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不遇の落ちこぼれ扱いされる土魔法使いに転生した僕、異世界における第一次世界大戦の到来によって不本意な成り上がりをしてしまった件  作者: リヒト


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過保護

「僕に構ってばかりで大丈夫なの?ちゃんとお仕事している?」


「問題ないわ。つつがなく進めているもの。一日、仕事から離れることくらい訳ないわ」


「そう?」


 貴族の業務量は中々多いはずだけど。

 なんて言ったってこの世界では民主主義が遠い向こう側。昔からのやり方で、産業革命を得て急速に変わって行く世界を回しているんだから。

 

「まぁ、だとしてもこの現状はどうにかならない?」


 屋敷のある小さな一室。

 そこに置かれた一つの椅子へと腰かける僕の後ろにはシーアお姉さまの姿があった。一つの椅子にシーアお姉さまが僕のことを抱き抱えるような形で二人、座っているのだ。

 十五と十二の姉弟が行うような行為では絶対になかった。


「何が駄目なの?」


「前から思っていたけど、シーアお姉さまはちょっと過保護が過ぎるよ?」


「むっ。私はお姉ちゃんなんだよ?これくらい当然よ!」


「世のお姉ちゃんはこんなにも過保護じゃないよ。シーアお姉さまだけ。シーアお姉さまがおかしい」


「何てことを言うのかしら!」


「何でこんなにも過保護なのかしら?そんなんで結婚できるの?ずっと一緒!って訳ないんだから、さっさと弟離れしなよ」


「私はしないよ?」


「えっ?僕はするつもりだけど?」


「はっ?」


 僕の言葉に対し、絶対零度の声を漏らしたシーアお姉さまはそのまま万力のように僕の体を締め上げ始める。


「いたたた!?」


「土属性を持って生まれた貴方と結婚してくれる人なんかいるわけないじゃない」


「そ、そそそんなこともな……って、痛いよッ!?」


 反論とかの前に締め上げられるのが痛すぎる僕は大慌てで魔法を発動し、自分が触れている椅子を変形させる。

 薄く伸ばした椅子を僕とシーアお姉さまの間に挟み、壁のようにする。


「甘いわよ?」


「んげぇっ」


 だが、そんな僕の魔法が途中で消される。


「って、あれ?」


「土属性の魔法は基本的に永続だからねっ!」


 でも、途中までは機能した。

 進捗五割の壁を活かし、僕はシーアお姉さまの元から逃げていく。


「ふぅー、対魔法結界か」


 距離を取った僕は改めて、自分の魔法を途中で消してきた魔法について触れる。


「えぇ、そうよ。便利ね?これ」


「無属性魔法の発展は目覚ましいね」


 僕は適当な部屋にある棚へと触れ、それを椅子へと変えた上で僕は元あった席の前にそれをおいて改めて一人で座り直す。


「こうしてみると、土属性の魔法も便利ね?」


「そうでしょ?対魔法結界にも強いのが自慢だよ」


「それはそれとして、一人で優雅に座っていないで私の方の椅子も治しなさい」


「あっ、ごめん」


 僕は再び立ち上がり、変形させた椅子に再び触って元の形に戻す。


「触らなきゃ発動しないのが難点だけどね」


「それが土魔法というのもよ」


「いつかはそれを何とかしたいと思っている僕だよ」


「頑張りなさい?手伝って欲しいことがあれば、お姉ちゃんに頼るのよ?」


「別にそんな急ぎじゃないし、ゆっくりやっていくさ。所詮は土魔法だし」


 土魔法で新しい革新的な技術を見つけたとしても、世界に与える影響というのは少ない。

 土魔法を使う人間が少ないからね。


「えぇ、所詮は土魔法よ。だから、結婚も無理ね」


「また戻る?確かに貴族として見ると価値はないけどね」


 三男の土魔法使い。

 貴族社会での需要は侯爵家生まれということを加味してもかなり低い。


「でも、別に平民の子でも抵抗はないしさ。いい人を見つけるよ。お姉ちゃんも早く見つけな?そもそもとして、何でそんなにも僕に構うのさ。一家の落ちこぼれだよ?」


「落ちこぼれだけど、世界一可愛い弟よ?嫌いなわけないじゃない。ちゃんと死ぬまで守ってあげるから」


「……重い。姉ということを忘れないでよ」


「むぅ……まぁ、わかっているわよ?お姉ちゃんが貴方を任せられると思った人になら、任せて上げなくないわ。いい人を見つけなさい。それまではお姉ちゃんの庇護下よ」


「うわぁ……」


 絶対に認めてくれないやつじゃん。僕は知っているよ。


「……特に、これからは」


「ん?何かあるの?」


「軍靴の音が聞こえてきているわ」


「……ッ」

 

 お姉ちゃんの口から出てきた言葉に僕は息を飲む。

 思い返すは、これから僕が会おうとしている人だ。


「これまで、……ここ百年近く。小国同士の散発的な衝突しかなかったわ。だけど、大国同士の衝突はもう避けられない位置まで近づいてきていると感じるわ。本格的な、衝突も近いわよ」


「……それが我が国にあるのだから、嫌だね」


「それは言わないお約束よ」


 フランス革命はなく、ナポレオンもいない。

 だけど、この世界にも産業革命はあり、大航海時代はあった。当然、植民地化も行われ、それに成功した国と出遅れた国がある。

 僕たちの生まれた国であるルノア王国は出遅れた国であり、今から植民地を増やそうと成功した国へと挑戦する姿勢を崩してはいない。

 大きな戦争のなかった百年の中でも、色々な遺恨は渦巻いている。

 

「……嫌だねぇ」


 死の商人へと近づこうとしている僕が何を言うのか。

 そう、勝手に自嘲しながらも近づきつつある戦争を嫌うのだった。

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