厄介ごとに巻き込まれた話
この話を読むときは頭を空っぽにして現実から離れて読んでね☆
まさかこの世界がBLなだけでなくファンタジーでもあったとは・・・混ぜるな危険って言葉を知らないのか。
そんな新事実を知ってしまったわけだがどうこうすることもできない。なにせ俺はあくまでも巻き込まれたちょっと記憶を消せない不具合がある一般人なのだから。
・・・自分で言っといてなんだけど記憶を消せないというのが不安を煽る。変な設定盛り込まれてないよね俺?
そんな不安はともかく記憶を消せないならしかたないと桜井と並んで詳しい事情を聞くことになった。多少なりとも関わってしまったのだからいっそのこと知っていたほうが良いという判断らしい。
そして聞かされたのは百年も前にあった戦いの話。
とある野望を抱いたゼミウルという悪魔とそれを阻止しようとする天使たちの戦い。
その中で戦いを終わらせる鍵となった大天使。先頭に立って悪魔と戦い最後には力と引き替えに大天使はその悪魔を封じた。
そして力を消耗した大天使が魂の休息のために人として生まれ落ちたのが桜井だということ。
・・・なんか想像以上に壮大な話だった。正直話を正確に理解できている気がしない。
百年前とか言われてもいまいちピンとこないしね。おじいちゃんおばあちゃんですら誕生しているかあやしい。
「それはわかったけどさあ、なんで今更正体明かしたのさ。 別に護衛するだけならこれまでと同じ距離で良かったんじゃない?」
「一部否定。 理由、できた」
「その理由っていうのは・・・」
「悪魔の驚異が迫ってるからだ」
「悪魔ってその変な野望を持ってた悪魔か? だけどそいつは封印されてるんだろ?」
「それが最近封印が解かれたみたいなんだよねー」
え、それまずくない?というかなんでちょっと曖昧なん?
「それってなにさ、桜井に負けたからリベンジしに来るとかかい?」
「それもあるだろうが・・・一番の狙いは大天使の力だろう」
「力って、俺にそんなものないぞ?」
「いいや、ある。その身体に宿っていなくてもな」
サイコパスが指差したのは桜井の胸元。はっ、とした桜井が胸元から取り出したのは・・・お守り?
桜井が中身を開けると中から宝石みたいな石が出てきた。
「そう、それだ。 それはお前が昔持っていた力の結晶。 悪魔はそれを狙っている」
「俺、これを握って生まれてきたって。 ばあちゃんにはなにか意味があるものだって言われてきたけど・・・まさか」
「そんなRPG見たことある」
「いやまあそれっぽいけどよ・・・」
俺の言葉は真以外にはスルーされて話は続く。
「奴は狡猾で執念深い。 おそらく聖が生まれるまでの百年密かに力を溜めていたに違いない」
「ま、そういうわけで予定を変更して直接護衛するはめになっちまったってわけだ」
「おい真・・・貴様、聖を護ることに不満でもあるのか!?」
「ハッ、ほんと馬鹿だなテメェ。 万事問題ねえのが一番に決まってんだろうが」
サイコパスと真が仲悪いな。いや俺もサイコパス嫌いだけども。
と、空気がギシリ、と音を立てたように錯覚したところでチャイムが鳴った。そういうば忘れてたけど学校だったね!やっべ、あと十分しかないわ。
さっきまでのギスギスはどこへやら。シリアスな空気は吹き飛び各々慌てて教室に向かうのだった。
・・・だけど教室に向かうみんなの顔はどこか固くて、これからに不安を抱かざる得なかったのだった。
だけどそんな不安とは裏腹にその日から一ヶ月、封印を破った悪魔は現れることもなく平穏な日々が続いている。
いっそのことこのまま悪魔行方不明になんないかな・・・。再登場は俺が寿命で死んだあとにしてほしい。
それはともかくあの日から俺たちは集まることが多くなった。理由はもちろん桜井の護衛ーーついでに俺もーーのためだ。
相手がいつ仕掛けてくるかわからないため桜井を一人にするようなことはできない。それに加えて事情を知ってしまい人質になりうる俺を放置することもできないための措置だ、と真が言っていた。
もちろん対外的には最近仲良くなって遊び回ってる、といったものらしいけど。
でも実際には遊び回ることなんてできず大抵空き教室で駄弁るか図書室で過ごすか、外に行っても固まって動いてばかり。止めとばかりに家に帰る時も真が家の前までついてくるのだ。
まあそれに関しては昔からちょいちょいあるから不信には思われないだろう。
・・・しかしずっとこのままだと正直つらい。
