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第十六頁「走れ、元気印!」

 (―――んっ?)


 眠りから覚めてみると、いつもとは明らかに状況が違っていた。

 電気はついたままだし、ベッドの上じゃない、と言うか机に突っ伏してるし、パソコンはついたままだし……。


 早い話、SS書いててそのままパソコンデスクで寝てしまったのだ。

 パソコンのディスプレイではスクリーンセーバーが元気に作動している。



 (今何時だろ……)


 パソコンの時計を見てみると“7:02”の表示。

 目覚ましのアラームが鳴る28分前である。


 半端な時間だったが、とりあえず、アラームを切って下に降りる事にした。

 たまには早く起きてもバチは当たらないだろう。


 ―――しかしなあ。早起きはいいんだけど、眠りの方法が問題だ。


 夕べは筆が走ってたから勢いで遅くまで執筆してた。

 ……それはそれとして、部屋の明かりをつけっ放しだったというのがマズイ。


 どこかで聞いた話だけど、明かりをつけたまま寝ると疲れの取れ方が半分ぐらいになるらしい。

 この話が本当だとして、仮に夕べは2時頃に寝てしまったとすれば、

 通常なら5時間睡眠の所が、わずか2時間半の睡眠になってしまったという事である。

 睡眠時間が3時間未満って言うのは流石にヤバイ。


 恐らく、確実にどこかの授業では寝てしまうだろう。

 まあ、3時間以上寝た所で授業中に居眠りするのは日常茶飯事なのだが……。


 それはともかく、今も既に眠い。寝たはずなのに、疲れが取れてる感じがしない。


 それなら早起きせずに今から少しでも寝ろって話になるが、そこは違う。

 僕の経験からいって、ここで半端に寝ると、逆に眠くなって余計に危険だ。


 さらに、、もしこのまま遅刻寸前の時間まで寝てしまえば、

 茜ちゃんを後ろに乗せての、自転車・タイムアタックに強制突入してしまう。

 疲労の度合いから考えるまでも無く、避けられるもんならこれは避けたい。




 ―――とか何とか言ってるが、こんな事、わざわざ考えるほどおおごとでないというのも、また確かだ。

 別に遅刻しても、茜ちゃんに怒られ、翔子ちゃんたちにからかわれてから、あやのの小言を食らって終わりだ。


 授業で寝た所で、50分授業を丸々寝るわけじゃないし、誰かにノートを写させてもらえば大丈夫。

 今年は翔子ちゃんの他にもつばさちゃんがいるから、借りる度に翔子ちゃんに遊ばれる心配も無い。

 それに、今日習った所がテストでピンポイントで出るなんて確率はかなり低いだろうし。


 ……よしっ、何も問題無しだ! とりあえず朝ごはん食べて、出来るだけ元気に頑張ろう。



 プラス思考に切り替え、足取りも軽く部屋を出た。




 ………




 ………………




 「ふぅん。じゃあ、お兄ちゃんはろくに寝てないって事になるんだ。

  何だか変なの。本当なの、その話?」


 「よくは知らないけど……でも実際、何だかいつもより身体が重たいし。

  疲れの取れ方が半分になるかどうかはともかく、

  電気点けたまま寝るのはあんまり良くないみたいだ」


 「それはそうだと思う。不経済だし。きっと罰が当たったんだよ、電気を無駄にするなって」


 「いや、それはいくらなんでも違うだろ」


 「そうかなあ……? でも電気は大切にしないと、お兄ちゃん♪」


 「へいへい……」


 あやのとテーブルを挟んで、朝食しながらのひとコマ。


 今日の僕が起きた時の状況をあやのに話したら、こういう流れになっていた。

 疲労困憊な僕に対して、あやのはすこぶる元気がいい。


 ……朝から元気なのはうらやましいな、ホント。これも早起きの賜物なのか?

 でも、これと睡眠時間、どっちを取るって聞かれたら―――言わずもがな。


 残念ながら、目的が無いのに早起きするほど、僕は模範生じゃない。

 だからこそ、つくづくあやのの殊勝さには頭が下がる。



 「どうしたのお兄ちゃん? お箸が止まってるよ?

