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1-3-β

SIDE:レッサーモンド・フォン・ファスペル


私はレッサーモンド・フォン・ファスペル

デミウルゴス公国の辺境の領主だ。

言うまでもなく他国との国境の領主であるため、この国の防衛に関しては大きな発言権を持っている。


最近は困ったことになっている。

というのも隣国アーガスト王国に開戦の兆しがあるという《《噂》》があるのだ。

まぁあくまでも噂話であり確固たる情報があるわけでは無いのだが。

しかし、それと同時に王国が怪しげで大規模な術を使用したとの情報が入っている。

残念なことにこちらは噂話ではなく、私が出している隠密からの報告だ。


なので本来ならば噂話として笑い飛ばすはずだった話も、決して戯言とは言えない状況となっている。


そしてその噂話はは既に領民の耳にも入っている。

いや、耳にしているだけではないだろう。

国境から距離のある王都であれば耳に入るだけで済むが、ここは辺境伯領だ。

すなわち国境から一番近い町のひとつであり、いざ開戦となれば真っ先に自分たちが被害を被るのだ。

決して他人ごとでは済ませられない。

兵士たちがピリピリしているのを領民たちも感じ取っているのだろう。


おかげで領民たちがお金を節約する方向に向かっており、お金の流れが悪くなってきている。

我が家の方から資金を捻出しいくらかは緩和できているが決定打には至っていない。

確実に不況の方向に向かっている。


そんな問題に私が頭を悩ませているときに、量の片隅にある街の商業ギルドのマスターから早馬が届いた。


何でも一般市民にしか見えない少年がギルドに登録したその日に貴族向けの塩や胡椒を納品してきたのだという。

さらにその納品は一度きりの物では無い可能性が高いらしい。

どうにも少年は独自の入手経路を持っているようだ。

加えて一般市民が口にする塩も入手経路として持っているようだ。


残念ながら今回の取引には持ってきていなかったようだが。

しかしそうなると話は変わってくる。

ただですらこの辺境伯領は海から遠い分、輸送費が嵩んでしまい、どうしても塩が高価になってしまう。

しかし塩は人が生きていくうえで必要不可欠な物だ。

高くても買わざるを得ない。


どうにも人口全体から見れば大した量ではないようだが、それでも安く仕入れることができるならばそのチャンスは逃すべきではない。

単なる嗜好品とは違うのだ。

塩は謂わば必需品の一つ。


私はこの機会を逃すまいと考えたが、それはギルドマスターも同様の様子だ。

手紙には継続して取引してもらえるように依頼したとのことが書かれている。

流石はあのエコラックだ。国王様に謁見が許されたこともあるくらいに有名な商人だ。

現在は第一線から離れているが、その能力は健在といったところだろうか。


すでにエコラックが手を打ち始めてはいるようだが、辺境伯としても見逃すことができないことを伝えるために、引き続き少年との関係を濃密にするように努力せよとの指示を書いた手紙を送ることにした。



少年が安く塩や胡椒を手に入れられるだけのこと。

あくまでも領が潤うかどうかの話だけのはずだ。

なのに私はこの時、時代が揺れ動いた感覚を確かに感じ取った。

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