「ねえ、いつまでこんな生活しなきゃならんのさ」
今日も今日とて空き教室で待機。安全のためとはいえ気が滅入る。
元々友人が少なくて遊び回ることもあまりない俺はまだ良いほうだけど結構街で遊んだりしてたらしい桜井には辛いのではないか。
「・・・ま、たしかにな。我が儘言う気はないが正直飽きてきた」
「そうは言ってもだな・・・」
俺はともかく愛しの桜井にも言われてしまいサイコパスも困り顔だ。まさか悪魔がここまで動きが無いとは思ってなかったんだろう。
「でもでも、だからって不用意に動いたりしたらそれこそ相手の思うツボじゃないかなぁ?」
「同意。 現状、待機安全」
「つってもよ、ずっとこのままってのは現実的じゃねえだろ。 どうにかしねえと・・・」
うーん、とみんなで頭を悩ませる。一度でも悪魔が襲撃すれば相手の方針がわかって対処しやすくなるらしいのだが・・・まさか敵の襲撃を待ち望む日がくるとは思わなかった。
思えばそれがフラグだったのだろうか。
「・・・っ!?」
最初に感じたのは背筋を走り抜ける悪寒だった。
「これは・・・っ!」
「結界・・・全員、準備」
天使たちが武器を取り出して警戒を始め、俺と桜井は部屋の中央に移動した。
「なにさ、このへんなの。 気持ち悪い・・・」
「結界ってのは一帯を世界からずらす術だ。 人間は俺たちのようにその影響で不調が生じてるんだろう」
「どうりで。 つか他に学校に残ってたやつらは? 大丈夫なのか?」
「・・・無事。 対象、我等のみ」
どうやら悪魔は無関係な人を巻き込む気はないらしい。よかった、知らない間に犠牲になる人はいなかったんだ。
ん?その理屈でいうと俺別行動してたほうが安全だったのでは?完全に巻き込まれちゃってますけど。
気づきたくなかったこと気づいてしまい気を重くしている間にも話は進む。
「他のことを気にしないでいいのは良いことだけどこれからどうするんだ?」
「・・・屋上」
「そうだねぇ。 少なくともここにいるよりはいいかもよー?」
「問題はほぼ確実にクソ野郎が待ち構えてるやがるってことだな・・・。 ちっ、おい和樹、お前はどうすんだ」
えーと、正直避難してえ。でもこの状況で単独行動は死亡フラグだろうなー・・・。
「あー、えー・・・ここで待ってるわけにもいかないでしょ。 いっしょに行くかな」
そんなわけで屋上に向かうことになった。
「うわっ、気持ち悪い空だこと」
屋上から見える空は赤と紫が中途半端に混ざったような気味の悪い色をしている。
「ちっ、完全に相手のテリトリーってわけかよ」
「その通り。 よくわかっているではないか」
案の定待ち構えられていたらしい。
現れたのは悪魔みたいな羽を生やしたなんか貴族っぽい男。こいつがゼミウル?とかいうやつなのだろうか。
その後ろには同じく悪魔の羽を生やした優男とムキムキのマッチョマンがいる。たぶん部下かなにかだろう。
・・・しかし悪魔に見えない。微妙なコスプレしてる人にしか見えない。だって悪魔っぽい要素ないし。まあその辺はこっちの天使にも言えることだけど。
まったく、羽生やしただけで天使だの悪魔だのいうのやめればいいのに。異形フェチの人が悲しんでしまう。
「哀れな天使ども、大人しくピュアクリスタルを差し出せば見逃してやらんこともないぞ?」
ぴゅあ・・・なにて?え、そんな名前なのあれ。なにそのネーミングセンス。もうちょっとなんとかならんかったの?
「渡すはずないよねぇ。 どう悪用されるかわかったもんじゃないしー?」
「同意。 許可、不可能」
真や生徒会長が武器を突きつけ拒否を叩きつける。まあ当然である。
そんな中、桜井が叫んだ。
「答えろゼミウル! なんで力を求めるんだ!?」
「ふん、どうやら力だけでなくかつての記憶すらも忘れたようだな。 いいだろう教えてやるとも」
ゼミウルが過剰ともいえる動作と共に大きく腕を広げた。
「我が願いはかつてより変わりはしない! 歪んだ世界を改変してまで求めし正常な世界! この世界を本来あるべき姿に戻すためだとも!」
悪魔が望む正常な世界?なんというか嘘くさいというか碌なもんじゃない気がする。つか改変ってその時点で正常じゃない件。
「そう、それは男と男が求め合う理想郷を創ること! ・・・かつては邪魔をされたが今度はそうはいかんぞ?」
・・・・・・この世界の惨状お前のせいかよ!
話のゴールは決めたので完結はできると思います。