隕石襲来
「おはよー」そんな極平凡な会話が繰り返されるここ、学校でとある噂を聞いた
ノアになれるという噂だ。
なにやら、黒い隕石が降ってきて、
それを食べるとノアになれるらしい。
そんな噂馬鹿らしいと思っていた。
人がノアになれるはずないと思っていた。あの頃はまだ、そう思っていた。
隕石が降ってきた
それも、小さい隕石だ。降って来る途中で砕けて小さくなったようだ
触れてみると「熱い」
皮膚が少しとけたが、例の噂もあって、
採取せずにはいられなかった。
冷めたところを見計らって触ってみると柔らかかった。さっきは暑くて硬かったのに不思議に思った。常温になると柔らかくなるのかなと思った。採取すると家に持ち帰った。
黒い隕石を眺めていると
なぜ生きると問われた気がした。
本能的に「生きたいからだ」と答えてしまった。
不思議な物体であり、ひどくおぞましいものに思えた。洗ってみたので、試しに舐めてみようかと思ったが、嫌な予感がしたのでやめておいた。
しかし、数日して、好奇心に耐えきれず一口だけ食べてしまった。
すると、若返ったような気がした。
鏡を見ると、15歳くらい見えた。
気のせいかと思ったが気のせいではないようだ。ノアと同じ体ように、15歳くらいで年齢が止まってしまったようだった
自分の生きたい気持ちが満たされて幸せに思えた。
ノアは不眠不休で生きられるらしいが、本当か確かめてみようと思い寝ずに過ごしてみた。
本当にノアになったようで、寝ないでも疲れることはなかった。
ただ、嬉しかったため歓喜の声を上げた
「幸せ」と。
過去に怯えることも未来に怯えることもない
永遠を手に入れた。今手に入れた。
そう思えた。
食べなくても、生きられる体を手に入れた。
ようやく、奴隷という身分から解放された気がした。これから、どうしようというのだろうと、誰もが思うかもしれないが、これからも、これまでも、全てがどうでもでもいいと思えるほど嬉しかった。幸せだった。
噂は本当だったようだ。
まず、家族に報告した。
ノアになったことを驚いたようだったが、
受け入れてくれた。
まだ、黒い塊の残りがあるから、食べるか聞いてみた。
父は拒否した。
父は「人は死ぬから人なんだ。
最後まで人でありたい」と言った
母は父がそうするのなら、私も従うと言って
母も拒否した。
孤独に思えた。両親を説得しようにも、
無理だった。
悲しかった。一人になったように思えて素直に悲しかった。
新制度ができた。人からノアになった者のための制度のようだ。
新たなノアを受け入れる制度だった。
国はすんなり、新たなノアを貴族として受け入れた。貴族になると勤労の義務がなくなる。よって、ようやく、奴隷でなくなったが、同時に一人になったような気がした。
家族がノアにならなかったことをまだ、引きずっているようだった。