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自分ができることをしたい話

めっちゃ時間かかりましたが更新できました。つかれみ。

「カズ? カズ! ちょっと、起きてるの? 立ったまま寝てるの!?」

「えっ? あ、タキラごめん」


ボーッとしていた。せっかく遊びに来ているのにもったいない。

しかし今日はどうしても気分が乗らない。

これも桜井や真が心配ばかりかけるからだろう。


先日、やけに天使たちが暗いから話を聞いてみたのだ。

やたら話すことを渋られたがしつこく聞いたらどうもあの、ピュアクリスタル?だっけか、それを奪われてしまったらしい。普通に一大事である。

一応相手の悪魔も一人やっつけたそうだけど防衛目標を奪われたとあっては分が悪いのではないだろうか。というかある意味敗北ではなかろうか。

みんなは心配するなと言っていたがそれは無理というものである。というか普通に心配だわそんなん。負けたりしないか不安だし、負けたらこの世界本格的にBL路線になるだろうし。

そうなったら滅亡待ったなし。ただでさえ俺と女性に厳しい世界なのにもっとひどくなってしまう。

そういうわけもあって今日はため息が異様に多い。幸せがクラウチングスタートからの流れるようなダッシュで逃げていく感じだ。


そんな様子の俺のせいなのかタキラも妙に落ち着きがない。

さっきから俺のことをチラチラ見ては何かを言いかけてやっぱりやめる、というのを繰り返している。

えーと、挙動不審の原因俺っぽいから聞きづらいけどとりあえず聞いてみよう。


「た、タキラ? さっきからタキラもどうしたの?」

「へぅ!? う、ううん! 何でもないわ!」


その反応はあるでしょ。

・・・なんだろう今日は?お互いキョドってんねえ。


そんな感じでそのままの空気のまま時は流れお昼過ぎ。もうずっとこのままなんだろうか。つらい。


「か、カズ! ちょちょちょ、ちょっといいかしら!?」


む! ついにタキラが覚悟かなにかを決めたのか?

とりあえずまずは深呼吸を推奨したい。

だけどもタキラは深呼吸もせずに真っ赤な顔のままどこからともなく取り出した箱を開けた。


「こ、これ! ぷ、ぷ、ぷ、プレゼントってやつよ!」


まるで結婚指輪でも入ってそうなデザインの箱の中にはキラリと光る宝石。不思議な光を放つそれに思わず眼を奪われた。


「そのね、ほら・・・私たちこうやって会うようになってけっこう経つじゃない? だからそのね、そろそろ・・・つ、次のステップに・・・とか? えと、具体的には・・・お、お付き合いとか・・・どうかしら・・・とか・・・」


ぶっちゃけるとこの時タキラの話は耳に入っていなかった。

何故ならタキラが取り出した宝石。それに俺は見覚えがあったからだ。前にちら、と見たことがある。

というか件のピュアクリスタルだこれ!


「あ、ちょ、これ・・・た、タキラ? これどうしたのさ!?」

「あっそれね、きれいでしょ! 昨日久しぶりにくそ上司のとこ行ったんだけどいつも通りあからさまに邪険にされたのよ。 いくら私が良い女でもいい加減イラッとしたから仕返しがてら嫌がらせのひとつでもしてやろうと思って・・・なんか大切そうに置いてあった宝石持ってきちゃった♪」

「ええ・・・」

「大丈夫よダミー置いたし簡単にバレたりしないわ! それに私悪魔なんだからこのくらいの仕返しくらいフツーよフツー!」


なんかすごい報・連・相の大切さが身に染みた。もし、ゼミウルがちゃんと彼女に話をしていたらこうはならなかっただろうに。まさかかの大悪魔も普段からの嫌がらせがこんな結果に繋がったとは夢にも思うまい。

しかしこれはチャンスではないだろうか。


「そ、それでどうかしら・・・?」


俺は何もできないと諦めていた。だけど、もしかしたらなにかできるかもしれない。俺一人では無理でもタキラの力を借りればきっと。

結局他人頼りだなんてどうしようもなくカッコ悪いけど、それでもなにもしないよりは・・・!

そう決めた俺はタキラの手を取って頭を下げた。


「タキラ・・・お願い、力を貸して」

「・・・へ?」

「今俺の友達が大変なの。 悪魔のタキラに頼むのは筋違いだけど俺、友達の為になにかしたくって・・・お願い!」

「え? え? い、いいけど・・・その、返事・・・」

「ありがとう! ほんと俺、タキラに出会えて良かった!」


思わずぎゅっとタキラの手を握りしめる。あ、やわこい。ずっとにぎにぎしてたい。

さて、それは置いておいて桜井や真たちのためにやれることをやってみますかね!

