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キャンプ日記 その3

連投3日目ですー

 という事で、わかるように説明してもらいました。

 まずもって最初のウソ発見機だけど、あれは触れた人の魔力を読みとってくれる機能があるらしい。魔力は感情に左右されるので、嘘をつくと魔力は『ウソです』っていう揺らぎを出すそうだ。

 でも、僕は何も反応しなかった。故障を疑ったが門番さんの嘘には反応したので、その線は無くなる。次の原因は、読み取れるほど魔力を持っていない。

 先天的に魔力の少ない人は一定数いるらしいので、ごく稀に反応しない人がいる。そこで測定器を使い、その人の持つ魔力を可視化する事で真偽を取ろうとしたらしい。ところが測定器でも僕の魔力は読み取れなかった。


「つまり、アンタは魔力を持っていない」

「…はい、そうだと思います」

「魔力が無いと、必要最低限の魔法も使えない。魔道具も使えない。仕事も無いし、国が違えば人として扱われる事も無いだろうな。いったい今まで、どうやって生きてきたんだ?」

「無くても割となんとかなりますけどね。それで、僕は街に入れるんですか?入れないんですか?聴取結果しだいでは、街入り出来るって話でしたよね?」


 今こうしてここにいるのは、事情聴取を兼ねた街入り前の検問だ。一宿一飯を面倒見てくれるのはありがたいけれど、いつまでもここにいられるわけでもない。


「その話はもう結論が出た。アンタの話は信じられんが、魔力の無い奴に悪事を働く事なんて真似は出来ん。吹けば飛ぶような体で、トラブルを自ら起こすバカとも思えん」

「…つまり?」

「ようこそ、ウィンドの街へ。我々は君を歓迎しよう」


 かくして。僕はようやく街に入る事を許されたのだった。


 ◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎


 翌朝、僕は門番さんの詰所から見送られて、街入りを果たした。


「まっすぐ行くと大きい噴水広場がある。その手前に冒険者協会があるから、そこで身分証を作るといい。仕事も紹介してくれるだろう」


 詰所を出る前に、そう教えてくれていたので、僕は迷う事なく冒険者協会にたどり着くことが出来た。異世界だけど言葉も、文字も読めるようになっているし、これが異世界転移の影響って事なのだろうか。なら魔力を与えてくれれば、もっと楽だったのになぁ。


「ここか…」


 閉じた扉を開けると、かららん、という木のベルが乾いた音を鳴らす。それと同時に、独特な熱気と汗と酒の匂いがミックスされた空気が襲いかかり、思わず扉を閉めそうになる。


「っ……!」


 匂いが目に染みるってのは、この事なんだな。二十年以上生きてきて、こんなにすごいのは初めてだ。でも慣れておかないと…今後も協会は利用するつもりなんだから。


「よぉボウズ。ここは子どもの来る所じゃねぇぞ〜?大人しく帰りな」


 出た、異世界特有の絡みイベント。最強ナントカ転生とか、ナントカ無敵転移みたいなファンタジー小説なら、ここらで返り討ちにして最高クラス認定されるのだろうけど。


「いや、あの、ちょっとお使いみたいな物でして。会員証を作ったらすぐに帰ります。あははは…」

「お、そうかそうか。じゃあ今日から新米か!だったらこの銅級冒険者のヴォルフ様が後で特別に訓練してやろう。ガハハハ!!!」


 これぞ処世術。喧嘩は買わない、自分が相手の下である事をさりげなくアピール。何をして、どうするのかを明確に伝える。喧嘩はダメ、ゼッタイ。


「あの…」

「聞こえてましたよ。冒険者協会に入会されるのですね」


 窓口っぽい所まで行くと、受付のお姉さんがニコニコしながら出迎えてくれた。接客スマイルが眩しいです。


「ではまず、ご自身の身分証はお持ちですか?」

「ありません」

「分かりました、では簡単に犯罪歴などをお調べしました後、会員証を発行いたしますね」

「あ、もしかして魔道具を使いますか?だとしたら、反応しないと思います」

「あ、なるほど。では計測器にてお調べいたしますね」

「魔力が無いので使えません。昨夜、門番さんにも確認してもらいました」

「……え?」


 受付のお姉さん、信じられないものを見たご様子。魔力が無いという事実を、理解出来ないらしい。


「それは…使い切って今日は無い、という事ですか?」

「明日も明後日もありません。徒労になるでしょうが、計測しますか?」

「……そう、ですね。少々お待ちください」


 お姉さんは奥に入り、計測器を探しに行った。


「…ん?」


 そういえば、先ほどまでうるさかった後ろが静かだと思い、振り返ってみると。話しかけてきた銅級冒険者のヴォルフさんを始めとして、その場にいたほかの冒険者の人も変な視線をこちらに向けていた。


