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第十頁「永き戦いの果てに……?」

 ―――また妙な夢を見た。


 この前見たのと、同じような感じの夢。

 同じような……と言うよりは、“同じ夢”と言い切ったほうがいいのかもしれない。


 確かな根拠があるわけじゃなかったけど、なぜか同じ夢のように思えた。

 第六感……とでも言えばいいのだろうか。

 直感的に、同じ夢だと思ったのだ。




 相変わらず、フワフワした、イメージだけで作られているような、そんな捉えどころの無い夢。

 それでも、2回目だからか、この前よりははっきりしたことがある。




 その夢に出ているのは、どうやら僕のようだ。

 そして、何処にいるのかと言えば―――



 不思議な場所だった。

 どこか、森のような所なんだけど、普通の森ではない。



 ……ところが、「じゃあどの辺が普通じゃないのか」と、いざ聞かれても答えられないのだ。

 早い話が、またしてもよく分からなかったということ。



 それに、他の事はもうよく覚えていない。

 ―――否、覚えていないというよりは、よく分からなかった。

 思い出そうとしても、記憶にモヤのようなものがかかってしまうのだ。



 本当に不思議な夢だ。

 何度も見るのだから、きっと何か意味があるに違いない。

 これも直感だけど、そう思えた。



 これからこの夢の中身が分かってくれば、

 いつかは、この夢が何を見せようとしているのか、分かるんだろうか……?











 唐突に目が覚めた。

 寝苦しかったわけでも、悪夢で目覚めたわけでも、ましてやベットから落ちたわけでもない。


 あの夢が終わるのと同時に、すぅっと目が開いたのだ。


 不思議と頭は冴えていて、気分はすがすがしかった。

 例えるなら、気にかかっていた事が解決したかのように。

 ……もっとも、あの夢に関して言えば、気になっていることは山積みだが。




 小気味良い音と共にカーテンを開く。

 少し時間が早すぎるのか、外はまだ明るくなりきっていない。

 まあ、3月の下旬といっても、そうそう日の出は早くないだろう。


 日が出ていないせいか、ちょっと寒いな。

 とっとと着替えよう。

 パジャマでいるよりは、制服の方がいくらか暖かい。




 着替えてもう1回寝てしまうのも、何だかなあって感じだし、

 さっさと1階に下りようか。


 あやのを起こさないように、そっと階段を下りる。

 貴重な睡眠時間を、僕の気まぐれのせいで削ったのでは忍びない。


 こんな時間に起きたことは久しく無かったので分からなかったけど、

 この時期になっても、朝はまだまだ寒いな……


 こんな寒い中、毎朝さっさと起きられるあやのはやっぱりすごいと思う。

 とても僕には真似出来ない。寒い時には布団を被って二度寝だ。


 ……母さんが家を空ける時、家事全般をあやのに任せたのは正解だったと言うか、

 今になって冷静に考えれば、当然なのかも。




 とりあえず、玄関で新聞を取ってから、リビングの電気をつける。

 当然の事ながら誰もいない。

 家にいるときは、たいてい自分の部屋にこもっている僕にとって、リビングに1人っていうのは何気に珍しいかも。

 どうでもいいといえばどうでもいいような話だけど。

 要するに、いつもとは状況が違うってことだ。




 ヤカンでお湯を沸かしながら、ここもさっさとカーテンを開けてしまった。

 まだちょっと暗いけど……まあ、その内明るくなるだろう。


 沸いたお湯でインスタントコーヒーを淹れる。

 いつもあやのがやってくれている行為、たまには自分でしてみるのも悪くないかも知れない。


 ただ、慣れていない分だけどうしても要領が悪い。


 優子ちゃんが淹れた方が、あやのが淹れるより美味いだの何だの日頃言っているが、

 これはそれ以前の問題だ。たまには自分で淹れないと、美味しく淹れる技術も身に付かないだろう。

 ……まあ、何をどうやったらどの程度美味しくなるとか、そういうのは全然分からないけど。




 さすがに朝食を自分で作るまでしようとは思わなかったので、淹れたコーヒーを飲みながらテレビを眺める。

 ―――慣れない事はするものではないのか、コーヒーの味は何となく不味い気がした。






 程なくしてあやのが起床、存分に驚いてから朝食を作ってくれた。

 久しぶりの優雅な朝食を楽しんだ後は、いよいよ学校へ出陣。


 そう、今日に限って気合を入れて早起きしたのにはワケがある。

 例の夢のせいだと言うのもいくらかはあるけど、

 実際の所は、そのせいで興奮していてじっと寝ていられなかったというのがほとんど。


 その理由とは―――






 「おはよう、章。さすがに今日は早いのね」


 「うん、いよいよ今日だと思うと、何だかゆっくりしてられなくってさ」


 玄関でほんの少しだけ待つと、いつもの時間に茜ちゃんが来た。



 「そんなこと言ったって、今日は通常通りに授業した後で立会演説会なのよ?

