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第七頁「有給、のちドキドキ」

 「うっ……おぉぉぉりゃぁぁぁぁぁ!!」


 「もっと急いで章! 今日こそホントに遅刻しちゃうわよ!?」


 「もう…ぜぇぜぇ……そうして…はぁはぁ……るって!

  限界! 目一杯! 超えられない壁っ!!」


 「ああ〜もうっ! 口を動かすぐらいなら足を動かせ、足を!」


 茜ちゃんに急かされ、死に物狂いで自転車をこぐ。

 もちろん、彼女を後ろに乗せて。しかも坂道―――まさに地獄だ。


 意識の半分は別世界に連れて行かれている気がする。

 心なしか、視界もぼやけているような?

 もはや道を目で見ずに、長年の経験で感じながら走っている……そんな感じだ。


 それより何より、多分、頭まで酸素がちゃんといっていない。

 このまま走り続けたら、事故るより先に酸欠で死にそう……。




 『茜ちゃんは乗ってるだけだから気楽なもんだ』




 ―――なんて言ったら間違いなく投げ飛ばされる。

 まあ、こうなってしまった原因も、僕が近年まれに見る大寝坊したからに他ならないのだけど。


 だけど、たまには運転を代わって欲しいものだ。

 それか、茜ちゃんも自転車で来るとか。






 ―――終業式までの日数が指で数えられるぐらいになった日、例によって僕らは遅刻しそうだった。

 そこにきてさらに、自転車でも間に合うか微妙な時間。

 今日という今日は、学校が坂の上にある事を恨むぞ……。




 ………




 ………………




 よしっ! 学校が見えてきた!

 ―――って!?

 もう予鈴のチャイムが鳴ってる!?


 「もっ、門が閉まるぅっ!?」


 ちょっと風紀委員のみなさん! そんな時間ピッタリに門を閉めなくても!

 鬼ですかあなた達!?



 「あきらぁ! ラストスパート! 後ちょっと! 頑張りなさいよ!」


 言われなくてもやってるって!




