世界の果てで孤軍奮闘する男が得た果実は、新たな大木を芽吹かせる
学校に行こうと朝起きて着替える。歯を磨き、髪を整え、登校する。そして下校する。
休日になり、外に出てぶらぶらする毎日を繰り返す。何かが変わるかもしれない。そんな気持ちで過ごしていたら、50歳になっていた。
「何も変わらないなあ」
生活していく上で必要な事は、食べる・清潔にする・仕事をする・最低限の交流をする。それで生きていくだけならなんともない。テレビ・ゲーム・アニメや小説。いろんな物があり、何か変化が起きるかなと考えて生きていたけれども、何も変わらない。
「俺はこの先もこのまま変化なく生きていくのだろうか。」
いくら感慨深く思いをはせても変化なんか起きるはずもない。誰かが何かをしてくれる事を期待して待っていたって、変わる事なんてないんだ。それでもこの歳になっても変化を期待してしまう。
「社長、この資料の件ですが、上手くまとまりました。」
「そうか。分かった。」
今は元居た会社の子会社の社長をやっている。新規で立ち上げた事業だが、子会社化して動きやすくした。子供も妻もいる。子供は高校生か。俺もあの時は、異世界から何か来たり、何か大きな事でも起きるかと期待をしていたんだがな。
「もう夕方か。」
俺の人生はこのまま終わってしまうのだろうか。妻も子供もいて、家も買った。自動車もある。果たして順風満帆と言えるだろうか。違う。きっと違う。
「社長、エレベーターで何遊んでいるんですか。」
「いや、上下していたら異世界にピクニック出来るアニメを見てね。」
「はあ、アニメが現実になる事なんてないと思いますよ。」
「そうだよね。はは。」
帰宅しながら考えると、別に異世界から来たり、現実に何かが起きる事は別に必要ないと思う。むしろ何も起きない方がいいんじゃないかと考える。だって、仮に異世界から何か来たら、普通は警察や軍隊がやってきて、政府が管理をしはじめ、更にその異世界物をめぐって争いが始まるか、むしろ脅威になるのではないか。一番わかりやすいのは銀座に門が現れるアレである。作者情報から、現実で出来ない事をはっちゃけたいのが滲み出ている。おそらく描かれているのは最初期だろうが、時間が経つにつれて巨大ロボットがコロニー落としを始める世界などが好きな人たちが描きだしそうな世界が待っているだろう。
また鏡から女神が出てきたりするのは、どうか。パソコンから出てきたり、宇宙からやってきたりする物はたくさん見かけるが、果たしてそれらは政府などは放置するだろうか。しかし現実的に考えるなら、自称女神を称する人達と考えるだけで終わるだろう。そもそも彼女らは社会にとって有益となるだろうか。特筆すべき技術などがない場合は、受け入れたコミュニティの中で普通に暮らしていき、それを楽しむのが視聴者や読者なのだろう。
異世界に行くというのはやはり
「お帰りなさい。」
「ただいま。」
見た目は戦国時代の武将コレクションを第二次世界大戦の艦艇にすり替えたみたいな中の、練習巡洋艦のメガネっ子である。中の人が、全体攻撃大好きお母さんをやっているから、そのまま50歳でもイケる。いや、若い時に恋愛して結婚してずっと一緒いるならという前提だ。他人は無理でも、一緒にいる前提ならイケるだろう。
「早苗、愛している。」
「私はいつから早苗になったのですか。」
「早苗、死ぬなー。」
「いきなり何を言い始めているのですか。」
「いや、ネットで人生を語れるアニメを思い出してな。」
異世界、それは家・外・仕事場と環境が変わっている事が大事なのではないか。そこで俺はコミュニティで楽しむ。
「違うな。」
「そうですね、早くお風呂入ってくださいね。肩に鳥の糞がついてますから、早く脱いでくださいね。」
「何、本当か。」
「嘘です。」
慌てて脱いだが、どこにもついていなかった。
湯舟の中で考えると頭が冴える。やはり血流が良くなる事も幸いしているのか。さて、異世界に行って何をするのか。先ほど考えていた、自称女神と異世界に行くほのぼのアニメは、おそらく親父に勘当されて、家出した少女と一緒に高度成長期に土木工事に励み、生活していき、その最中女性騎士と女性魔法使いという浮気女とイチャコラするのをラノベ風にアレンジしたのかもしれない。だからコメントの流れる動画で、何年目の浮気だったか。それが妙に合う理由なのかもしれない。そう考えると、あらゆる異世界物というのは、根本的に今いるこの世界の見方を変えた。それだけなのかもしれない。
「あなた。お着換え置いておきますからね。」
「よし、一緒に風呂に入ろう。」
「お父さんのへんたーい。」
「娘の前でそういう事は言ってはダメですよ。」
R18展開は違うか。
明日会議もあるから早く寝ないといけないから寝室で横になっている。しかし、寝ていると思いつくと言うのは、安心感から来る物があるな。
「加藤、いや恵。」
「もう、倫理君。私は加藤じゃないよ~。」
「じゃなかった詩羽。」
「小説の執筆はまだ終わってないの。後にしてくれる。」
「そうじゃないんだよな。」
布団の中で隣に入ってきた。
「まだ異世界に行きたいとか、異世界から何かやってくるとか考えているの?」
「この手は暖かい。温もりがある。それで満足していいのか。違うだろ、エリリ!」
「明日早いのでしょ、早く寝ましょ。」
「えりり~!」
目覚まし時計の音がなる。大音量で赤い奴で千円ぐらいのが丁度いいので愛用している。
目の前には異世界の光景が広がっていた。
「広がってませんよー。いつも目覚まし時計が鳴ると言いだすのだから。もう少しゆっくりしてもいいんじゃないかな。」
「異世界に行きたいなあ。」