  そんなにそわそわしてたって始まらないわよ」


 「僕、そんなにそわそわしてるかな?」


 「全身で実にそわそわしている様子を表現……いえ、体現してくれているわ」


 そういう彼女の指先は、僕の足をさしていた。



 「えと……スタートダッシュ、かな?」


 「バカ。玄関先から急いでてどうするのよ」


 精一杯の反撃はその一言で一蹴された。


 が、確かに慌ててもしょうがない。

 ここはひとまず、どっしりと構えていることにしよう。



 僕をこうまで急かし、早起きさせた元凶。

 それは今日の放課後にある、生徒会長立候補者の立会演説会であった。


 今週一週間を振り返ってみると……。

 ―――思えばほとんど毎日これの下準備にかかりきりだったような気がする。


 昨日も、福谷さんと演説の文章を推敲しあって、結局完全下校ギリギリまで残っていたし。



 物凄く長い間、選挙戦をしていたような気がするけど、

 冷静に思い返してみるとたかだか4日か5日程度。

 主観っていう物はつくづく恐ろしいなあと思い知らされる。




 何にせよ、まだ感慨にふけるには早い。

 今は、これから実行する、最後の呼びかけ運動に集中だ。





 ………





 ………………





 「おはようございまーす! 福谷つばさに清き一票をよろしくお願いします!」


 福谷さんの元気な声が朝の生徒玄関に響く。

 最終日と言えど、疲れを見せる様子は微塵も無く、むしろ気合が入っているように聞こえる。


 ―――いや、間違いなく、今日の福谷さんは気合が入っている。

 やはり、この子の選挙に傾ける情熱は並では無い。



 と、そうこうやっていると野球部の朝練を終えた圭輔がやってきた。



 「オ〜ッス! 気合入ってるな、章!

  今日の演説は楽しみにしてっからな。

  野球部の方もバッチリ根回ししておいたし、準備は万全ってやつだな。

  ……だから、お前も足引っ張るんじゃねぇぞ」


 「忠告、それから根回しありがとう、圭輔。

  今日は期待してて良いと思うよ」


 何と言っても昨日あんなに遅くまで頑張ったのだ。

 少なくても、演説の精度に関して言えば負ける気がしない。


 「へ〜……謙遜ばっかのお前がそうまで言うんなら、相当なもんだろうな。

  生徒会の選挙なんて下らねえとか思ってたけど、

  お前達のおかげでかなり面白くなりそうだぜ。


  まあ、何だ……これぐらいしか言えないけどさ、頑張れよな!

