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終わり

1話ちょっと長めです。

不定期更新でのんびり行きます。

私、栗餅美羽はすごくモテる。どのくらいモテるかって?

入学式から告白されない日はない。といえば分かって貰えるだろうか。

そんな私だが私は生まれてこの方、付き合った事がない。告白は数え切れないほどされてきた。でも全部ふっている。それには理由がある。私は幼馴染の結城 昌のことが好きだからである。昌は私にゾッコンだ。これは間違いない。じゃあなぜ付き合わないかって?


だってもったいないじゃない…昌がめっちゃアピってくれるのに付き合っちゃうとそれがなくなっちゃう。

だから私、栗餅美羽は幼馴染の結城 昌と付き合っていないのだ。いつでも付き合える。その安心感が私を李徴と化したのだ。

私は知らない。もう手遅れになる事を。

その日常はもう戻って来ない事を。


この日私は2度絶望することになる。





「栗餅さん!俺、去年の文化祭から栗餅さんのこと、良いなって思ってて、絶対後悔させないから俺と付き合ってくれ!」


またか。

私はもううんざりだった。薄っぺらい告白。

この人たちは一体私の何を知っているんだろうか。


「ありがとう。とっても嬉しい。でもごめんなさい。私、好きな人がいるの。」

これは嘘じゃない。

私は真正面から気持ちを伝える。


「なんでだよ…みんな俺と付き合い違ってるんだぜ?なぁ?教えてくれよ?俺はその男より劣ってんのかよ?付き合おうぜぇ?」


何を勘違いしてるんだか。

たしかに西條くんはモテる。芸能事務所からスカウトが来てるとか。

だからと言って私が好きだとは限らない。


そんな事を思っていると西條くんは急に私の身体を掴んできた。


やだ…こっちに来ないで…腕を掴まないで…

今回はちょっとやばいかもしれない。

だれか…助けて…!



「やめろよ…嫌がってるだろ?」


目の前には昌が立っていた。昌はその男に睨みを聞かせ、腕を握る。昌はバスケ部で握力はゴリラだ。男は恐れをなしたのか逃げて行った。


「大丈夫?」



「あ、ありがとう。怖かったよ…」


私は昌に抱きつく。

昌は私をしっかり受け止める。その体はすごくゴツゴツしていて、男の子なんだな〜と思い知らされる。

昔は私の方が大きかったのにな



「気をつけるんだぞ?」


こうやっていつも心配してくれる。お互いの家で遊び、たわいもない話を楽しみ、まるで兄弟みたいに。この関係が私は大好きだ。



「ありがとう。迷惑かけてごめんね?」


「あぁまったくだ。以後気をつけるように。」


そう言っている昌の耳が赤かったのは私だけの秘密だ。


「帰るぞっ」


「うん!」


私は駆け足で昌に追いつき隣を歩く。

このポジションは誰にも取られたくないんだ。



私たちはゲーセンに来ていた。

今は二人で太鼓の達人をしている。私たちは俗に言うガチ勢だ。マイバチを持っている。

今は二人でスコアを勝負中だ。


「あぁぁ〜負けた〜」


「しゃぁ!勝ったぜー!!これで365勝364敗!俺が勝ってるぜ」


「ふんっ すぐ抜かすんだから」


「やってみろよ笑」


この煽り方小学生かって思う。ほんと可愛いな〜


「ってかアイス奢りな〜」


「えー今金欠だよ〜今回は勘弁してよ!」


「嫌、だめだ。」


「しょーがないなー。特別だよ?」


「よっしゃ!」


昌は満面の笑みで微笑む。


はぁ〜昌…どんだけアイス食べたいのよ。笑笑

まぁ〜いっか。この笑顔で喜ばれちゃー仕方ないよ。



私達はゲーセンをでてもう薄暗くなった通学路を歩く。


「楽しかったね!昌が撮ってくれたこの猫のぬいぐるみ大切にするね。」


「そんなんで良かったのかよ?」


「これが良いの。なんかこの猫、昌に似てるし、」


「そうか?ま、喜んでくれたんなら良かったよ」


そんなたわいもない会話をしていた時である。男の子がボールを追いかけて道路に飛び出して行ったのだ。車からは死角になって見えていない。


「危ない!!」


その瞬間昌も飛び出す。昌は少年を抱えうずくまる。


プーーーーーーーーーーーーーーーーー


「イヤーーーーーーー!!!」



ドンッt!!


昌、昌、!

