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ブラック企業に勤めていた私が聖女に転生しました

作者: えた~なるびぎな~

「もうこんな時間か」

私は仕事を切りの良いところまで終わらすと、腰掛けてた椅子から立ち上がり凝り固まった肩を回す。

誰もいないオフィス内で、人目を気にすることなく背伸びをすると、少しだけ疲れが取れた気がする。

気がするだけなのだが……

時計を見ると日付はすでに変わっており、もう明日ではなく今日の出社時間まで5時間を切ってしまっている。


「何でこんな会社に就職しちゃったんだろ……」

呟いても返ってくる言葉はなく、あるのは大学時代の後悔ばかり。


大学卒業を控え、就職活動している友人たちを尻目に、親のコネで内定が確実な私は遊び回っていた。

どうせ就職したら遊べないのだからと、ちゃんと入る会社のことを少しも調べもせず……

そして大学を卒業し会社に入った後で知ったのだが、ある筋では有名なブラック企業だったらしい。

就職難のこの時代、コネなどという甘い話は罠。

育ててくれた負い目があり辞め時を見失った私は、気づけば辞めるに辞めれない状況に陥っていた。

会社と家の往復で、流れ作業のような毎日を過ごす日々。

機械的なルーチンワークが続くと、私が倒れるのも時間の問題だった。




そして私は転生した、未来の聖女として。

転生という不思議体験に初めこそは戸惑いもしたが、何年も生活しているとそれが当たり前のように思えてくる。

聖女候補として、前世のように意味なく怒られることもなく、蝶よ花よと育てられた私。

何より嬉しいのが、美味しい食事とたっぷりの睡眠時間。

礼儀作法とか覚えることはたくさんあるけど、前世では考えられないほど充実した毎日。


「今度の生は楽しんで生きるんだ」


だというのに現実は非常である。

『聖女になるまでは楽しかった』そう、過去形なのだ。

聖女という肩書きを持った私のスケジュールは常にいっぱい。

視察から外交まで色々な所に連れ回され、休む暇なく常に笑顔を強要させられる。

それが仕事と言えばそれまでだが、休憩時間が移動するわずかな時間だけ。

その休憩中も、聖女としての威厳を保つためと不用意な行動は許されない。

『聖女は短命』と耳にしたが、まさか死因の原因が皆、過労だなんて笑えない。

転生してまでブラック企業なんて……未来の聖女に幸あれ。

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