  俺はお前達のこと、応援してっからよ!」


 「ありがとう、圭輔」


 短いやり取りの後、圭輔は軽く手を振って行ってしまった。

 話した時間そのものは短かったけど、何と言うか圭輔らしい言葉だったような気がした。


 アイツは裏表がないから、こういう時の励ましにも真実味があって、本当に力が湧いてくる。

 やっぱり友達は持つものだなあって、こういう時には強く実感させられる。


 よし、僕も最後の詰めだ。しっかり頑張ろう―――







 ………







 ………………







 『しっかり頑張ろう』



 ……そう決心したのは7時間前か、はたまたついさっきか。

 僕は今、体育館のステージに設置されたパイプ椅子に座っていた。


 まだ準備段階なので、人はそんなに入ってきていない。

 だが、立会演説会の瞬間は、刻一刻と近づいてきていた。



 福谷さんは今、どちらが先に演説するかを決めるくじ引きを行っている。

 2本の割り箸があって、先に印がついた方を引いた陣営が先に演説をする、というものだ。



 ……どうやら、福谷さんは印がついていない方を引いたみたいだ、

 つまり、僕らの陣営が後に演説をする。



 こういうのは普通、一番最初にやった人の印象を残したまま次の演説を聞くから、

 相手より演説の精度が低ければ、心理的に後は不利な気がする。


 ただ、この度の僕達の演説は相手より精度が高いという絶対の自信があるし、

 後の不利は無い。むしろ、心を落ち着かせる時間がある分、むしろそっちの方が有利だ。


 そう考えると、運すら福谷さんに味方してくれてるみたいな、そんな気がした。

 応援弁者の僕はともかく、福谷さんはさすがに普段の行いがいいだけのことはある。




 ………




 ………………




 いよいよ演説が始まった。まずは吉澤の応援演説者、沖野司の演説だ。




 ―――ヤバイ、かなり緊張してるかも……。

 志木高の全校生徒は600人ぐらいだけど、その全てが今、この体育館に集まっている。


 ちょっとステージの下に目をやれば、1200もの目がこっちを見ている。

 いや、実際は下を向いていたり沖野を見ていたりで、

 全員が僕を見ているはずは無いのだが、極度の緊張で、こっちを見ているような気がしてくる。


 何と言っても僕は人前に立つ事に慣れていない。

 小学・中学とそんな機会は無かったし、高校に入ってからもまた然り。

 ……もしかして初めての体験か?




 ―――ダ、ダメだ……考えれば考えるほど、緊張の深みにはまってく!



 こっ、こういう時はどうするんだっけ……?



 手の平に人という字を書いて飲む?

 ……いや、みんなの前で今さらそんなんできないって!


 観衆をカボチャだと思う?

 ……どう見たって人間の頭だし!






 ―――うわっ、うわわっ!? 本格的に緊張してきた!?!?


 今は沖野の演説だけど、もう終わりそうだし!

 何でもっと引き伸ばしてくれないんだよ!?




 ………




 ………………




 ―――もう前を見ていられない。

 顔を上げてしまうと、みんなからの視線が突き刺さってくるような感じがする。


 情けない話だが、吉澤の演説が始まった辺りから、

 大人に怒られてしゅんとなった子供のように、ずっと下をむいて固まってしまっていた。


 演説が始まってからどのくらい時間が経ったろうか?


 永遠に等しいような時間が経過したような気もする。

 実際には、演説の時間は1人3分までと決められているから、どんなに長くてもそこまでのはずだけど。



 ともかく今は、早く終わって楽になりたいという気持ちと、演説をせずにいたいという微妙な気持ちの間で揺れていた。


 僕の方はそんな微妙さですぐに崩れてしまいそうな状況だったが、

 時計の針は刻一刻と進んでいたらしい。


 吉澤の演説もやがて終わった。

 さっきの沖野の演説もそうだが、何を言っていたのか全然耳に入っていない。

 耳に入っていないというか、そんな余裕は無かった。






 吉澤が終わったということは、次は僕が演台に立たなきゃならない。

 せめて深呼吸ぐらいはしておこうと、肺一杯に新鮮な空気を吸い込むよう努力してみる。


 ……だけど、ぎこちないのが自分でも分かる。緊張なんて全然ほぐれない。

 こんなガチガチの状態じゃ―――




 (桜井くん)


 やぶれかぶれで演台に第一歩を踏み出した時、ささやき声で福谷さんに呼び止められた。



 (手と足が一緒に出てますよ)


 ……末期症状―――終わったな。


 そう思った矢先、さらに福谷さんからの言葉が続く。



 (そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ)


 (え?)


 (あれだけ準備したんです、絶対大丈夫ですよ。

  私は、桜井くんを信じてます。

  ……だから、桜井くんも自分を信じてください)


 (……福谷さん)


