表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【本編完結】 少女クロスボー小隊〜部隊を率いたのは魔を狩る者と恐れられた男だった〜  作者: 犬尾剣聖


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

111/195

111 シャドウソード








 左脚の太ももが革鎧ごと切り裂かれ、鮮血が飛び散った。


 くそ、脚をやられたか。

 左腕も相当の重傷、加えて左脚の裂傷。

 出血も酷い。

 これだとまともに動けない。


 苦し紛れに剣を振るう。


 しかし剣聖の動きは予想以上に早い。

 余裕で間合いの外へと出て、俺の剣をけた。

 何度も振るうが全て回避される。


 そして馬鹿にした表情で剣聖が言ったきた。


「その足では攻撃は無理のようだな。となると、私の次の攻撃をどう回避するつもりだ?」


 遠回しにお前の負けだと言いたいのだろうな。

 そこで俺は言い返す。


「次の攻撃だと? 何を言ってる。お前に次はない!」

 

 ここまでに詠唱と術印は完成させていた。

 後は発動のみ。


『シャドウソード』


 俺の剣が不気味な輝きを放ち始めた。


「ええい、詠唱を完結していたか!」


 剣聖が苛立ち気に、剣を構えて防御の姿勢をとる。


 俺は一歩前へ出た。


 剣聖は間合いを外すためにさらに後ろへと下がる。


 そこへ俺は渾身こんしんの一撃を振るった。


 剣聖は身体を引いて俺の振るった剣をかわした、と思ったに違いない。

 だが、そうはならなかった。


 俺の剣が剣聖の腹の前を通り過ぎる瞬間、俺の右手の指輪が輝き、普通だった剣が黒い巨大剣へと変貌(へんぼう)したからだ。


 この黒い巨大剣ならば届く!


 しかし、さすが剣を極めた男。

 自分の身体と巨大剣の間に、強引に細剣をねじ込んだ。


 剣と剣が交叉こうさして激しく火花を散らせる。


 その瞬間、剣がポキリと折れた。


 俺は振り切った剣を再び構える。

 その時には元の剣に戻っている。


 目の前に立つ剣聖は茫然ぼうぜんと自分の折れた剣を見つめている。

 そしてガックリと片膝かたひざを突いて言った。


「……そんな魔法、見た事も聞いた事もない……ぞ」


 剣聖の腹が一気に赤く染まっていく。

 どうやら俺の剣は剣聖の剣を叩き折った上で、奴の腹をも斬り裂いたようだな。


 俺は足を引きずりながら剣聖のそばへと歩く。


 気が付けば、辺りはシーンと静まり返っていた。

 剣聖の弟子たちもワルキューレ小隊の少女達も、戦いの手を止めている。

 そして街の人々までも建物の影から俺と剣聖を注視している。


 俺が横まで来ると、剣聖は前のめりに倒れた。

 そこで俺は剣聖に言った。


「剣聖とまで言われた奴が、なんでアルホ子爵なんかみたいなクソ野郎を助けようとしたんだ?」


 すると剣聖は苦しそうに腹を抑えたまま仰向けになり、俺への答えを返す。


「どうせ、平民のお前には解からんさ……貴族同士のしがらみってやつさ……」


「そうか。本当は剣聖にまで上り詰めた者を殺したくはないんだがな。だけどな、貴様が生きているとこの先、何度も剣を交えることになりそうだ。その都度、俺が勝つとは限らないんだよな。だからお前はーーこのまま生きては帰れない」


「……ああ……最初から、負けたらそのつもりだったよ。周りを見てみろ……この多くの視線の中で剣聖が負けたんだ……ならば、そういう……こと…だ……」


 剣聖は遠くを見つめたまま息を引きとった。


 その途端とたん、弟子たちが剣聖に集まって来る。

 その内の一人は半身火傷してるが大丈夫なのだろうか。

 ミイニャの炎の(あと)だろうな。


「先生!」

「師匠!」


 戦いなどそっちのけで、弟子の剣士四人は剣聖の周りに腰を下ろして泣き始めた。


 反対にワルキューレ小隊からは「キャーキャー」と喜びまくる声がうるさい。


 ただ、俺は今ここにいる剣聖の弟子達をこの場で斬ろうか悩んだ。

 恐らく、これは後々に遺恨いこんを残すことになりそうだからだ。

 それならば、いっそこの場で斬り捨てようと思ったのだ。


 しかし、それを止める者がいた。


 俺の右手を引っ張るのはロミー准尉だった。


「もう良いよ、そこまでにしておいてよ。ここでさ、あいつらを斬ったらワルキューレ部隊の評判が落ちちゃうよ。ここで止めておけば、逆に剣聖を倒した部隊として有名になるからさ。証人はこんだけ沢山いるんだしね。えっと、それより、傷の手当した方が良くない?」


「はい、確かにそうですね……」


 そう言って傷を見てみる。


 ちょっとヤバい。

 出血が多すぎた。


 それに何かフラフラする。


「誰か、ボルフ隊長の手当を頼むよ!」


 直ぐにアカサとメイケが駆けつけ、両脇を支えてくれた。

 そしてその場でゆっくりと地面に寝かされて、人々が見ている前で治療が始まった。

 アカサとメイケはいつものメンバーなんだが、今回は何故かサリサ兵長が加わっている。

 サリサ兵長は涙目になりながらうさ耳をフルフルと振わせて、必死に傷口にポーションを塗り込んでいる。


 剣聖の弟子たちは、剣聖の遺体を担いでこの場から去ろうとしていた。

 その時のロミー准尉の命令は「手だし無用」だった。


 俺は治療されながらも、周囲の街の人達の声が耳に入ってくる。


「おい、見たか、今の斬り合い。ヤバすぎだろ」

「剣聖に勝ったとか、信じらんねえ!」

「あいつが“魔を狩る者”ってやつらしいぜ」


 治療を終えると、再び城に向かって行軍は始まる。

 俺もなんとか馬にまたがり行軍を続ける。

 馬での振動が傷に響くがここは我慢。


 まだ城まで距離がある。

 次に襲われたら俺はもう戦えない。

 なんか物凄いピンチな状況なんだが。


 そんな事を考えていると、前から隊列を組んだ部隊が進んで来る。

 マズいな、一個小隊の軽装歩兵だ。


 こうなったら街中だからとか言ってられん。

 俺は隊列を止めて叫んだ。


「クロスボウ準備~!」


 次々に少女らがクロスボウにボルトを装填していく。


 正面から来る部隊も戦闘態勢を取り始めた。


「まだ撃つな~、そのまま待機しろ!」


 馬に乗った指揮官が隊列から離れて、一人前へと進み出て来る。

 どうせまた、護送馬車の中の者をよこせって言うんだろう。

 俺の目の前まで来ると、その指揮官は馬に乗ったまま言った。


「この小隊はワルキューレ小隊で間違いないか」









やはり間に合いませんでした。


明日も間に合わなさそうです。




ボルフの指輪ですが、忘れているかもしれませんので補足です。

「アメフラシ」という二つ名の者を倒した時の戦利品です。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
[良い点] 剣聖に勝った! これでまた魔を狩る者の武名が高まりますね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