表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

8月の夜

作者: 三葉普

日差しが強い夏の日、昼寝から目が覚めた私の目の前に、全く知らない顔があった。ムカつくくらいにニコニコしているやつだった。目覚めが悪いにも程があるんじゃないの。


「何してるの?」


問いたださないで。眠いのよ。あんたよりも私は忙しいんだから。でも、無視するのはどうかと思うから…


「何もしたくないから、昼寝をしてい…」

「じゃあ、またね!」


話くらい最後まで聞きなさいよ!帰っていったからいいんだけど… ん、待って?「またね」って、また来るの?勝手に私の家に来ないでよ!


勝手に不法侵入してきたあの子は、どうやって知り合ったのかは知らないけど、潤の友達らしい。


潤は、私が住んでいる家主で、その家には私以外には誰も住んでないけど、よく人が行き来する。良い奴が多いから、別に迷惑はしてない。けど、頭を撫でるのが気に食わない。何となく、プライドが傷つけられてる気がしてならない。それ以外は、特に不自由ではなかった。その子が来るまでは。


次の日、また次の日と、その子が私の家に来た。『清水しみず 真由まゆ』という名前だということ、中学生で、甘いものが好きだなどと色々なことを話してくる。正直、中学生なのに、小学生くらいの低身長でツインテール、身長が小さいからなんだろうか、声が高くて、顔も童顔。おまけにあのムカつくニコニコ顔。入っきり言おう。私はこいつのことが嫌いだ。私よりも年が下なのにどことなく、見下してるように笑うのが嫌だった。それにあいつは、変な奴!絶対に!


でも、話す内容が面白くって聞いてしまう。真由は、夏休みだからか毎日来ていた。そんなある日、真由はいつもみたいに楽しそうに話をしていた。


「もう少ししたら、近くで天体観測やるんだって。」


「へー、そうなの。」


「でも多分、行けないんだよね。星は好きなんだけど、場所とかわかんないから。」


真由はそんな話をした後、そそくさと潤の家を出て行った。『宿題やらなきゃ』って言っていた。だから聞けなかったけど、私は小さな声でぶつぶつと言った真由の言葉がひっかかった。


『場所なんて、直前に教えてくれるのかもしれないのに、なんでなの?やっぱりわからないし、考えるだけ無駄ね。』


そうやって真由と一緒にいた時は潤に、

『一緒にいてやってありがとな。』なんて言われる。わけが分からなかった。でも、私はその意味も、真由が話した意味も分かった。

真由が姿を消した日に。



ここ3日、真由と会っていない。雨の日でも毎日遊び来ていたあの真由がいない。うるさいのがいないから、久しぶりに昼寝でもしようかな。


「真由、知らないか?」


「知るわけないじゃない。」


「どこいったんだろ、あいつ。」


潤が珍しく焦っている気がしたから、目が覚めちゃった。気晴らしに散歩でもしたら寝れるかな。と、思いながらいつの間にか寝ていた。


誰?私の体を揺するの、やめて欲しいんだけど!イラッとして目が覚めたら、夜だった。少し、昼よりも涼しくて気持ちがよかった。そしてすぐに、私を揺らした犯人が分かった。真由だった。夜だからか、暗くて表情がうまく読み取れなかった。けど何となく、いつもみたいに笑ってない気がした。


「少しだけ、何も言わずに着いてきて。」


やっぱりいつもと違う。声にも、いつもみたいな元気さが全くない。でも私は、どうせ暇だから、ついて行ってあげよう、なんて軽い気持ちで、真由の言われるままに自転車にのせられ、15分くらいして海に着いた。


「なんでここに私を連れてきたのよ!」


私は海はあんまり好きではなかった。景色は綺麗だけど、潮の臭いがどうしても好きになれなかった。まぁ、真由に嫌いだとは一言も言ったことはないんだけど。


そんなことを思っていたら、真由がいきなり話し出した。


「今日は、星が良く見えるね!綺麗だな。名前とかよく詳しくないけどね。」


確かに綺麗だった。夜空には、夏の大三角が出来ていた。デネブ、アルタイル、ベガをすぐに見つけられたから出来ていることが分かった。でも、なんで今なんだろう。もうすぐしたら、学校で行くって言っていたのに。私を連れてくる意味も分からない。


それよりも、気になったことが起こっていた。何故だか真由は、泣いていた。泣いている。だけど堪えようとしているのか、無理やり笑顔を作っている。驚いた私は真由の顔を目をこれでもかっていうぐらい見開いてしまった。私はいつも笑っていたあの子が泣いているのが珍しいというより、初めてだから異常なくらい驚いた。そしてひとつ、予想した。真由もしかして…


「私ね小学生の頃、いつも通りにしていただけなのに、いつの間にかみんなに避け始められて…」


涙声で途切れ途切れで、分かりずらいところがあったりもしたけど、あの子が私に本当とことを教えてくれた。



真由は小学生の頃、簡単にいうといじめにあっていた。いつもニコニコして、誰とでもよく話す子だったらしい。でも、それを一部の人達は、真由が『ぶりっ子』だと思ったらしい。そこから、初めはシカト。次にものを盗まれるようになった。もちろん、隣になった子はみんな嫌そうにしていて、机を合わせてくれなかった。学校の先生は、その事を知っていたのだろうか。助けてなんてくれなかった。真由は、自分のことが好きではなくなった。