  もしかして……寝てたとか?」


 「おっ、起きてるよ失礼な! ちょっと、考え事してただけだ」


 「ホントに? 今日はあんまり寝てないんだから。

  朝から考え事なんて慣れない事したら、す〜ぐ意識が飛んじゃうぞ。

  せっかく早起きしたんだから、気をつけてよね。でないと、置いてっちゃうよ?」


 「別に、お前に置いて行かれたぐらいで遅刻なんてしないさ」


 いざとなれば茜ちゃんも来てくれるし。

 いや、彼女をあてにして寝るとか、そんな悪いことはしないけどさ。

 ……そう見られても文句は言えないが。



 「へぇ……強気なんだぁ、お兄ちゃんってば。

  ふ〜ん、いいんだ、そんなので。へぇ〜……」


 「何だよ? 引っかかる物言いだな」


 「お兄ちゃん? 今日は何曜日だか、知ってる?」


 「曜日? 今日は、え〜っと……水曜?

  それがどうかし―――」


 どうかしてるよ、おい。


 水曜日、それは志木高ソフト部朝練の日。

 よって本日、茜ちゃんはいくら待っても来ない。



 「私が悪ぅございました!」


 テーブルに手と頭をこすり付けて謝る。


 いつもの状況から考えると、今寝てしまえば、恐らく当分は起きないだろう。

 今日、あやのに置いて行かれる事は、即ち遅刻の大ホームランを意味するのだ。


 それを充分に理解した上での、先程からのあやのの余裕。

 わが妹ながら、計算高い奴め。



 「分かればよろしい!

  ……ってほら、遊んでないで早く食べてよ。

  せっかく早起きしたんだから、一緒にのんびり学校行こう、ねっ?」


 そういうあやのだって充分遊んでたし、朝食も僕と同じぐらい残っていた。

 まあ、気にするほどじゃないが。


 確かに、あやのとゆっくり学校へ行くのも悪くは無いな。

 あやのと二人で登校なんて、そうそうあるもんじゃないし。



 「しかしな、あやの」


 「えっ?」


 「一緒に学校行きたいなら行きたいって、初めからそう言えばよかったのに。

  別にこんな回りくどいことしなくてもさ」


 「そこはその……兄妹のコミュニケーションってやつ、かな?」


 苦笑いで言葉も濁すあやの。何て安直な言い訳だ。



 「お兄ちゃんは、こんな形でのコミュニケーションは望んでおりません」


 「む〜……お兄ちゃんの意地悪。本当は嬉しいくせに」


 「さあね。まあ、一人で行くよりは二人で行きたいかな」


 これは本心だ、嘘は言ってない。

 幾分カッコつけた物言いになってはいるが、まごうことなき真実。



 「お兄ちゃんも、素直じゃないんだから」


 「そうかも、ね……」


 あやのは怒ったみたいな口調で言ったが、顔は笑っていた。

 まあ確かに、他人のこと言ってられないよな。



 お互いに素直に思ってる事を言えない。

 でも、長い付き合いだから何となく考えてる事は分かってしまう。


 兄弟っていう、気の置けない関係だからこそ、相手に甘えて素直になれない。

 考えていることは至極近いはずなのに……。


 そんなことを考えると、何だかおかしくて、いつの間にやら笑顔になっていた。




 ………




 ………………




 余裕のある通学路。あやのとの会話も弾む。

 今思えば、これがこいつの狙いだったのかもしれない。



 「―――そう言えばあやの、部活はどうするんだ? もうすぐ登録だろ。

  ブラス、続けるのか?」


 「どうだろう……分かんないよ、全然。

  文化部とか運動部とか、そういうことすら決めてないし」


 「そっか。まあ、好きなのに入ればいいさ」


 「うん、色々悩んでみるよ」


 嬉々として言うあやの。まるで、悩む事すら楽しんでるみたいだ。



 あやのは、中学の時は吹奏楽部だった。

 小学校のころにピアノをやっていたからか、

 あるいは天賦の才能なのか、音楽は得意みたいだ。


 かといって運動が苦手なわけでもなく、むしろこっちも得意なようだ。

 実際、体育祭でリレーの走者として選ばれてたりもした。

 兄として、贔屓目で見ている事を差し引いても、どの運動部に入っても活躍できるはずだ。



 「そうだお兄ちゃん。今日の放課後、部活案内してよ。

  ちょうど、友達と一緒に行こうって言ってたんだけど、

  やっぱり“先輩”が一人いると心強いし」


 「あやの、“先輩”の言い方が妙に嫌らしいって。

  ……ホントに頼りにしてるのか?」


 「もっちろん! だって、お兄ちゃんってたくさんの部活に顔出してるんでしょ?