 ………




 ………………




 ―――ダメだった。

 後10秒ぐらい早ければ、ギリギリセーフだったのに。

 必死の努力も虚しく、門は固く閉ざされている。




 せめて、無慈悲に門を閉めた風紀委員の顔を見てやろうと、最後の力を振り絞って頭を上げた……が。



 「はい、2人そろって遅刻よ。どこまでも仲が良いわね、あなた達。

  この遅刻届を、指導部室にまで提出してから教室来てね。それじゃ」


 何の縁か、門を閉めた鬼にも等しい風紀委員は翔子ちゃんであった。

 そう言えば、ウチのクラスの風紀委員は彼女だったっけ。


 用紙だけを残し、自分はさっさと教室へ向かってしまった。

 むぅ……温情のかけらもないな。


 それにしても……疲れたなぁ。

 急いでいたせいもあるんだろうけど、いつもの倍ぐらい疲れた気がする。

 ホント、朝からボロボロだ。




 ―――それから、僕達は週番の先生に門を開けてもらい、

 「惜しかったな」と、妙に優しい言葉をかけてもらった後、

 届出をして、傷心のまま教室へと向かったのであった。




 ………




 ………………




 「おはよ……」


 「オッス章―――って、半分死んでるな、オイ?」


 「そっとしておけよ、圭輔。

  今日は相当ハデにやらかしたみたいだからな」


 「あっ……ああ、そうだな」


 何やら圭輔と光が言っているようだが、耳に入らない。


 茜ちゃんはと言うと、翔子ちゃんのところへ抗議に向かったようだ。

 後ろに乗って騒いでいただけとはいえ、ホントに元気な娘だ……。


 重い足を引きずって、何とか席に辿り着く。

 椅子に座った瞬間、身体は机に突っ伏していた。



 「ところで圭輔、何で体操服なんか着てるの?」


 「その質問は、今日の1時間目が何か確認してからするんだな」


 身体を机に密着させたまま、首だけ持ち上げて、教室前の時間割表を確認する。




 『1:体育』




 何とも愉快なワードである。


 初っ端から体育―――死んだ。

 そう言えば体操服持って来てたんだっけ。


 廊下を見ると、合同で体育をする1−Bの連中が、既にグラウンドに向かって歩いていた。


 だが、現状を省みるに、とても出れる状況でないのは火を見るより明らか……なはずだ。



 「……圭輔、僕は1時間目に有給を使う事にする」


 「はいはい、保健室で休むってか。先生には、俺から上手く言っておいてやるよ。

  しかし保健委員がそれじゃあ、マジで世話ないよな」


 「ほっとけ」


 冗談めかして言う圭輔と、一部始終をイヤ〜な笑顔で見ていた光を残し、

 僕は一路保健室へと向かった。

 あ゛〜、足がふらつく―――





 ………





 ………………





 そういうワケで、保健室。



 「失礼しま〜す……」


 「あら〜、桜井くんじゃない。いらっしゃい」


 中には、養護の崎山先生がいた。

 パソコンがある机に向かっている辺り、デスクワークをしてたみたいだな。



 「どうもです……」


 「疲労困憊って感じね。まあ、朝からあれだけ自転車飛ばせば、当然と言えば当然かも」


 「みっ、見てたんですか!?」


 「ここからだとね、校門の様子って丸見えなのよ。

  桜井くんと陽ノ井さんは、いつもギリギリだから、見ていて面白いわよ〜」


 茜ちゃんのことまで知ってるのは……突っ込み無用か。

 華先生つながりか、あるいはソフト部でケガした時とかに知り合ったかだろうし。



 「こっちは必死なんですから、楽しまないでくださいよ……」


 「あらあら、ごめんなさいね」


 子供のような笑顔でそう言う崎山先生。

 ……この顔で笑われると、何も言い返せなくなっちゃうんだよなあ。




 それはともかく、ここに来るのは結構久しぶりだな。

 たまにどうしようもなく疲れた時にか休ませて―――いや、有給を使わせてもらってないし。




 「休んでくんでしょ? ゆっくりしていってね。

  ベッドは全部空いてるから、好きなの使っていいわよ」


 「ありがとうございます」


 いやあ、崎山先生はユルいから助かるな〜。

 さすが、“あの”華先生と仲がいいだけはあるな。

 ……いや、関係性は微妙だが。



 相変わらずおぼつかない足取りで、窓際のベッドに倒れこむ。

 あ〜、たまらんなこれは。

 授業を休んで、かつ大手を振って寝れるってのは、本当に最高だ。




 ………




 ………………




 横になった状態から、ちょうど体育の様子が見えたので、そのまま観察してみることにした。



 ―――それにしても……ウチの女子の体操服って、やっぱりアレだよなあ。


 アレ、と言うと抽象的だが、要するに短パンが、今では珍しいブルマなのである。

 端から見ても近くで見ても、露出度はかなり高めである。

 男子はノーマルな体操服なのに、この違いっていうのはどこから来るのか……まあ、どうでもいいけど。




 あいにく、僕の知り合いにはそういう系統に異常なまでの執着心を示したりするヤツはいないので、

 取り立てて話題になったりすることもない。


 そういう輩がいれば、少なくてもそいつらは喜ぶんだろうけど、実益があるかどうかは……微妙だな。


 ―――もしや体育教師が、己の目の保養のために!?

 ……それは、さすがにありえないだろ。


 大方、いざ変えるとなると色々面倒だってのが、本当のところだろうな。

 とりあえず、この場はそういうことにしておこう。




 とか何とか、どうでもいいような結論が出たところで、

 男女とも準備体操が終わったみたいだな。


 どうやら男子はサッカー、女子はソフトボールをするようだ。


 ソフトボールなんかしたら、ウチの女子が圧勝するのは目に見えている。

 何と言っても、女子ソフト部の黄金バッテリーがいるわけだし。

 それに確か、打撃だって2人とも上位の打順だったはずだ。


 1−Bの人……知り合いで言えば、優子ちゃん達が気の毒だな。




 男子のサッカーはどうだろう?