 登壇直前。福谷さんからの、どれだけお礼を言っても足りないぐらい、ありがたい言葉。

 感無量って、こういうのを言うんだと思う。

 本当にありがたくて涙が出そうだ。




 行ける。




 福谷さんの言葉を聞いた瞬間、絶対に大丈夫な気がした。

 そして、彼女の言葉にはそう思わせる何かがあったんだ。






 ………






 ………………






 土壇場って、その人の器量とか、そういうのが試されるってよく言われるけど、

 その土壇場で、僕を緊張から解き放ってくれた福谷さんは、物凄く大きな器だと思う。


 少なくとも僕が知っている人物の中で、彼女ほど生徒会長に適任な人物はいない。

 福谷さんなら、最高の生徒会長になってくれると思う。


 だけど、そんな想いとは別に“結果”というものは出てしまうもので。

 かなり残酷な話ではあるけれども。




 すったもんだの挙句、どうにかこうにか終わってくれた立会演説会から、明けて翌日。

 今日は、生徒会長選挙の結果発表だ。


 何となく、後援会メンバーと根回しに参加してくれたメンバーで一緒に聞こうという話になり、

 福谷さん陣営は食堂の一角に集合している。


 泣いても笑っても、結果が出るまでもう後わずか。

 一同は固唾をのんで運命の一瞬を待っている。




 ――そうそう、昨日の演説は結局どうなったのかと言うと……。



 僕もあれからどうにか落ち着きを取り戻し、

 何とか原稿どおりに応援演説をすることが出来た。

 福谷さんも、華先生曰く“史上稀に見る名演説”をしてくれた事だし、演説会は成功に終わったと言える。






 「いよいよですね、桜井くん」


 不意に、福谷さんに話しかけられた。

 その声は、期待と不安が半々といった所だ。



 「そうだね。僕たちがここまでやってきた成果が、ここで出るんだね」


 「はい。

  会長、なれればいいんですけど……」


 「なれるよ、福谷さんなら絶対。

  だってさ、僕たちはこんなにも多くのみんなに力を貸してもらったんだよ?」


 そう言ってみんなを見渡す。

 

 茜ちゃんと光はもちろんのこと、翔子ちゃんに、優子ちゃん・未穂ちゃん・怜奈ちゃんの文化部3人娘。

 それから飛び入りで来てくれた圭輔。もちろん、福谷さんの友達だって何人か来ている。


 それに、ここには来ていないけど、それぞれの部活の部員だって票を入れる、という形で強力してくれている。



 「これだけ多くの人が福谷さんの力になってくれたんだ。

  会長になれないはずがないよ」


 いつも一生懸命で、頑張っている福谷さんが―――


 今まで、生徒会長になることに、並々ならぬ情熱を傾けてきた福谷さんが―――


 あの時……応援演説の直前に、追い込まれた僕を一言で救ってくれた福谷さんが―――




 そして何よりも。




 こんなにもみんなに愛されている福谷さんが、会長になれないはずはない。


 少なくとも、僕はそう思う。

 この一週間、彼女にかなり深いレベルで触れてきた、僕は。



 「そう……ですよね。

 桜井くんがそう言ってくれたから、きっと大丈夫です」


 何故か嬉しそうに福谷さんはそう言うと、再び沈黙に戻る。

 もう発表まで、そうそう間は無い。






 ―――ピンポンパンポ〜ン♪


 唐突にチャイムが鳴った。

 校内放送が始まる合図だ。




 『全校生徒のみなさんにお知らせします』


 お決まりの文句を、生徒会役員らしき人物が読み上げる。

 抑揚が全くない……どうせ原稿か何かを読んでいるんだろう。



 『きのう行われました、次年度前期生徒会長選挙の結果を発表します』


 ……来た。

 食堂に訪れる完全な沈黙。

 僕たちの様子に圧倒されてか、一般の利用者まで黙っている。




 永い一瞬を、みんなが待っていた。




 『投票の結果、次期生徒会長は』




 次の瞬間、読み上げられた名は―――
















 『1−Aの、福谷つばささんに―――』


 「……っしゃあ!!」


 途中まで聞いた時点で、誰かが叫ぶ。

 声の質と言ってる内容からいって、多分圭輔だろう。

 もう役員の放送は聞こえない。

 

 誰かが声をあげた時点で、沈黙は食堂全体を包む大歓声へと変わっていた。

 食堂を利用している一般の生徒達にも拍手を送られる。




 「やった……やりましたよ! 桜井くん!!」


 大歓喜の福谷さんが抱きついてきた。

 その表情には、嬉し涙が浮かんでいる。


 ……半分ドサクサにまぎれてという気もしなくは無いが、この際もうどうでもいいや。

 多分、あっちも自分が何をしてるかよく分かってないだろうし。



 「ありが……とう。

  ありがとう……ございます、桜井くん、みなさん」


 泣きながらみんなにお礼を言う福谷さん。

 拍手はまだ鳴り止む気配は無い。


 思えば、初めて見る福谷さんの涙だ。

 それはまた、僕が見てきた色んな涙の中で、一番綺麗な涙でもあった。






 『人と人との結びつき』


 それは、単体では小さくて、取るに足らないものなのかも知れない。


 でも、それが集まれば、とても大きな力になって、

 1人では絶対出来ないようなことさえも、成し遂げられるようになるんじゃないだろうか。


 少なくとも、僕はこの選挙で、人の絆が生み出した奇跡を目の当たりにした。


 絶対吉澤有利と言われていた今回の選挙。

 だけど福谷さんは、人の絆の力で、下馬評を見事に覆してみせた。


 いい物を見せてもらったと、むしろ僕が福谷さんにお礼を言いたい。






 体にかかっていた重みが無くなる。福谷さんが離れたんだ。



 「みなさん、今まで本当にありがとうございました。

  この度の当選は一重に、みなさんのお力添えのおかげです。

  本当にありがとうございました」


 そう言って福谷さんは深々と頭を下げる。

 これじゃあむしろこっちが恐縮してしまう。



 「それではここで、副会長の指名を行いたいと思います」


 ん? 気のせいだとは思うけど、僕に視線が集まっているような?

