新聞
軍靴の音が聞こえてくる。
そう、シーアお姉さまが言ってから早いことでもう三年が経った。
「……あー、ひっでぇニュース」
十五歳となった僕は相も変わらず自室で紅茶を啜る。
そんな僕の手には一枚の新聞紙が握られていた。
「暗殺事件ねぇ」
新聞の見出しに載っているのはルノア王国の同盟国であるオースティン帝国の皇太子が暗殺されたという大事件だった。
「……暗殺事件?」
この世界の文明レベルは近世くらい。
より、具体的に言うとそのレベルはちょうど第一次世界大戦ぐらいだ。
そして、今の世界情勢と言えば大陸の中心にどんと位置するルノア王国に対し、その両隣に位置するフリース王国とローシャ帝国が同盟を組んで相対するという構図。
僕らの母国であるルノア王国は元々諸貴族が乱立し、1つの強大な国家の新興国家で……うん。これ、まんまドイツ帝国だよね。フリース王国はフランスだし、ローシャ帝国はロシアだ。
この世界の構図は地球の第一次世界大戦の時とそう大きく変わらない。
「あれ、ちょっと待って……これ」
僕だって馬鹿じゃない。そんな構図であることは当然前から把握していた。
地図を見れば一発でわかる。
イギリスに相当する島国がなかったり、ヘタリアとは結び付かない世界宗教の祖にしてかつての超大国の後継国家が未だにゲームマスター面して中立を気取っていたり。
この世界ならではの点も多い。
だけど、重要なのはルノア王国と、二か国の同盟という対立軸があり、その二陣営の代理戦争の場となっていた場所があること。
その場こそが幾つもの国を内包する帝国たるオースティン帝国。その内部の幾つかの国が独立の動きを見せ始めたのはもう十年以上前。独立勢力を支援する二か国の同盟と、オースティン帝国を支援するルノア王国という図があった。
そんなオースティン帝国の皇太子が暗殺された───この、ニュースはサラエボ事件になるのではないか。
「……」
新聞紙を手にする僕は表情を曇らせる。
これから起こる戦争が何処まで大きくなるか。魔法があるこの世界で前世と同じような戦争模様になるとは思えないけど……大国同士の戦争が起こるとするなら百年ぶりという信じられないような表面上の平和が崩れ去ることになる。
「……嫌だね」
武器は貯蔵され、抑止力となってこそ。
動き出すのはやめて欲しいものだ……そんなことを思いながら、僕は新聞を読み進める。
「ノア!元気にしていたかしら!お姉ちゃんが会いに来たわよ!」
その最中、勢いよく僕の部屋の扉が開かれ、シーアお姉さまの声が響いてくる。
「シーアお姉さま!?何故ここに!?」
「何よ。貴方は聞いていないの?戦争よ、戦争……戦争が、始まるのよ。それで帰ってきたってわけ」
「……はっ!?」
王都にいるはずのシーアお姉さまが今、ここにいる。
それだけで驚きだというのに、続くシーアお姉さまの戦争宣言に僕は更に驚愕するのだった。
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