 こっちは圭輔とか光がいるけど、1−Bも運動神経良いのが揃ってるからなぁ。


 野球だったら、圭輔がいる時点でまず負けないんだけど。

 アイツはいつも手加減無用全力勝負だし。




 ―――まあ、男子のサッカーにせよ、女子のソフトボールにせよ言えるのは、

 「体育だからどっちが勝っても関係ない」ということだ。


 それじゃあ、僕は気楽に茜ちゃんたちの活躍を観戦させてもらうとするか。

 と言うか、男子を見ようにも、このベッドからじゃ位置の関係上、女子のソフトしか見えないし。




 ………




 ………………




 で、試合開始。

 1−Aは後攻らしく、まずは守備だ。


 ピッチャーはやはり茜ちゃんで、キャッチャーはもちろん翔子ちゃん。

 志木高女子ソフト部黄金バッテリー、ここに見参! って感じだ。


 もっとも、茜ちゃんはハンデ付きらしく、利き手と逆の左で投げている。

 多分、変化球も使わないんだろう。

 前に、体育の時はそうするんだと言っていた気がする。






 それでも、軽〜く先頭打者を三振に切って落とす。

 さすがに現役ソフト部だけあって、左投げでも反則的に速い。

 投げられるだけでも驚きなのに……恐ろしや。



 んで、続く2番バッターも三球三振。

 このままいけば、当初の予想通り1−Aが圧勝して終わりそうだ。




 ―――おっ? もしかして3番バッターは優子ちゃんじゃないか?


 優子ちゃんって運動はできる方なんだろうか?

 少々さびしい話だが、長く付き合っている割に、そういうデータは全くと言っていいほど無い。


 茜ちゃんに打たれろとは言わないが、ぜひとも優子ちゃんにも頑張ってほしい。

 ……軽い葛藤だな、こりゃ。


 とりあえず、どっちも頑張れっ!






 さあ、いよいよ始まった注目の勝負。


 茜ちゃんが放った第一球は……ストレートだ。

 コースはよく分からないけど、とにかく速い。

 何度見ても利き手と逆で投げてるとは思えないよな……。


 その球に対し、早くも手を出す優子ちゃん。

 ―――しかし、これは空振り。けど、タイミングはそんなに悪くない。




 続けて2球目。また速球!

 やっぱりコースは見えないけど、さっきと同じぐらいの速さだ!






 ―――キンッ!




 おおっ!?

 なんと優子ちゃん、二球目にしてミートした!?


 ……ファールだけど。

 コースだかタイミングだかが、まだ少しズレていたらしい。




 そしてツーストライクからの三球目!

 三度目の正直、今度も速球だ! 相変わらずコースはよく見えない!






 ―――カキンッ!!




 おおおおっ!?

 今度は上手く当てたっぽい。いい音がしたぞ!


 優子ちゃんが打ったボールは、多少詰まりながらも、内野の頭を越えて外野の前に落ちる。

 なかなか技ありなヒットである。

 足も速い優子ちゃんは、難なく一塁に到達。1−B初ヒットとなった。




 ……へぇ〜、優子ちゃんってけっこう運動できたんだ。

 左投げとはいえ、あの茜ちゃんからヒットを打ったわけだし。


 意外、という訳でもないけど、やっぱり少しビックリだな。

 どうしても、部室でデスクワークしてる印象が強いからかな。


 しかし、茜ちゃんからヒットを打てる人がいるとなると、

 もしかしたら1−Bが勝てるかも。

 ―――これは見逃せない一戦になってきた。




 そう思って迎えた、期待の四番打者。知らない娘だ。

 さすがに四番を任されているだけあって、ガタイはいい。

 運動部なのは間違いないだろう。


 ……が、それだけで打てるほど茜ちゃんの球は甘くないらしい。

 その娘は二球目であえなくキャッチャーフライに打ち取られ、3アウトと相成った。




 次は1−Aの攻撃。

 どういったオーダーを組んだかは知らないが、

 どちらにせよ“あの2人”なら、打率はほぼ十割ってところだろう。


 それを考えると、やっぱり1−Aの圧勝かなあ?

 茜ちゃん、翔子ちゃんが連続で長打ならそれだけで一点入るわけだし。

 要するに、攻撃力が違いすぎる。


 こんなにじっくりと女子の試合を見るのは初めてだから、実際は何とも言えないけど。






 1−Aのトップバッター……あの娘は、上田さんかな?


 ロクに話したことないから、どんな娘なのかは知らない。

 ソフトボールが上手いかなんて、なおさらだ。


 それより僕は、1−Bのピッチャーに注目したい。




 その注目の投手とは―――何と、怜奈ちゃんなのだ。

 てっきり優子ちゃんかと思っていたら、彼女はキャッチャーやってるし。


 光から聞いた話では、確か怜奈ちゃんは運動神経抜群だったはずだ。

 はてさてどの程度の物か、お手並み拝見といこう。






 一球目、繰り出されたボールは速球―――って、速っ!

 左投げの茜ちゃんより速いぞ!?