 誰がなるんだろう、ここまで関わったからかなり興味がある。



 「まず1人目は……陽ノ井茜さん。お願いできますか?」


 「福谷さんの頼みとあっちゃ、しょうがないわよね。

  それに、これから11月まで、あのバカのフォローもしなきゃダメみたいだし」


 あのバカって誰だよ、あのバカって。

 何も公の場でそんなこと言わなくてもいいのに。

 って言うか、フォローって何さ?



 ……何にせよ茜ちゃんなら副会長に適任だ。

 人望は厚いし、行動力もあるし。



 「そしてもう1人の副会長は」


 いよいよだ。もう1人は誰なんだ?




 「桜井章くん、お願いできますか?」


 「は?」


 指名された瞬間、自分の表情が変わったのが分かった。

 それも……自分でも分かるぐらい間抜けな、呆け顔に、だ。



 「ちょ、ちょっと待ってよ!? 

  どうして僕なの福谷さん!?」


 「桜井くんなら適任だと思うからですよ。

  それに、後援会長を引き受けてくれたってことは、副会長もOKってことですよね?」


 「……へ?」


 「あのね、桜井くん」


 まだ呆けている僕に説明を入れるかのように、怜奈ちゃんが口を開いた。



 「この間、演劇部に来てくれた時に言おうと思って、結局言いそびれちゃったんだけど……。

  志木高の生徒会ってね、結構変わってるのよ。

  前期から2年生に任されてたりとかね」


 それは知っている。確か、3年を受験や部活に集中させたり、2年が早くから色々と経験を積めるようにするためだったと思う。

 後援会長になる手続きやらなんやらをやっている時に、華先生から聞いた。



 「それでね、それ以外にも風習があるんだけど……。

  副会長って、2人いるじゃない? それで、2人とも会長が指名することになってるの。

 

 特に、その中の1人は後援会長が指名されるのが習わしになってて、

  普通は副会長になって欲しい人に後援会長を依頼するの―――って聞いてる、桜井くん?」


 ええ、聞こえてますともそれはもう。

 まさかこんなカラクリが用意されていようとは……。






 ―――けどまあ、ここまで来たら、もう何でもいいかな?

 それに、こうやって福谷さん達と生徒会に燃えるのも、これはこれでかなり楽しいし。

 うん……名誉なことなんだし、胸を張っていこう。



 「これからよろしくね、桜井副会ちょさん♪」


 「こちらこそよろしく、茜ちゃん」


 割と動揺もなく、いつも通りに返したのがそんなに不思議だったのか。

 茜ちゃんは意外そうな顔をしている。



 「……結構元気ね? もっと嫌がってるかと思ってたのに。

  どうせアンタの事だから、後援会長が副会長になるなんて、知らなかっただろうし」


 「その話は、確かにさっき初めて知ったけど、別に何とも思ってないよ。

  それに、まあ……生徒会で青春ってのも、悪くはないかなって思って」


 「ふ〜ん、アンタにしては珍しいじゃない。いい兆候ではあるけどね」


 嬉しそうに、笑顔でそう言う茜ちゃん。何の事を言っているのかさっぱりだけど。






 ―――何はともあれ、生徒会長当選おめでとう、福谷さん!



 そして、ちょっと恥ずかしいけど、このセリフを送ります。




 『これからもよろしく―――』


 作者より……

 

 ども〜作者です♪

 Life十頁……そして生徒会選挙ラストワン、いかがでしたでしょうか?


 そしていよいよ、頁数二桁突入ですね。これからもよろしくお願いします_(._.)_


 個人的な感想を言わせてもらうと、思ったよりスッキリ終わってくれましたね、生徒会編。

 何だか途中で最終回書いてるような感覚に襲われましたが(笑)


 実際の所は、物語はまだまだスタートしたばかり。

 作者のカメ速更新につきあいながら、長〜くお楽しみください(^^ゞ


 さてさて次回からは春休み突入です。

 ここしばらく続き物のエピソードでしたが、次回からは当分の間、一頁完結になりますので、よろしくお願いします。


 そんなこんなで、今回はここまで。また次回お会いしましょう!

 サラバ!(^_-)-☆by.ユウイチ


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