「……あの、なにか…?」

「い、いや、何でもない。気にしないでくれ」


 魔力が無いっていうのは、そんなに珍しいのか?門番さんも『かわいそうに』って言ってたし、協会内じゃあ『大丈夫かコイツ』っていう雰囲気がひしひしと伝わってくる。


「お待たせしました」

「あぁ、はい。じゃあ触れますね」


 二回目ともなると慣れたものだ。とはいえ、触るだけだから慣れるも何も無いけども。


「……」

「………」

「………………」


 反応、無し。祈るように見つめられたって、無いものは出せないし、測れない。ゼロは何をしてもゼロなんだから。


「もういいですか?」

「……あ、はい、大丈夫…です。えっと…こういう場合の対応は……」


 お姉さんが必死に頭を抱えて考えている所、悪いんだけれど。僕はそろそろ協会を出て行きたい気持ちでいっぱいだ。この注目されている空気に、耐えられそうに無い。


「お姉さん」

「ひぁい!?」

「会員証が作れないなら帰りますけど、作れるんですか?」

「そ、そうですね!作れます、当たり前じゃ無いですか!等級は、えっと…この場合の処理なら、限りなく無いに等しい魔力の持ち主なら……うん大丈夫きっと大丈夫私は間違ってない…」

「あの?」

「は、はい、お待たせいたしました!こちら会員証です!」


 そう言って手渡されたのは、木で出来た四角い板だった。


「ありがとうございます」

「…あの……本当に登録されますか?」

「…どうしてですか?」

「木等級ですと、受けられる依頼に限りがあります。正直言って、登録しても報酬は少ないですし…」

「大丈夫です、ありがとうございます」


 渡された木の板をポケットに仕舞い、入り口からみて正面に置かれた、大きく張り出された依頼掲示板を見てみる。


「ゴブリン退治、スライム討伐、護衛依頼にドラゴン探索……街の清掃依頼まであるのか…」


 だが、どれもこれも受けられる等級が決まっていて、木等級はどこにも書かれていなかった。


「兄ちゃん、ちょっといいか…?」

「あっ銅級冒険者のヴォルフ様」

「…様はいい。なんというかその……すまなかった」

「…何がですか?」

「いや……まさか魔力が無いとは思わず…」

「気にしてません。大丈夫です」


 まったく、魔力が無いくらいで何をそんなに大騒ぎするんだ?門番さんが言ってたけど、まとめると異世界の魔道具が使えないってだけだろう?他所の国では人権がないらしいけど、この国にいる限りは安全だし、謝られる要素はもとより憐れまれる事も無いんだけどな。


「そ、そうか?…まぁ、街の中にいる限りは安全だ。もしも街の外で魔物に襲われたら、俺の名を叫べ。どこにいても駆けつけてやるからな!」

「アッハイ。アリガトウゴザイマス」


 物語の勇者か英雄かな?気取ってるところ悪いけれど、多分呼ぶ事は無いから安心してていいよ。というより、平和ボケした日本人の僕は叫ぶ前に恐怖で固まって食べられてるだろうから。


 ◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎


 ヴォルフさんに「何かわからない事はあるか?」と聞かれたので、等級制度と受けられる依頼を聞いてみた。


「木、石、鉄、銅、銀、金、虹の順で等級がある。兄ちゃんは木等級だからな、受けられる依頼だと…非戦闘系の常設依頼だろう。薬草採取とか、街の掃除とかな」

「依頼書が無いですよ?」

「基本、常設依頼は窓口で受け付けている。常設の、納品系だと事後処理でも大丈夫だ」


 つまり採取してから報告しても、咎められる事は無いって事か。


「戦闘系は受けられないとの事ですが、たまたま偶然倒したりしても、何にもならないんですか?」

「依頼としてはな。けど、魔物の肉や皮は金になるから、買取はしてるぞ」

「教えてくれてありがとうございます。さっそく薬草採取に行ってきます」

「おう、気をつけて…いや、まて。こいつを持っていけ」


 そう言うと、ヴォルフさんは古い手帳とくたびれた皮の包みを取り出した。


「その手帳に、この周辺の簡単な地図と、遭遇しやすい魔物、薬草の見分け方が書いてある。俺の死んだ親父のお古だが、俺はもう頭に入ってるから使うといい。そっちの包みは、ボロいがナイフだ。研げばまだ使える」

「えっ、いいんですか?」

「かまいやしねぇよ。ナイフはもう捨てようと思ってたし、手帳も活用しなきゃケツ拭く紙と変わんねぇよ。親父もクソまみれになるよか、よっぽど良いだろうさ」


 なんだろう。噛ませのヴォルフとか最初は思ってて、すみませんでした。あなたは良い人です。勇者や英雄では無いでしょうけど、間違いなく雄志です。


「えっと…地図によると……?」


 手帳の地図を頼りに、街の外を探索。薬草の群生地まで記載されていて、特に迷う事は無かった。

 薬草も、間違えやすい毒草などと一緒に特徴が記載されていて、摘み方や初心者がやりそうな失敗などがメモ書きされている。


「難点を挙げると字がかすれて読みにくいって事かな」


 それはいつか自分用に清書するとして。今はとにかく、先立つものを揃えないと。


「いつか日本に戻れるかもしれないけど、それは絶望的だろうし。当面はこっちで過ごす事を考えないとなぁ…」


 まずは貯金。そして衣食住の確保。現代道具ありきだけど、サバイバル能力はある程度ある…と思いたい。神様のお告げとか、使命とか…多分そんなのは無いだろうから、不自由に感じないくらいにはならないとね。

 毎日がキャンプと思えば意外と楽しいかも?


「やっべテンション上がって来た」


 毎日がキャンプとか最高じゃないですか。コレなんて幸運です?異世界最高ですね。

連投終わりましたー


またのんびり更新していきますので、どうぞよろしくおねがいしますー


なお次の更新は7/10ですー

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