領地持ち子爵家の生存戦略~生き残る為には手段は選ばない~小さな独立国家になるまでの話
ちょっと気晴らしで設定が思い浮かんだので無理やり書いてみました。
私、フィリップ・ドルーはドレフェス王国より子爵位をもらい領地を管理している地方貴族だ。
私が治める領地は、この大陸を南北に流れる大河が、海に向かう途中で分岐し二股に分かれた間にあり、中州のような形状の土地になっている。
領地内の小高い丘の上に領城があり、そこから全体を見渡せる。
北と南に村が1つずつ。
各村を合わせて領地内で食料は自給できる程度の領地である。
昔は、ドルー王国などと名乗っていたが、全人口は500人にも満たない。
領軍は30名ほど、もし有事があれば、領民に武器を貸し出すことで戦ってきた土地だ。
100年ほど前、当時勢力を拡大していたドレフェス王国軍が対岸に現れ戦うことが無意味と判断した当時の当主が併合を受け入れ、子爵領となった。
農作物などの産業としてはうまみのない土地だったため、ドルー家がそのまま統治することでまとまったそうだ。
その割には、隣国のフォーニエ王国との貿易における拠点の一つになっており、人の出入りは多い。
街はほとんどが宿屋や料理屋である。
土地柄どうしても燃料となる木材が手に入らないため、古くから宿代の代わりに薪で支払うことも可能であり、現在は両国間で橋が架かっているため、物流は豊富だ。
それら商業地の売り上げをドレフェス王国への納税にあて、質素倹約で領地を少しずつ発展させている。
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私たち家族は、妻のマリーと娘であるアンヌ、アンヌの婚約者でフォーニエ王国のコーズィ男爵家の3男であるダニエルの4人だ。
フォーニエ王国とドレフェス王国は友好関係にある為、この婚約が成立できた。
アンヌは現在ドレフェス王国の貴族学校に通っている。
ドレフェス王国に属する貴族は12歳になると必ず通うことが義務づけられ、15歳の卒業パーティーでデビュタントを迎え、成人という扱いになる。
寮生活は大変だったろうが、それも今年で最後だ。
我が家の予算の関係で、娘の卒業式に参列できないのは悔しいが、代わりにダニエルに迎えに行ってもらっている。
帰ってくれば正式に婚姻だ。
私はまだ35だが、ダニエルとアンヌは領地運営については優秀だ。
彼らが結婚したら後を譲ろうと思っている。
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「お父様!今すぐドレフェス王国から独立すべきですわ!」
学園の卒業パーティーを終えて戻ってきた娘の再開一番の言葉である。
「ま、まってくれ、一体どういうことだ」
「順を追って話しますわ。あれは卒業パーティーが始まってすぐのことです」
話が長くなりそうだったため、我が家のサロンに移動し、茶を用意してもらい妻も呼んで話を聞いた。
アンヌは運よく?この国の第二王子と同期である。
つまり、卒業パーティーには第二王子も当然参加していたのだが、そのパーティーの場で、第二王子は婚約者に対し婚約破棄を突きつけたのだそうだ。
真実の愛に目覚めたか何か知らないが、気に入った男爵令嬢を醜く虐めた婚約者の公爵令嬢を皆の前で断罪、国外追放だとのたまった。
娘も一度声をかけてもらったという、カスティーリャ公爵のご令嬢は貴族女性として尊敬できる人で、そのような惨めったらしいことはしないと皆分かっていた。
むしろ、学校に入るまで平民だった男爵令嬢のほうが、娼婦ではと言わんばかりに男に侍り、ついには殿下を落としたのかと、皆があきれ顔だったそうだ。
問題は、この第二王子殿下が喧嘩を売ったのが、国一番の公爵家だったこと。
政治的駆け引きで、第一王子は隣国のベルノード帝国の第二王女と婚姻しており、国内バランスを考えての第二王子の婚約だったはずが、王子の勝手な判断でぶち壊されたのだ。
第二王子の側近たちも同調していたようで、国王陛下が参加する頃には、事態は最大限に悪化。
第二王子を陛下が庇うような発言をしたため、公爵家は反旗を翻し、王家に対して宣戦布告。
国軍を掌握している公爵率いる反乱軍と、王家に忠誠を使う騎士団とで内乱となりそうだという。
アンヌもダニエルも卒業式に参加した服装で戻ってきたようだ。
道中馬車で十日はかかる道のりを、宿も取らず駆け抜けたらしい。
馬もよく持ったものだ。
「うむ、つまり戦端が開かれたかは分からないが、少なくとも内戦は避けられぬ状態か」
「はい、しかも第一王子はもともとカスティーリャ公爵の妹のお子ですので、公爵は第一王子を旗印に、帝国の後ろ盾まで使って、現王家の転覆を画策する状態にまで発展しているようです」
「現王家の王都での評判は最悪です。家の領だって無駄に税金を上げられていたはずですし」
「そうだな…王国北東部で飢饉があったから増税だと言われたが、そのような事実はなく、王家の浪費は目に余るものがあったが」
ここ数年、毎年少しずつ税金が上がってきており、我が家としてもそろそろ民の税金を挙げなくては対処できないような状態になりつつあったのだが、娘と婿の話を聞く限り、王都でも評判は悪いようだ。
王家の直轄領は独自の税率が課せられるからな。
「第一王子は今の国の在り方を直そうとしておられましたが、帝国の姫君を嫁にもらったことで、内政干渉される可能性があると言いだした宰相たちによって、第二王子が次期王のように扱われていたとか」
「はぁそこまで腐っていた」
「あなた、ドルー家として決断が必要だと思いますわ」
妻が娘たちに賛同する。
確かに、この状態ではドレフェス王国のどちら側についても角が立ちそうだ。
そもそも、どちらについたところで戦後復興の増税は免れまい。
はっきり言って関係ないところで勝手にやっていてほしい…
仕方がない。我が領地特有の地形を利用した最終手段を使おう。
「皆の意見はわかった。わがドルー領は、ドレフェス王国から独立する」
