出陣
物々しい、物々しい雰囲気であった。
馬に乗った軍服姿の兵士たちが並び、これからをじっと待つ。その先頭に立つのは父上を初めとするウィルアード侯爵家の面々だった。
ウィルアード侯爵家現当主、レイフォード・ウィルアード。
侯爵家長男、アイゼン・ウィルアード。
侯爵家次男、リューク・ウィルアード。
侯爵家長女、シーア・ウィルアード。
以上4名、これから起こる戦争に参加するウィルアード侯爵家の面々だった。
「「「「……」」」」
これから戦場に向かう者たちを見送るのは、僕の母を含む父上の正妻他三名の妻たち───その端に僕も加わっていた。
兄弟の中で唯一、僕だけが今回の戦争には参加しない予定だった。土属性なのは僕だけだからね。
「ノア~」
出陣前の写真撮影。
それを終えた後、シーアお姉さまが馬車から降りて僕の方へと近づいてくる。
「私はどうだった?ちゃんと可愛く写真に残せていたか?」
「はい。シーアお姉さまはいつも可愛らしくありますから」
「ふふんっ」
僕の褒め言葉に対し、シーアお姉さまは誇らしげに胸を張る。
「それじゃあ、私は行ってくるわ」
「本当に、お気をつけて。お体は大事に」
「えぇ、絶対に帰ってくるから安心して」
「……ノア」
いつものように僕とシーアお姉さまが言葉を交わしあっていると、珍しいことにアイゼンお兄様が僕へと声をかけてくる。
「父上は戦場に赴き、最低限のことを為した後、直ぐにお戻りになられる予定だ」
「はい。そうお聞きしています」
戦場で当主が亡くなり、そのままその後継であるアイゼンお兄様まで亡くなってしまえばもうウィルアード侯爵家は終わりだ。
本当であればアイゼンお兄様も残るべきなんだろうが、戦いこそが貴族の誉であり、存在理由とされている以上、当主並びに次期当主が揃って不参加は貴族社会で認められない。
父上は貴族の中でかなり遅くに結婚されている方だったこともあって既に高齢。戦場で活躍するのが難しい年齢である為、アイゼンお兄様が戦争に本格的な参加することになったのだ。
「父上は高齢。私とリュークの身に万一のことがあれば、次期当主として、お前にもお鉢が回ってくることがあるだろう……土塊に、任せるなど想像もしたくないが」
「はい」
息子……まぁ、親戚等がいるのですんなりそうなるかは怪しいが。
なったとしても、その後のことが大変なことは楽に想像がつく。まず持って父上が味方してくれるのかどうかさえ怪しいし。
「……だが」
だが。その一言を漏らした後、アイゼンお兄様は次の言葉までしばし時間を置く。
「……だが、だ。お前にお鉢が回っていた時、土塊、などと言う言葉が過去のものとなっている未来も想像できる。魔法以外の能力が昔から高いことは私も認めている」
「……アイゼンお兄様?」
僕のことを土塊と見下し、リュークお兄様と違って近づくことさえしないアイゼンお兄様の言葉から感じ取ったものに僕は少し、眉をひそめる。
「そのままでいろ。ウィルアード侯爵家を守る。それは、この貴族家に生まれた者の責務だ」
「もちろんです」
「……ふっ、あぁ、そうだ。お前はそういう男だ。そのもちろんという言葉に嘘はまるでない」
「……はい?」
今の文脈に嘘が挟まるところなんてあっただろうか?
「良い……任された時は努力せよ。シーア。早く戻ってこい。さっさと出発する」
「えー、話に割り込まれたせいで全然楽しめてないんだけど!」
「いいから、……行くぞ」
不満そうなシーアを連れ、アイゼンお兄様は隊列の方へと戻っていく……これから戦地へと向かう、その隊列へと。
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