 その上コントロールも良さげだし。

 これはもしかするともしかするかもしれない……。


 怜奈ちゃんはそのまま上田さんを三振に抑え、

 そのまま、続く二番・三番も連続三振で打ち取った。

 それにしても、なんて短い攻撃だったんだ。


 まさか、茜ちゃん&翔子ちゃん頼みのチームって訳ではないだろうから、

 怜奈ちゃんの実力は推して知るべし、だな。






 そして二回表、再びマウンドには茜ちゃん。


 これまた一回に引き続き好投を見せ、

 五番をピッチャーゴロ、六番、七番を連続三振と、この回も無失点に抑えた。


 ちなみに、七番は未穂ちゃんだったが……やはりと言うか何と言うか。

 バットもろくに振れないまま、三球三振になってしまった。

 ご愛嬌といった所である。






 ……何やら投手戦の予感がしてきたな。

 茜ちゃんは言わずもがな、怜奈ちゃんも相当いいピッチャーみたいだし。


 それに加え、現役ソフト部の2人が容赦なく本気勝負ときている。

 くどいようだが、これは体育なので勝とうが負けようがどうということはない。


 にもかかわらず、真剣勝負の2人……。

 ソフト部のプライドがそうさせるのか、あるいは性格か?

 どちらにせよ、遊び感覚でやってないのは確かだ。






 そして、再び1−Aの攻撃となる。

 四番は翔子ちゃんだ。


 現役ソフト部と、1−Bに現れた超新星の対戦。

 ―――とは言っても、実際には何度か対戦済みかもしれないが。

 何にせよ、これは大一番に間違いないだろう。






 少しの間があった後、ついに第一球が放たれた。

 やはりスピードボール。

 余談になるが、先ほどから怜奈ちゃんはこれしか投げていない。






 ―――カキンッ!!




 ああっと!? 

 いきなりヒットだ!


 伊達に現役でやってはいないといった所か、見事に初球打ち。

 飛んだボールは外野の頭を越えて、二塁打となった。


 う〜む……流石に、名門志木高女子ソフト部の中心選手だけのことはある。

 普段から茜ちゃんや他の投手の球で慣らしているだろうし、

 案外、速球打ちの方が得意なのかも知れない。




 とか何とか言っている内に、五番の茜ちゃんもツーベースヒット。

 翔子ちゃんがホームインして、1−Aが先制点をゲットした。

 やっぱりこのまま何だかんだで押し切って勝つんだろうか?




 ……と、そう思いかけたところだったが、敵もさるもの。

 怜奈ちゃんはすぐに落ち着きを取り戻し、続く六番、七番はきっちりと抑えた。




 ツーアウトで迎えた八番バッターは……委員長―――もとい、福谷さんか。

 1−A委員長、福谷ふくたにつばささん。


 日頃から何かと前に立つから、その姿を目にする機会も多い。

 だから顔と名前はすぐに一致してくれた。


 かと言ってよく話をするかというと……。




 そういえば、個人的に話す機会もけっこうあるな。


 奇しくも、1−Aには帰宅部が僕と光しかいないという事で、何かと雑務の手伝いを任されるのだ。


 その上、光は毎日帰りのホームルームが終わるとすぐに帰ってしまうので、

 結局彼女を手伝うのはほとんど僕。

 必然的に話す機会も多くなるというわけだ。


 さっき顔と名前がすぐに出てきて一致したのも、委員長云々より、この事の方が大きいかもしれない。

 ―――さすがに、ソフトボールが上手いかどうかまでは知らないけど。




 さて、そんな福谷さんの打席。

 残念ながら平凡な内野ゴロに倒れ、1−Aの攻撃は終わった。

 まあ、あの豪速球にバットを当てただけでも大したものだろう。





 ………





 ………………





 ―――1時間目が終わるちょっと前に試合終了。

 結果はというと、3−1で我が1−Aの勝利。


 だが、1−Bも健闘した。

 最終回に茜ちゃんから、優子ちゃん、四番の娘、五番の怜奈ちゃんが連続ヒット。

 どうにか1点はもぎ取ったのであった。


 やたら茜ちゃんが悔しそうだったのが、かなり印象的だった。

 やっぱ、左投げとは言え打たれたくなかったんだろうな、現役としては。






 さて……そろそろ戻るか、って所で崎山先生が声をかけてきた。



 「桜井くん、1時間目終わったけど……どうする?