  だったら、色んな部活に詳しいよね」


 それは褒めてるのか嫌味なのか……。まあ、半々ってのが妥当か。



 「それじゃあ、今日の放課後に2−A行くからね。

  もちろん友達も一緒だから、そこの所よろしく♪」


 「はいはい、っと。

  じゃあ、僕は精々見学ルートでも検討してるよ」


 それにしても、この間の京香ちゃんといい、今日のあやのといい、

 今年は春先から何やら色々あるなあ。




 ………




 …………………




 あ〜あ、こういう眠い日に限って、1限目から数学なんだもんな。

 こんな関数とか何とかを覚えても、果たして受験以外で使うシチュエーションが訪れるのか?


 その答えは否……のはずだ。

 さらに、僕は文系。こんなにも複雑な数式を扱う仕事に就くとは思えない。


 するかどうかも微妙な受験のために勉強するってのも何だかなあ……。


 こんなことをグルグルグルグル考えてたら、元からほとんど無いやる気が削がれてきた。

 その内、数学担当の水野先生の声が子守唄へと変わってくる。




 ………




 ………………




 「―――らい! 桜井! 起きんか!」


 「はいっ!? えっ、え〜っと……分かりません!」


 条件反射で立って答えたが、教壇に先生の姿は無い。



 少し冷静になって教室を見てみると、茜ちゃんが頭を抱えて、その横で光が肩をすくめている。



 「バカか貴様はっ! 授業など、とうの昔に終わったわ!」


 そして僕の隣では京香ちゃんが憤慨している。

 これってのはつまり。


 「授業、寝過ごした?」


 後頭部を掻きながら言うと、教室にいる知り合いは残らず頷いた。



 「桜井、ちゃんと寝ているのか? 私が分かっている限りで、20分は居眠りしていたぞ。

  水野先生も一度は起こそうとしたが、それでもお前が起きんから、呆れて物も言えん風だった」


 参ったな……電気つけたまま寝たせいで、やっぱり睡眠が足りていないのか?



 「次は気をつけろよ。先生に怒られんとも限らんからな」


 「う、うん。まあ、努力はしてみるよ、努力はね」


 起きていられる自信は無いが。

 変な眠り方をしたことを意識したら、急に眠くなってきた。

 ……果たしてどうなる事やら。


 くそぅ、あやのは絶対こんな事で悩んだりしないだろうな。

 今朝も元気そうだったし。


 こういう時は、元気印って本当にうらやましい。




 ………




 ………………




 ―――ゴンッ!



 「あいたぁ!?」


 頭頂部に走る激痛で、突如として目が覚めた。



 「おはよう、桜井。目覚めはどうだ?」


 「いやまあ……ぼちぼちですね」


 見上げれば世界史担当である福田先生の顔。

 ―――またやってしまったようだ。


 手には教科書。

 ……これで叩かれりゃ、そりゃ痛いわな。



 「しっかりしろ! まだ2限目だぞ!」


 そう言い残して先生は教壇に戻った。

 教室内では笑ってる人も何人か見受けられる。




 さらし者かぁ!? いや……自業自得だけどさ。




 ………




 ………………




 「桜井……お主、体調でも悪いのか? 先程から寝てばかりだぞ」


 授業が終わるなり、京香ちゃんに声をかけられた。

 彼女なりに心配してくれてるみたいだ。



 「まあ、悪くないけど悪いって言うか、何と言うか……」


 山小屋暮らしの京香ちゃんには縁の無い話だろうなあ。

 嫌味とかそういうことじゃなくて、事実として。



 「? よく分からんが、次は体育だぞ。大丈夫なのか?」


 「大丈夫だと思うよ。何とかなるさ」


 「ならいいのだが。もう授業中に寝るなよ」


 さすがに体育は寝ないだろう、いくらなんでも。

 ここだけは妙に自信がある。



 しっかしまあ、1・2限目連続で爆睡とは……“やらかした!”って感じだな。

 京香ちゃんも心配になって当たり前か。


 でも、それだけ寝てる理由は絶対言えない。

 まさか夜中までパソコンいじってて、電気つけたままで寝たから眠いなんてはとてもじゃないけど。


 変な誤解を招かれかねないし。

 ―――あっ、京香ちゃんなら大丈夫かな?