呼んでも返事がない。


急いで降りてきた運転手さんに救急車をたのむ。


早く、早く、


昌が死んじゃう…


私は昌の手を握り救急車を待つことしかできなかった。






今、私は帝都病院の待合室にいた。

昌が小学生を助け、交通事故に遭ったのだ。大怪我で命に関わるかもしれないらしい。

私の他に昌のお母さん、お父さん、妹の芽衣ちゃん、そして私のママ、弟の颯がいた。不安で胸が締め付けられ、泣きそうになる。昌のお母さんとママが手を握ってくれているが不安は和らがない…。

もう会えないかもしれない。大好きな昌と話せないかもしれない。こわいこわい…こわい。

1番怖いのは私じゃない。昌の家族だ…。

私は励ますべきなんだ。でも…無理だ。やっぱ怖い。

「お願い、昌、戻って来て…」

私は精一杯神様に頼んだ。




その時、手術室から先生が出てくる。


「手術は成功しました。命に別状はありません」


私は足元から崩れ落ちる。


「良かった…」


先までのしかかっていた緊張が急になくなり私の目には自然と涙が流れていた。

本当に良かった。私は昌の家族やママと抱き合って喜んだ。



数時間後、昌の意識が戻りみんなで病室に向かっていた。

やっと昌と話せる。私は胸を躍らせる。


「ねーちゃん、良かったな。昌兄、生きてて。俺も大好きだからさ。まじ不安で。ほんとに良かった。」


「颯…」


颯は昌のことが大好きだ。本物の兄弟みたいでちょっと羨ましい。時々昌の前で私の気持ちをバラそうとしてくるのは厄介だが、颯にとっても昌は大好きなお兄ちゃんなんだ。そりゃ不安にもなる。

私は颯の頭をそっと撫でながら言った。


「うん。ほんとに良かった。」


この時の私は知らなかった。

これから起こるもっと最悪な悪夢を…




昌の部屋、105号室に着き全員で病室に入る。個室なのでとても大きい。

部屋に入るとそこには昌がいた。当たり前なのに全然当たり前じゃない。当たり前に幼馴染がいる日常。それはとってもありがたいことなんだ。


昌は私達を見て笑顔になる。


「心配かけてごめん…。もう大丈夫だよ。母さん、父さん、芽衣。それにおばさんや颯まで…本当に心配かけてごめんなさい。僕のために遠くまで来てくれてありがとう」


昌と目が合う。すると昌が会釈をしてくる。まるで知らない人に挨拶するような…私は嫌な予感がした。

そんな事ない。そんな心配を振り払うため私は昌に話しかける。


「昌!ほんとに、心配したんだから!ほんとに良かった。昌私ね、昌に話したいことがたくさんあるの。」

昌はキョトンとしている。


昌は私の話をよそにママに聞いた。


「この方はおばさんの知り合いですか?」


今この瞬間、私達の幼馴染という関係は無くなった。.....



ママも颯もおじさんもおばさんも芽衣ちゃんも全員が青ざめる。私はもう何も考えれなかった。

しばらく沈黙が続き、その沈黙を颯が破った。


「何言ってんだよ?昌兄…?姉ちゃんだよ。美羽!忘れたのか?

大好きだったじゃん、姉ちゃんだって…、本当に忘れちまったのかよ…昌兄!」


「そうだよ、にいに、美羽ちゃんだよ!にいにいつも話してたじゃん…美羽がな、美羽がなってもう嫌になるくらい…」

芽衣ちゃんも必死になって昌に問いかける。


ママ達は押し黙っている。何か隠している感満載だ。

「ママ、何か隠してるでしょ?」

「それは…「言って!」


「……昌くん、意識は戻ったけど美羽との記憶だけすっぽり抜けてるんみたいなの…」


「え……、?」



嫌だ嫌だ。どうして私だけ?どうして?なんでなの‼︎


私は再び地面に崩れ落ちる。私は涙が枯れるまで泣き叫んだ。




数日後昌は精密検査を受け、特に異常は無かったため退院することになった。

私はここ数日学校を休んでいる。

昌は学校にもすぐに復帰するらしい。

私以外のことは全て覚えており、この17年の私との記憶だけがなくなっているだけだ。

日常生活に支障は無いし、学校の友達のことだって忘れてない。

なんで私だけなんだろう。

昌にとって私ってどうでも良い存在だったのかな。

幼馴染なんだけどな。

告白してたら何か違ったのかな。

もう私のことを大切に思っている昌はもうどこにもいない。 

今私はクラスメイト以下だ。

辛い。

今私の世界は白黒だ。

わたしは通知の大量に来たスマホを見る。

皆心配のLINEだ。


でも今一番話したい人からは何も来ていない。

たった1人だけピン留めしてる男の子。

でもその男の子は私のことを知らなくて…


昌のお母さんや芽衣ちゃんも必死になって私のことを思い出すよう頑張ってくれているらしいが、やはり思い出さないらしい。


でも…。

私諦めないよ。幼馴染という関係はなくなった。でも別に嫌われているわけじゃない。やり直すことはできるんだ。

これは昌が私を好きなことを知っていて、恥ずかしがり屋な昌の性格を知っていて告白せず楽しんでいた私の罰。


私はもう幼馴染にはなれないかもしれない。

でも、クラスの気になる女の子になることは出来る。

私は覚悟を決めた。

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