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1☆挙動不審

「健一、どうかしたの?」

「母さん!しずくが、おかしいんだ」

「どんな風に?」

「名前を聞いてきて、今更なんで自分の兄貴の名前聞くのかもおかしいけど、『ケンイチ!ケンイチうじどの!拙者忍びの者でござる。ニンニン、』とか言い出して……」

「ああそれ、藤子不二雄の忍者ハットリくんだわ。懐かしい」

「なんで母さんの懐かしいものをしずくが知ってるんだよ!?」

「あらそーいえばそーね。でも最近では昔の番組配信してるところもあるし」

「朝っぱらから俺の裸見て鼻血吹いたんだぜ?」

「裸って、下も穿いてなかったの?」

「ばっ」

健一は真っ赤になった。

「穿いてたよ」

「じゃあいいじゃない」


しずく、つまり私は兄と母のやりとりをこっそり見ていた。

「おい、しずく」

兄から声をかけられて、かさかさかさと逃げようと思った。(ゴキブリか?!)

「早く支度しろよ!学校行くぞ」

「えっ?一緒に行くの?」

「お前、対人恐怖症だろ」

知らない知らない。

慌てて部屋へ行き、学生カバンを開けて中を見てギョッとする。空っぽだ。教科書もノートもない。

学習机の引き出しにはアイドル歌手の切り抜きがわんさか入っているし、参考書もない。

使っていないため新品同様の英語の辞書と国語辞典をとりあえずカバンに放り込む。

制服は紺のブレザーにエンジのリボン。

「お待たせ」

「……今日は早いんだな」

「えっ?」

「いつも遅刻ギリギリまで髪型が決まらないだろう?」

お湯で湿らせたタオルでついた鼻血を拭いて、ただ櫛でとかしただけだった。

「スカートも丈が長い」

だって、せっかく似合うようにオーダーメイドで作ってあるのにわざわざたくし上げなくてもいいじゃない。

「ま、いっか。行くぞ」

「はい。ケンイチさん」

ぶっ。健一が思わず吹き出した。

「あのう、なんてお呼びすれば?」

「お兄ちゃん、で良いだろ」

「はい。お兄ちゃん」

なんか、嬉しかった。


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