 とにもかくにも、次の体育もとりあえずは出れそうだ。

 それでもし、終わった後であまりにも疲れてたら……その時は崎山先生のお世話になろう。

 いつぞやと同じ、いわゆる有給休暇ってやつだ。決してサボりではない。



 周りを見ると、みんなほとんど着替え終わっていたので、僕も急いで着替えて外に出た。





 ………





 ………………





 ―――キ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜ン



 午前中最後の授業の終わりを告げるチャイムが鳴る。

 朝から何だかんだと色々あったなあ。




 そうそう。3限目の体育に出てその後の話だけど。

 結果から言うと、どうにか崎山先生のお世話にはならずに済んだ。


 体育に出て、逆に目が覚めたとでも言うのか。

 4限目の古典では寝ていない。

 それが普通だという意見は、ここではもちろん却下。


 そして、午前中を過ごしてみて気づいた事がある。

 案外体に疲れが溜まっていない。


 電気をつけて寝ると、睡眠の効果が半分になるっていうのは、やっぱり嘘だったみたいだ。

 ―――3分の2ぐらいにはなってるかもしれないけど。


 病は気からとも言うが、案外、変な眠り方を意識していたのが一番の問題だったのかも知れない。



 さて、一つ学習したところで、お昼だからとりあえず弁当を食べよう。


 と、そう思って弁当箱を鞄から出した矢先、隣の京香ちゃんに声をかけられた。


 「桜井。実は今日、弁当を忘れてしまったのだが……。

  この学校に、何か昼の当てはないか?」


 「えっ、弁当忘れちゃったの?

  当てって言われても……そうだなあ。

  京香ちゃん、お金持ってる?」


 「いや。基本的に、学校へは金を持ってきていない」


 「そっか」


 お金さえあれば購買のパンとか、食堂とか、色々手があるのに。

 半端に時間が経っているので、どちらも不人気商品しかない可能性大だが。


 無いならば仕方ない、まだ手はある。鞄から、今度は財布を取り出した。



 「じゃあ、お金貸すよ。

  えっと……500円でいいかな? もっと食べる?」


 「いっ、いやいい。構うな桜井。

  借金などして、これ以上お前に借りを作るわけにはいかん」


 「そうは言っても、困ってるのに―――」


 口を『見過ごす訳にはいかない』と動かしたが、京香ちゃんの耳には届かなかった。

 なぜなら……



 「京香お姉さまぁぁぁぁぁっ!!」


 突然、1人の女の子が雄叫びのようなものと共に、彼女の胸へと飛び込んできたからだ。


 ざわつく教室。

 そりゃそうだ、いきなり大声張り上げながら女の子が飛び込んでくれば。



 「はっ、離れんか小春! よせって!」


 「はぁ〜ん、こちらに来るって本当だったんですね!

  お姉さまにお会いできて、小春はもう大感激ですよ! 京香お姉さま♪」


 「分かったから離れい!」


 そう言うと、京香ちゃんは小春と呼ばれた女の子を、少々強引に引き剥がす。

 そんなぞんざいな扱いを受けながらも、その女の子の表情はこの上なく幸せそうだ。



 「っと、すまない桜井。取り乱してしまって……」


 「いや、それはいいんだけどさ。

  ……京香ちゃん、こちらの子は、どなた?」


 とりあえず一段落ついたみたいだし、聞かないわけにはいかない。


 それにしても、あんなにも慌てる京香ちゃんは珍しいのではないだろうか?

 付き合いはそんなに長くないが、何となく僕の第六感がそう告げていた。



 「ああ、そうだな。ここにいる間はよく会うだろうし、紹介しておこう。

  私の従妹で、この島の神社で巫女をやっている、岸辺小春きしべ・こはるだ。

  私共々、よろしく頼む」


 「よろしくお願いします、桜井先輩♪ 気軽に、小春って呼びつけてくださいね」


 嬉しそうに言う小春ちゃん。本当に、コロコロとよく笑う娘だ。



 ―――って、それよりも。


 「あれっ……どうして僕の名前を?」


 「はい。先輩の事は、あやのちゃんに、中学の頃からず〜っと聞かされてますよ。

  仲がよろしいんですよね、先輩とあやのちゃんって」


 「まあそこそこは、ね」


 中学の頃から……って事は、あやのとは結構長い付き合いなんだな。

 そんでもって、僕とも中学は同じはずだ。


 そもそも会ったことが無いのか、すれ違っただけで忘れてるのか、どっちかだ。

 顔を見てみると、目はパッチリしてて結構かわいい系だし、1度会ったらそうそう忘れなさそうだけどな。

 背はあやのより少し小さいぐらいで、あいつと並んだら、ちょうどいいコンビに見えるかも。


 それにしても、さっきから話していてどうにも引っかかる事がある。



 「どうかしました先輩? 私の顔に、何かついてますか?」


 「……えっとさ。初対面でいきなりこんなこと聞くのも失礼だとは思うんだけど。

  小春ちゃんってさ、巫女さんの割には、言葉遣いが時代がかって無いよね」


 京香ちゃんとか凄いのに。

 それに小春ちゃんは大和撫子とか、古風な感じというよりは、

 むしろ今時の女子高生風だ。



 「やだなあ先輩、巫女にどういうイメージ持ってるんですか?」


 「どういうイメージって言われても……。やっぱり、古風なイメージかな?」


 「あっ、やっぱりそんな感じですか?