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妻とアンヌに領民への説明を任せ、ダニエルにはフォーニエ王国へ事情を説明に走らせた。
ドレフェス王国とは50年前祖父の時代には王家とも仲良くさせてもらっていたが、それ以降は関係が冷え込んでいたのだ。
内乱を起こすような国を構って自領の民を飢えさせるわけにはいかない。
勝手にやっていろと言うやつだ。
私はドレフェス王国内の情報を集め始める。
そして、王都には独立を宣言した書面を発送した。
どちらの軍勢であれ家を相手していられるほどの余裕はないだろう。
良くしてもらっていた川を渡ってすぐのバートラン伯爵へ会談を申し入れ、状況を聞く。
「王都は混乱状態だ、すでに避難民が家の領にも着ている。歩いて7日はかかるだろう距離なのに、だ」
「バートラン伯は、どちらの陣営に?」
「どちらにも就かん。はっきり言って今回のごたごたは醜聞に耐えん。すでに周辺貴族と共に、御主と同じように独立を宣言するつもりだ」
伯は腕を組みぐったりとしている。
周辺貴族との調整がなかなかてこずっているようだが方針は決まっているようだ。
「まぁそうなるでしょう…くだらない戦いに巻き込まれる民を思えば」
「あぁ、100年前の地図に戻るだけだ」
ドレフェス王国が大きくなる前は、この地域はそれぞれ独立した国家であったりしたのだ。
昔に戻るだけと言えばそれまでである。
「フォーニエ王国とは家として有効な関係を結んでいる、今婿を向かわせて事情を説明しているので、伯もそうしてはいかがか?」
「そうだな、後ろ盾は必要だ…帝国よりは扱いもよかろう」
帝国とフォーニエ王国は軍事同盟を結んでいるはずだ、この内戦を機に、立場を明確にしておかないと、無駄に飲み込まれ民が苦しむだろう。
そういう意味でも、今このタイミングであれば独立国として成り立つはずなのだ。
場合によっては傀儡国家になる可能性もあるが、フォーニエ王国であれば統治における自治権はそのまま許されるだろう。
私は会談を終え帰路につく、バートランの街で集めた情報を信じるならば、内戦は泥沼になっており、王都周辺の領地はどちらにつくのかで揺れ動いているようだ。
今の状態であれば独立を宣言しても軍を差し向けられることはないだろう。
ドレフェス王国内にそんな余力がある軍事組織はすでにないはずである。
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フォーニエ王国から戻ってきたダニエルから、王国印が付いた親書を手渡された。
内容としては独立の容認と、内乱による苦労をねぎらわれる内容だった。
ドレフェス王国からは何の音さたもない。
独立宣言書を王宮には届けることができたと、執事のアンドレから報告を受けた。
領民もおおむね賛同してくれている。
しばらくは木材などの燃料価格が高騰する可能性があるが、戦争に巻き込まれるよりは良いと考えているとのことだ。
そろそろ収穫期となる。ドレフェス王国はどうなっているかは、たびたび訪れる商人や避難してきた一般人から伝え聞いている。
最悪、2つの国家に分裂する可能性が高いとのことだ。
100年前一大勢力を誇った王国も崩壊間近と見える。
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娘のアンヌとダニエルの結婚式が終わった。
それほど大きな規模ではない、領地にある教会で式を挙げ、祝いをし、領民に伝え私は隠居する旨を連絡した。
ドレフェス王国内乱は、第一王子派の勝利となり、第二王子側が拠点としていた王都は帝国軍に飲み込まれたそうだ。
旧カスティーリャ公爵とその周辺が独立国家として、ドレフェス共和国となった。
バートラン伯も一度は独立を宣言したが、共和国に組みするという。
ドルー家はこのまま独立国としてやっていく予定だ。
現在は娘たちが考えた永世中立宣言を周辺国へ話している。
土地が土地なだけに攻め込みにくく、取得するうまみが少ないながらも、交通の要所という微妙な立ち位置が中立宣言に役に立った。
おかげで、自領防衛というよりも自領の治安維持の兵30名が主な戦力となった。
これ以上人口を増やすわけにもいかない土地柄なため、十分なのかもしれない。
出入国における微量の関税…橋の維持費などを収益として外貨を稼ぐ形となった。
また、娘たちは銀行という会社を興したようだ。
金貸し業は貴族のやることではないと思うが、これからは貸し付けた金で仕事を起こし、その利益を還元してもらうことで利益を上げていくことが重要なのだそうだ。
ドレフェス王国の貴族学校に通ったことが、意外と役に立つと言っていた。
高い金を払って通わせた甲斐があったようだ。
これからは、貿易の中継地としての地位を確立しつつ、自給自足が継続できる発展を陰ながらサポートしようと思っている。
しかし、いいタイミングで再独立できたというものだ。
我がドルー家は今後も安泰だろう。
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この後、200年ほどの間、周辺国の名前や国境線が変わることがあったが、永世中立都市ドルーは、1小国家として領地を維持したまま継続した。
途中、民主化運動などが起こり、国家元首としてのドルー家はこの後、完全な民主主義への移管などによりなくなるも、中立国ドルーとしてその後も歴史になお残す国家となれたのだった。
何度か起こる世界大戦のさなかには、各国スパイが入り乱れる混沌と化したことも有るが、国そのものの治安は良く、その後も人口は少ないながら、ゆっくりと発展し、ある意味でどこの国からも影響されない小国として、地図から消えることは1度たりともなかったのであった。
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