性は自分は同性好きでないと
女性だと思われずに振られるという。
外見は男性にしか見えないが、心は乙女。
仕事も冒険者になったのも、男性と見間違われて、成り行きだ。
成り行きで強くなってしまい、ますます可憐な女性には
ほど遠くなっていく。
気が付けば、恋愛は無理で、ずっと独身でいるというかなり傷つく試練が続いた。
そんな彼女は、自分は同性を好きにはならないし
だからといって、異性には見向きもされず。
悩んだ末、現在商売をしている両親を手助けすることだけを考えることにした。
そんな家族事情の中、妹に中流貴族から見合いの話が来た。
しかも、お見合い歴数年という男性の。
普通は、そこまで回数があると疑うだろう理由ありの男性らしい。
「男性が断っているのか、女性に断られているのか?」
「あまりに回数が多いので、心配だわ」
両親も心配しているが、かなり顔も良い優良物件の騎士男性なので、妹自身は了承している。
万が一のこともあるので、両親には遠くから見守ると伝え
現在待ち合わせ場所のホテルのレストラン内の別テーブルの物陰から
様子を見ている状況だった。
彼女のこの時、男性の絵姿を見ていなかったので、誰が妹に近づくのか
見張っていたのだ。
変な奴なら、自分が出て行けばいいとも考えていた。
この時ばかりは、自分の姿に利用価値があり、喜んだものだ。
それなのに、断っているのに聞く耳を持たない女性達に業を煮やしていると
背後からラフな格好をした男性来て、女性達がそちらへ視線を向けた。
「悪いけど、彼とは仕事の打ち合わせをするんだ。またにしてくれるか?」
そう一言言うと、
「そうなんですか」
「残念です」
と、急に態度が変わり、その場から去ってくれた。
「何故?」
彼女が茫然としていると、彼は苦笑する。
「彼女達は城の侍女だ。仕事と言えば、理解してくれる」
「・・・・。そういうもの?」
「さっきから、何を見てるんだ?」
入り口から見えていたことを告げられると、彼女は蒼白になった。
初対面だというのに、その男性は結構あからさまに質問してくる。
「否、妹が来てる。心配で物陰から様子を見ているところ」
「兄としては、心配なんだ」
兄弟愛を感じたのか、彼がなるほどと頷くと、彼女は今度はキレた。
「・・・。私は女だ。失礼だぞ」
「え?女性?どう見ても男性にしか・・」
彼女は顔を真っ赤にさせて、腰に下げていたマジックアイテムの袋から
カードを取り出す。
「これを見ろ」
ギルド発行の通行証を見せると、彼は驚いた。
「本当だ。名前の下に女性と記入がある」
「分かってくれるか。顔は確かに父に似てしまって、こんなだけど。
む、胸もあまりないが、これでも女だ。自分で言って虚しい」
涙目になっている彼女に、男性は好感を持った。
クスリと彼女には気付かれない笑みを浮かべる。
(面白い。こんな面白い女性がこの世にいるとは)
「良かったら、話を聞くよ」
「え?でも見ず知らずの人に」
彼女はフードを潔く外し彼をよく見ると、イケメン顔。
そのイケメンな彼に彼女は、初めて女性として誘われて茫然となった。
(大抵は、女?気色悪いと叫ばれるのに、この男・・)
「いろいろ思うことがあるんだろ?聞くよ。俺も、いろいろあって、それもちょっと
どう思うか聞いてみたいし」
「で、でも」
外見男性にしか見えないのに、オロオロするところが女性らしく可笑しいので
彼は苦笑する。
それから彼は、ふと顔をあげ、少し先を見て決意した。
「その前に、ちょっと待っててくれるかな。断ってくるから」
その男性は自分を通り過ぎて、彼女がずっと見守っていた妹と両親の前で立ち止まった。
「え?」
物陰から見ていた彼女は驚いて、彼の背後へ近寄った。
「すみません。両親からどうしてもと言われて、こちらへ来ましたが
今はお見合いはお断りしているもので。真に申し訳ありません」
妹と両親に丁寧に頭を下げて、何も言われないうちに踵を返した。
彼の背後近くまで来ていたので、踵を返したところで
歩き始めた彼と真正面でぶつかりそうになるが、なんとか回避。
彼は彼女と視線を合わせると、笑った。
「じゃ、用が済んだところで居酒屋にでも」
「え・・えええ?」
彼女は妹と両親、彼と見比べて焦って、彼の腕を掴んだ。
「ちょっと待て。お前、私の妹の相手なのか?」
「え?妹?この女性は、君の妹?」
「そうだ」
「お姉さま」
見合い相手の言葉に衝撃を受けていた
可愛らしい女性と両親は、2人の会話でようやく我に返り慌てて立ち上がった。
「ラティ」
両親と妹も彼女と男性を見て、驚いている。
何故その彼と親しいのか。
その3人の前のソファーに座っていた、お見合いの仲人を頼まれていた婦人が
盛大なため息を吐きつつ立ち上がった。
「ラリー、また断るのですか?」
「伯母上、悪いが母によろしくお伝えください。それでは」
彼は、驚いている彼女の腕を取ると、走り出した。
ラティ・ス・ウェルディー (呼び名 ラティ)
23歳 冒険者Aクラス 外見男性に見える女性。
ウェルディー商会の長女
銀髪 薄い水色の瞳
(アサシンモードになると、真紅の瞳に変わる)
ランスロッド・アーティア 25歳 (呼び名 ラリー)
アーティア家の長男 中流の貴族
茶髪、焦げ茶の瞳