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1-4-10

翌日、朝食を食べ終わった僕はヒーレニカさんのところに行こうとて、ギルドからの仲介書をもらうのを忘れていたことを思い出し、ギルドに頼みに行く。

その際また相談事かと心配され少し大事になりかけたが、今回は仲介書の作成依頼だけであることを伝えるとホッとする反応があった。

いつもいつもすみません・・・


ギルドから仲介書をもらい

ヒーレニカさんのもとへ向かう。

いつも通り店舗に入りオトギリソウ60株と、ユーカリ5株、そして手間賃として銀貨60枚を支払った。

あまりの量に、昨日聞かされていたとはいえやはり驚いている様子だ。


それからは仲介書を完成させ二人で齟齬が無いかを確認し僕が仲介書を預かる。

あとはギルドに一度預けに行けばいい。


ギルドに到着し証書を預けて戻ろうとしたところを担当職員さんに呼び止められる。

どうやらデニスさんが来ており本格的に出汁汁を提供し始めたところ大ヒットしたらしい。

定食に大銅貨1枚でグレードアップオプションのような形でつけることができるようにしたら売れ行きが良くなったらしい。

まただし汁も単品で出してみてこちらも好評であったようだ。

すぐに追加の昆布が欲しいらしくギルドに急ぎの仲介を求めたようだ。


そのまま個室に案内されたのでそのまま商談に入る。

しかしここで僕はミスをしてしまった。

乾燥昆布は出始めてからまだ間もないということもあり利益率がとても低い商品だ。

ヒットし値上げも始めたのならばその分の利益は僕にも受け取る権利があるはずだ、などと勝手に思ってしまった僕は、昆布の金額を倍に吊り上げよとした。

1杯5円の経費で100円の値段を上げたのであれば95円の利益が上がることになる。

ならば1杯10円くらいなら、経費を考えてみても十分にデニスさんに利があると思ってしまったのだ。


しかし当然そんな話は聞いていないと怒ることになった。

確かに海から輸送しているという《《体》》になっており、リスクもあるためという言い訳はできたであろう。

しかし僕の中にあったのは《《利益率が低い商品の利益を上げようという魂胆》》だ。

これではあくどい商法をしている商人と何も変わらない。

相手の足元を見たやり方だ。


またデニスさん側から見ても今回の件は偶々ヒットしたから良いものの下手をすれば失敗するリスクはあったのだ。

なにせこの世界ではまだ知られていなかったであろう食材だ。

そんなリスクを背負ってまでデニスさんは答えてくれた。

ギルドは僕のことを信頼してデニスさんを紹介したわけだ。

それを鑑みても僕はデニスさんに害悪を与えようとしただけでなく、

ギルドのあるいはエコラックさんの顔に泥を塗る行為をしたのだ。


謝罪し先ほどの言葉の撤回をさせてほしいと求めた。

最終的に最初の価格と変わらない値段で卸す形になった。

銀貨5枚での販売だ

値上げ自体もいずれはしてもいいが、今はやめてほしいと言われた。

こちらの《《表向き》》の事情を加味したうえでのデニスさんなりの妥協だった。


デニスさんが部屋から出ていきギルドマスターと職員さんと僕の3人になった

「なあレンジよ。お前さんも商人として売り上げを上げたいのはわかるぜ。

でもお前さんは俺にあった初日に何を言ったんだ?」


そうだ・・・商人にとって情報は命、そして信頼は第一だ。

僕が今回やったことはデニスさんからの信頼を損ない

ギルドからの信頼を損なう行為だ。

それは必然的に僕自身が今後も商人としてやっていくにあたり、僕自身の首を絞める行為に他ならない。

利益だけを優先した結果身を滅ぼしたものは多くいると言っていたじゃないか。

それにそれは前の世界でもよくあった話だ。


利益を優先するあまり、法は破っていなくてもモラルを破った行為をして

信用を失い、そのまま破産する会社をニュースでいくつも見てきたはずだった。


今回失った信頼は簡単には取り戻せないだろう。

今後、僕がデニスさんに対して、またエコラックさんやギルドに対してどう向き合っていくのか。

それ次第で僕に対する評価も変わってくる。


僕は再度、深く頭を下げながら謝罪し、ギルドを後にした。



宿に戻り仕入れを行おうと思った。

失敗は後悔しても遅い。

次からは誠意をもって対応し続けると誓い行動するしかない。

とりあえず今回昆布を納品したため、昆布の手持ちはゼロだ。


最初に1kg納品した翌日にもってきた10㎏を卸したので、次回に備えて再び10㎏を入荷しようと思い宿の部屋からショッピングセンターに入った。


そしてこの空間に入るなりに

『ビー・ビー』と頭の中で音が鳴り響いた。

普段の音と明らかに違う音。

僕は慌てて表示されたステータスを確認した。


『貢献度が下がりました。条件に達していません』

『飲み物屋を《《閉鎖》》します』


!?


慌てて飲み物屋に入ろうとするが、店の入り口前で見えない壁にぶつかり店舗に入ることができなかった。

そうして僕の前でシャッターは閉まってしまった。


シャッターのしまった店の前で項垂れた。

なぜ気が付かなかったんだ?

貢献度によって解放される店舗が増えるということは、その《《逆》》もまたありうるのだ。

すなわち反社会的な行動をとり、私利私欲で世の中に害悪を与えれば貢献度が下がるということが。


今までの僕の行動にはポーションの際にも既存の店舗が影響を受けないようにするという配慮があったはずだ。

しかし今回はどうだ?

何をどうみても利益を上げたいが故の身勝手極まりない行動だ。


項垂れ打撲は茫然としながら食料品店で昆布を仕入れ、出入り口から宿に戻った。

宿に戻ってからは記憶がなくいつの間にか寝てしまったようだ。


翌朝、気合の入らない状態で朝食をとり部屋に戻る。

今まで活発に動いていた僕とは、あまりにも対照的な状態に宿の店員が怪訝な表情をしていたことにすら僕は気が付かなかった。


ベッドでぼんやりしながら考えた。

世の中のためになる行動は僕の為になる。

世の中に害悪を与える行動は僕の為にならない。


前の世界でも因果応報という言葉がある。

だがこれは悪い意味で使われる言葉だ。

良い行動をすれば必ずしもいい結果が返ってくるわけではない。

何も変わらないこともある。

しかし悪い行動をすれば必ずと言っていいほどに自分に返ってくるのだ。


世の中の犯罪者がそうだ。

彼らは悪い行動を起こした。そんな人物を民は認めはしない。

そういう人間は決まって捕まるか表社会から姿を消す羽目になっていた。


そんな今まで見てきたことを僕は忘れてしまっていた。

後悔のあまりに涙が出てくる。

しかしこの涙は自分の行動の結果だ。

誰も同情しないし慰めてもくれない。




僕はこの時に誰のためにならない限りは、私利私欲にまみれないようにしようと自分を戒めるのだった。

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