天の裁き
「あっ、ああああああっ‼」
私の隣で毅然と立っていたゴードンは、床にうずくまって痛ましい呻き声を上げていた。
「ゴードンっ!? ねえ、ゴードンどうしたのっ!?」
私はすかさずゴードンに駆け寄って体に触れた。
熱い、震えている。
私は恐ろしい胸騒ぎを覚えた。
嘘、どうして。
スキンクリームは、確かに塗ったはずなのに……。
「カ、カオリっ……」
ゴードンは青ざめた顔で私の肩を掴む。
「ゴードンどうしたのっ!? クリームはちゃんと塗ったはずよね!? そんな事、絶対、あり得ないよねっ!?」
「カオリ……、すまない」
精気の無い声。
どうして、どうして謝るの?
意味が分からない。
私は激しく狼狽したが、その真相はすぐ明らかとなった。
うずくまっていたゴードンが、ゆっくり身を起こした。
露わになった彼の全身。
相変わらずのたくましい肉体の中、私を引き付けて止まなかった彼の巨根が、石色となって壊死していた。
「そ、そんな……、どう、して……」
ショックのあまり、私はその場に崩れ落ちた。
何も頭が回らなかった。
考えられなかった。
渦巻くような眩暈に襲われて、私は倒れた。
「カオリっ、カオリっ!」
すぐにゴードンが駆け寄って、倒れた私の体を何度も揺さぶる。
回転し、揺れ動く視界。
その混乱の中でも確かに目視していたのは、変色したゴードンの巨根であった。
彼の巨根を見つめるうちに、私は次第に冷静さを取り戻していった。
そして、なぜ彼の巨根だけ日光と餌食となったのか、明白な理屈を不意に悟った。
それは至極単純な事。
使いすぎたのだ。
愛の奴隷となっていた私たちは、浸透したクリームを引きはがすほど、彼の巨根を酷使してしまったのだ。
俄然、私は悲しみに包まれた。
どうしてこんな、痛烈な仕打ちを受けなければならないのだろうか。
やはり、天罰なのだろうか。
異種族と交わった天罰。
失楽園の私たちは、天の監獄から逃れることはできなかった。
超えられなかったのだ、真実の愛は、絶壁の如く立ちはだかる種族の壁を。
だがもうここまで来た以上、後に引き返すことはできない。
私ができる、最後のプレイ。
潰されつつある私の希望に、一縷の光が宿る。
度し難い天の裁きに、楽園を追放された私は最後の抗いに出る。
「ねえ、ゴードン。あなたの『ゴーチン』、舐めたい」