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キャンプ日記 その2

 一年前…といっても、それは季節の巡った感覚での話だけど…僕は足を滑らせて異世界にやってきた。

 目が覚めたとき、僕は川のほとりで倒れていて、最初はただ遭難しただけだと思っていた。


「ここは……流されてきたのかな…?」


 焚き火用の難燃性の服を着ている以外は持ち物ひとつ無く、愛用のモーラナイフもファイヤースターターもキャンプ場に置いてきてしまった。

 しかし焦る事はない。なにしろ僕は今、川のそばにいる。このまま川沿いに降っていけば、道路や人工物に当たるだろうから。


「……と、思ったんだけどなぁ」


 かれこれ一時間近く歩き通し、川の中流特有の砂利道から、下流にさしかかる今この地点まで。ただの一度も人工物が見当たらない。空を這う電線も、狭い国土を誇る日本の山に必ず一本は立っているであろう鉄塔から、走り屋たちが攻めた峠道の一本に至るまで。毛の先ほどの文明が見つからなかった。


「もしかして僕、秘境にでも迷い込んだのかな?飛竜呼んだらリ○レウスの巣にでも飛ばしてくれるんだろうか」


 武器無し、防具無し、モドリ玉無し。即死不可避の3落ちでクエスト失敗です対戦ありがとうございました。まる。


「じゃなくて。日が暮れるまでに民家の一つでも見つけないと詰む」


 そもそもだよ?川の近くに何も無いってのがあり得ないんだよね。古代メソポタミア文明もナイル川の近くで栄えたっていうし、人の暮らしと川は切っても切れない運命なんだよ?

 …え?ナイル川はエジプト文明でメソポタミアはチグリス・ユーフラテス川?今そんな話して無いじゃん黙っててもらえませんかね?


「……ついに下流も超えて山を降りてきてしまったんですがね…?というか民家で良いって思ったけど…」


 川のそばに文明は栄えるとは言いましたけど。言いましたけども。

 山を降り、川を下り、たどり着いたのは巨大な湖で。その湖の中心には、大きく盛り上がった断崖絶壁の岩山と、とても巨大な……城が、ネズミーランドのシンデレラ城みたいな建造物が、城壁に囲まれて建っていた。


 ◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎


 湖はちょうど三日月のような形をしていて、今僕はその反対側に回り込んできている。つまり、湖の外周をぐるりと回って正面に来た形になった。


「……もう絶対、日本じゃ無いよね…」


 三日月湖の背中側から見ると断崖絶壁の岩山なのだけれど、正面に回れば地続きで平坦になっている。つまり岩山は斜面になっていて、実質入り口はここしか無いって事だ。


「天然の要塞みたいだな……」


 三日月湖から回る時にチラリと見えたけれど、城の下には街が広がっていた。この要塞都市のような場所は、これでひとつの国なのかもしれない。

 ふらふらと入り口に近づいていくと、二人の門番らしき人に呼び止められる。


「そこの者、止まれ。ウィンドの街に何の用だ」

「あ、言葉は通じるのね」

「怪しいやつだな…それに、見た事もない服だ……」

「えっと…用っていうか、ちょっと道に迷ってて。あとお腹も空いてきたし…入れないって言うなら入らないですけど、代わりにどこか休めそうな所無いですか?朝から歩きっぱなしでクタクタなんです」


 そういうと門番は顔を見合わせて、なにやらヒソヒソと相談を始めた。少しして結論が出たのか、門番の一人が城の方へ行き、もう一人は僕の方に歩み寄ってくる。


「すまないが、君をすぐに街へ入れる事は出来ない。しかし、困っている君を見捨てる事も規律違反になる。したがって、事情聴取という大義名分のもと、我々騎士団の詰所に泊まっていくといい。まもなく日が暮れる、夜道は危ないからな」

「ありがとうございます」


 なんという優しい世界。まぁ見るからに怪しい奴だけど、丸腰だし。あと力も無さそうだし。ていうか無いし。暴れても取り押さえる自信があるんだろうな。取り押さえられる自信しか無いけど。

 かくして、僕はひとまず騎士団預かりと言うことになった。


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「ほー、じゃあアンタはニホンって違う世界からやって来たってのか」

「ええ、まあ」

「信じられるか」

「でしょうね、僕も信じられないですし」


 やっぱり、というか。予想通り、というか。ここは異世界だった。川に落ちたと思ったら世界から落っこちた件。人生何回分の不運なんですかね、コレ。いや、逆に幸運なのかな?


「でも実際、今こうして異世界にやって来てますし」

「……嘘は、ついてないんだよな…」

「それは魔法ですか?」

「いや、経験に基づく勘」

「何より信用出来そうですね」


 異世界を確信した極め付けは、魔法だった。明かりを取るために、キャンドルに火を灯すのだけれど。手から小さな火を出して、ロウソクの芯に火を付けたのだ。


「先輩、持ってきました」

「おう。じゃあスバル、こいつに手を置け。そしたらさっきの話、信じられないが信じてやる」

「分かりました」


 さっきから話している門番の人…その後輩に当たるもう一人の門番が、サッカーボールほどの水晶玉を持ってきた。異世界定番アイテムのウソ発見機か、犯罪歴がわかる魔道具だと思うけれど。


「手を置いたら、こっちの質問に全て『いいえ』と答えるんだ。嘘なら赤、本当なら青に光る」

「分かりました」

「さっきの話は全て本当である」

「いいえ」


 ……………。光らない?故障?電源入ってる?


「…あの」

「アンタは女だ」

「…いいえ」


 またも光らない。女だと聞かれて、いいえと答えたのだから、男の僕は青く光らなくてはならない。


「すまないが、こちらに同じ質問をしてくれないか」

「え?……門番さんは、女の人です」

「いいえ」


 門番さんが触れていると、魔道具は青く光った。つまり故障では無い。僕の持ち方とか触れ方の問題なのだろうか。


「おい、計測器を持ってこい。悪いなスバル、もう少しだけ待ってくれ」

「いえ、お気遣い無く。泊めていただけるだけありがたいですし」


 足早に去っていった後輩門番が、今度は銅色の板を持ってきた。これが計測器というやつなのだろうか。


「また触るんですか?」

「あぁ」


 言われるまま触って見るも、反応は無い。いや、わからないだけで、反応しているのかもしれない。


「アンタ…苦労してきたんだな……」

「えっ何が?」


 突然かわいそうな物を見る目を向けられたって、こっちは何の事か理解出来ない。誰かわかるように説明してくれよ。

ご愛読ありがとうございますー


連投2日目ですね


筆が乗る限りは書き続けますんで、よろしくお願いしますー

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