中学生に入ったら、いじめはエスカレートしていった。それでも、周りに誹謗中傷を浴びせられても、学校へと通った。でも6月、修学旅行が終わったあたりから真由は、学校に行けなくなった。1度休んでしまえば、楽だということを知ってしまった。親はその状況を知っていた。だから休ませてあげたらしい。


そんな時、フラフラと出歩いていたら潤にあったらしい。『お前、学校行ってないのか?』なんて聞かれて何となく真由は潤に全て話したらしい。そのあと、『お前のためになるかもしれない』なんて、言われて潤の家に連れてこられたらしい。そこには、同年代の子供などが数人いた。その子達は、ほとんど似たような境遇の子達らしい。1人話を聞いたら、いつの間にか東屋みたいに集まってしまったらしい。

夏休みが始まって、いつもより人が集まっていたけど真由は怖くて、潤以外の人と私意外には話さなかった。潤の家でも嫌われたら、居場所がなくなると思ったらしい。


ある日に、潤の家にいた真由以外の子達が天体観測をすると言っていたらしい(私は散歩してたから気づかなかったけど)。それを話してくれなくて、真由は傷ついた。


真由の心はすぐに割れるガラスだった。ガラスのハートが既にヒビが入っていて、穴が空いていた。それでも、少しは埋まってきていた。それを今回のことで、全てがバラバラに割れて、壊れて、もう、何処にも居場所がない。どうしたらいいんだろう分からなくなっていった。そして、3日間、姿を消した。死にたかったのかもしれない。でも、真由の心はずっとモヤモヤしていた。だから、全てを吐き出してやろうとしたのだろう。いつも話している私に。八つ当たりらしい。じゃあ、なんで私なのか。いじめのリーダーみたいな人にしたらいいのに。


なぜなら、真由は私のことが嫌いだった。


「私は、ずっとあなたが嫌いだった。どうして?あなたは寝たり、どこかへフラフラ出かけて、いつも1人になりたそうな顔して、それでもいろんな人から自分が望まなくても好かれる。そんなあなたのことが、大っ嫌いなんだよ!なんで?いつも愛想よく、ニコニコ笑顔を見せようと、努力している私はいつも1人なのよ!私は寂しいの、悲しいの、死にたいの!呑気そうなあなたが大っ嫌いなの!」


真由が叫んでいた。日々思っていた私への恨みみたいなものを。


真由が叫んだあと、私は真由の右頬に向かって強烈なパンチを食らわせていた。やっぱり抑えられなかった、私も言いたいこと言ってやろうかしら!


「あのね!ずっと被害者ぶってるんじゃないのよ!確かにあなたは、辛いことにあったんでしょ!私にはわからないことだけど、メソメソし過ぎなの!いじめをしていた奴らも聞いてたらムカつくけど、あなたもムカつくのよ!確かに私は呑気なやつよ!でもね、私だって努力してるのよ。愛嬌だって少しはあった方がいいかなとかだって考えたりしてるの!あなたなんて、ずっと過去に囚われてばっかで、前に進んでないじゃない!人それぞれ、立ち直るための時間だって必要よ!なら、潤の家に居ていた子達は、完全に立ち直った奴なんていないかもしれない。けど、あなたと違って血に根を張って生きようと努力してんのよ!私に文句あんなら、生きなさいよ!ひとりぼっちの野良猫みたいになっても、強く生きなさいよ!」


ほとんど息継ぎもせずに私も言いたいこと叫んでいた。そしたら、真由は大声で泣いた。

『酷いこと言ってごめんね。』って謝りながら。やっぱり、この子は優しい子だ。




そして、長い8月が終わった。真由の失踪は、いろんな人に迷惑をかけたらしい。




今日は、始業式の日。やっぱり、怖い。戻りたい。でも、今日くらい。


教室に入ると、クラス中の生徒が私を見た。


「うわ、ゴミが来た。」


「まだ生きてたんだ。」


「俺、あいつの隣なんだよな、席変わろうぜ。」


怖い。こうゆう時は、深呼吸。私の机の上には、瓶に花が刺さっていた。嫌がらせか。やっぱり、怖い。けど、それよりもムカつく!

私はその瓶を、窓から遠くへと投げた。

もちろん、クラスメート全員驚く。


「こんなことしないでくれる。私はあんた達と違って弱くなんてないから。」


チャイムがなった。みんなが私の方を見ていた。


『これで良かったんだ。』


朝礼が終わったあと、私の前に座っている子が話しかけてくれた。


「かっこいいね。」


初めて言われた。嬉しかった。初めの一歩にしたら、いい方だ。また、頑張って強くなろう。





真由は夏休みが終わってから、1回も潤の家に来なかった。あんなこと、言っちゃったあとだから、気まづいし。まあ、私の言葉なんて、通じてないだろうけど。でもあの子、いつも私が話している言葉を理解しているようにしている。やっぱり変な奴だな。




夏休みぶりだ。その後、友達がたくさん出来て、時間がなかったから。冬休みになっちゃった。あいつ、まだいるかな。多分、あいつに話しかけていた私は変な奴だと思っていただろうな。でも、あいつが言っていた言葉が何となくわかる気がして、その言葉に私は救われた。私は強くなれたかな?


やっと潤の家に着いた。中に入ろう。



この足音、あの子ね。帰ってきたんだ。


「おかえり、真由!」



「ただいま、猫ちゃん!」


そう言って私は、黒猫を抱いた。











はじめまして、三葉普です。

初めて書いた物語なので、文の構成がおかしな所もあるかもしれません。

努力しました。面白いかどうかも分かりません。ですが、読んでいただいて、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