  でも、実際はそうでもないんですよ。

  お正月とか忙しい時期は、ウチの神社でもバイトさん雇ったりしますし」


 「へぇ〜……」


 ちょっとカルチャーショックだ。神社の裏事情なんて全然知らなかったし。



 「まあでも、私の場合はそういうことを差し引いても変わってますけどね。

  ウチの方針らしいんですけど、家の名前とか意識するなって小さい頃から言われてましたから。

  それで、自由奔放に育ってたら、こんな感じになった訳です」


 「こんな感じになった、って……はあ、なるほど」


 家の方針云々出されたら、それはもう頷くしかない。



 「私に言わせれば、お前は岸辺の巫女としての自覚が足りなさすぎだ。

  ……それより、今日は何の用だ?

  まさか、単に飛びつきに来た訳ではあるまい?」


 「えへへ……もし、そうだと言ったら?」


 「力づくでも貴様を教室に連れて行く」


 そう言ってポキ、ポキと指の骨を鳴らす京香ちゃん。

 体の線は細いが、力は間違いなくかなり強そうだ。

 何と言ってもこの島に来た目的も、修行のためだと言うし。



 「あっ、ああ待ってください京香お姉様!

  言います、言いますから!」


 そういうと小春ちゃんは、手に持っていたポーチから、慌てて何やら布袋を取り出した。



 「お弁当です、京香お姉様! ちゃんと食べてるか不安だったので、持ってきちゃいました。

  だってお姉様、また山小屋に住んでるんでしょう?

  そんな所じゃまともに料理なんて出来ませんものね」


 「まあ、それはそうだが……かたじけない」


 「えへへ〜、お姉様に喜んでいただけて、小春は大感激です」


 京香ちゃんが弁当を受け取った瞬間、小春ちゃんの喜びは最高潮に達したようだ。

 よっぽど好きなんだなあ、京香ちゃんのことが。



 「京香お姉様? 岸辺家は、いつでもお姉様を歓迎しますから。

  ちゃんとした物が食べたくなったら、遠慮せずに来てくださいね」


 「岸辺の家には絶対世話にはならん!

  そんな事では、修行にならんだろうが!」


 「え〜、でも。京香お姉様が来ると楽しいですし―――」


 「貴様の都合など知った事か!」


 「そんなぁ〜! 来ましょうよ〜、お泊りしましょうよぉ〜、お姉様ってば〜!」


 「だ〜っ!? だからまとわりつくなと言っておろう!!」


 結局さっきと同じように飛びつく小春ちゃん。

 でも、口ではああ言ってるけど、京香ちゃんもまんざらでは無さそうだ。


 さっきからクラス中の視線が2人に集まってるけど、全然気にしてない。

 確かに2人とも、そういうのはものともしなさそうだ。


 そんな2人を尻目に、既に他人になっていた僕は、

 騒がしい、体全体を使ったやり取りを楽しみながら昼食をいただいた。





 ………





 ………………





 そうこうしている内、6時間の授業も全て終わる。

 何だかんだと朝から色々あったが、今日も無事に乗り切れそうだ。



 ―――っと、まだ一仕事あるんだったな。

 ここまで来たら、後は勢いで最後の頑張りといこう……。


 作者より……

 

 ども〜作者です♪

 いかがでしたでしょうか、Life十六頁?


 久し振りに短めですね、この話は。

 まあ、最近長かったし、いいや(ぇ


 ニューフェイスラストナンバー、岸辺小春ちゃん、いかがでしょうか?

 色んな意味で賛否両論ありそうなキャラですね(^^;


 さて、次回は久し振りの続き物エピソード。

 部活見学に向かった章とあやの、そして彼女の友人の運命やいかに!?

 ……って、そんなに大げさな話じゃないですよ(笑)


 それではまた次回お会いしましょう!

 その時まで……サラバ!(^_-)-☆by.ユウイチ


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