  もう戻る?」


 「あっ、はい。そうさせてもらいます。

  十分休めましたし」


 「本当に? なんだか随分楽しそうだったけど、ちゃんと休めたの?」


 「えっ、ええ! そりゃあもう! バッチリですよ!」


 とりあえず、元気になったことを激しくアピールしてみた。

 ……我ながら妙な動きだったが。


 ―――もしかして、知らず知らずの内に「おっ!」とか言ってて、それが聞こえたのか?

 それはちょっと……いや、けっこう恥ずかしいぞ。


 でもまあ、休養という当初の目的は果たせたことだし、細かいことはこの際いいだろう。



 「そう? なら良いんだけど……でも、辛くなったら無理しちゃだめよ?」


 心底心配そうに言ってくれる崎山先生。きっと無意識で出たセリフだろう。

 優しい言葉だけに、何だかだましてるみたいで、妙に申し訳ない気分だ。

 いよいよ苦しくなってきたし、とっとと戻るか。



 「はい。本当に大丈夫ですから」


 「そう? ならいいんだけど……」


 「それじゃあ、2時間目は出てきますから。

  もう戻ります。ありがとうございました」


 「はい、それじゃあ。またいつでも来てね♪」


 微笑みながら手を振ってくれていた先生の姿が印象的だった。


 ―――しかし、保健室で「また来てね」なんて言うものなのか?

 この辺は、親友であるともっぱらの噂である華先生と同じニオイがするな。






 ………






 ………………






 そして、事も無く放課後。

 朝を除けば、今日も実に平和な一日だった。


 何だかんだで体も疲れてるし、今日はさっさと帰って、夕食まで昼寝とシャレこもう。

 そう思って席を立った、その矢先。



 「桜井くん」


 図ったかのようなタイミングで呼び止める少女の声。

 無粋なマネをしやがるのは誰だコンチクショウ、と声の主を見てみれば。


 今日、チラチラと僕の脳内に登場した、委員長こと福谷さんだ。

 ……はて、雑務の手伝いなら、いつも帰りのホームルームで頼まれるはずなんだが。



 「ちょっと、屋上まで付き合ってほしいんですけど……時間、大丈夫ですか?」


 「えっ?」


 屋上ですか? 福谷さんと?



 「あの! ダメだったらいいんです!」


 「いっ、いや! 大丈夫大丈夫!

  ……そっ、それじゃあ、いこっか!?」


 ダメだったらいいとか言う割には、何やら物凄い勢いを感じたので、声を裏返しながらOKしてしまった。

 してしまった、と言っても断る理由はなかったが。


 それにしても屋上とは……まさか屋上で雑務手伝い、ってわけではないんだろうな。






 屋上へと続く階段を、福谷さんと一緒にのぼる。

 彼女は、僕の少し後ろを追う形で付いて来ているみたいだ。


 ひとけが妙に少ない校舎に、2人の足音だけが響く。

 その音に合わせて、僕の胸も少し高鳴っていた。


 なぜって……そりゃあ、2人で放課後の屋上ともなれば、きっと何かあるんだろう。


 場所が場所だし、もしかすると―――何ていう展開も十分考えられる。

 さっき声が裏返ってしまったのも、勢いのことはもちろんあったのだが、ちょっとドキッとしてしまったからだ。

 ……我ながら自意識過剰というか、情けないことだが。




 ―――ぬ〜ん、さっきから福谷さんは黙して語らずだし……。

 もうすぐ目的地に着くが、未だ目的は全く分からない。

 残念ながら、福谷さんの表情からそれを読み取るのは難しい。






 一体、放課後の屋上ではどんな運命が僕を待ってるのやら―――


 作者より……


 ども〜ユウイチです♪

 いかがでしたでしょうかLife第七頁?


 今回から新展開ですね♪

 ……えっ? 大して話が進んでないだろうって?

 そりゃまあ……あくまで「少しづつ」動き出すだけですからね(^^ゞ


 まあ、焦らずに見守ってやってください(笑)

 新キャラも出てきて盛り上がってきてますしね。


 さてさて、放課後屋上に呼ばれるというベッタベタな展開に巻き込まれてしまった章くん!

 どっかで見たようなシチュエーションですが、どうなることやら?

 彼が思っている通りの展開なのか、はたまたどんでん返しなのかは次回のお楽しみという事で。


 それでは次回、またお会いしましょう!

 サラバ!(^_-)-☆by.ユウイチ


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