そういやタキラなんか言ってた気がするけど・・・うーん、あとで聞いておこう。





「真、彰、前へ」

「守りは僕たちがやるからさー。 あいつどついちゃってよー!」

「任せな! ぶちのめしてやるよ!」

「油断して逆にぶちのめされないようにな」

「二人とも・・・気をつけて!」


桜井聖たち天使チームはというと夕焼けに照らされた学校で悪魔と激しい戦いを繰り広げていた。

それぞれが剣で、槍で、弓で、魔法で使い魔を屠っていくが数が多い。倒した先から新手が来て休む暇もなかった。

それでももし守るだけならば彼らは悪魔の攻勢を凌げるだろう。彼らと悪魔の使い魔との間にはそれだけの力の差がある。

しかしピュアクリスタルが奪われている以上天使たちは桜井を守りながらも同時に攻めねばならない。

そこで桜井の防衛を天辺昴と守部玲に任せ、狩野真と相沢彰が前に出た。危険だがそうしなければ勝機は見えない。

だがただでさえ数で劣る現状、二人だけでは攻めきることはできていなかった。


「・・・チッ」

「おい、まずいんじゃねえのかこいつはよ!?」

「そんなことわかっている!」


真にいらただしげに彰が叫び返す。

二人の手は止まらずに使い魔を屠り続けているが敵の数が多すぎた。戦いながらも後退を余儀なくされ、攻勢もむなしく元の場所まで押し戻される。

どうにもならない状況に聖は守られることしかできない自分を呪った。かつて大天使だったのだとしても記憶と力を封じた聖にはどうすることもできない。それがとてつもなく悔しくて手のひらから血がにじむほど拳を握りしめた。

そんな彼らを見てゼミウルは嗤う。


「クク、無駄な足掻きだ。 もはや貴様らに勝ち目はないぞ? そうだ、今すぐ大人しくすべてを差し出すのならばの私の可愛い部下を痛めつけたことを許してやってもよいぞ?」

「黙れ! たとえ勝ち目が薄くてもしても貴様には屈しない!」

「相変わらず愚かなことよ・・・」


その言葉を聞いたゼミウルは更なる攻撃を指示すべく手を掲げる。それに対して天使たちは武器を構え直す。

緊張が最大限まで高まったその時。


『あーあー、マイクテスマイクテス。 皆さん聞こえてますかぁ? 遠くの人聞こえますかー?』


突然場違いな声が響いたのだった。





タキラに連れられて来たのはまたもや結界で覆われていた学校。なんで学校が主戦場になってるんですかね?学校が何をしたというんだ。

とりあえず真や桜井たちから拡声器で呼び掛けると悪魔たちの注意がこちらに向いた。


『えー、そこの同性愛至上主義者さん。 天使たちにも言えることだけどまず第一にここは人間の世界であることを念頭に置いて行動してくれませんかー? 迷惑でーす! 可能な限り話し合いで解決しなさーい!」


更に呼びかけた途端に話し合いするための脳が搭載されてなさそうなモブ悪魔が襲いかかってきたけどそばにいたタキラが鎌ではたき落としてくれた。安心である。


「ほう、そこにいるのは私の部下ではなかったかな? ふむ、やはり女は信用できん。 隙あらば裏切るからな」

「自分で心置きなく裏切れるだけの下地作っといてよくそんな寝言ほざけるわね。 長いこと封印されてたんだしその間に脳にクモの巣でも張ったんじゃないの?」


タキラちゃん口悪ぅい!でも散々冷遇されてたんだししょうがないね。あとゼミウルは裏切られるの残当だからね?


「覚悟しなさい。 あんたなんてボッコボコのギッタンギッタンにしてやるんだからね!」

『表現古くない? あと話し合いって言ってるのに積極的に喧嘩売らんといて』

「ふ、女一人がどう動こうがすでに決まった勝負は覆せぬよ」

『あ、無視する方向性? 悲しい。 ・・・ところでどんな感じに?』

「教えてやるとも! このクリスタルに秘められた力を使えば理想の世界を創ることができる! いや、それどころか私が新たな神となることも・・・!」

『そういうのは回収するんね・・・てかどっかのゲームで見た設定ですねえ。 テンプレ乙。 そんな貴方にワンポイントアドバイスだよ。 まずイキる前に持ち物チェックは欠かさずに』

「なにを・・・、っ!」


なにかに気づいた様子のゼミウルは懐からピュアクリスタル(仮)を取り出し食い入るように見つめて数秒。余裕たっぷりだった顔を歪めてピュアクリスタル(仮)を握り潰した。もったいない。


「小僧・・・何をした?」

『(タキラが)すり替えておいたのさ! 一回言ってみたかった! すり替えておいたのさ!』


思わず二回言った。


『ふふん、そんなわけでぇ本物のピュアクリスタルはこちらに・・・』


一度家に帰った時に持ってきたカバンに手を突っ込んで漁る。漁る。漁る。・・・漁る。

・・・・・・。


『えー、少々忘れ物があったけどとにかく、件のピュアクリスタルはこちらの手にありまーす! 大人しく交渉の席についてくださーい!』


そう呼び掛けているとゼミウルは腕組みをしたままこちらに飛んできた。交渉には応じてくれるらしい。でも不敵な笑みを浮かべていて間違っても諦めることはなさそうである。

それはともかく声が届く場所まで来てくれたので拡声器はもういいや。置いておこう。


「交渉などしなくとも私は目当ての物を手にすることができるだけの力がある。 それを理解しての発言かね?」

「実力行使とな? 紳士気取りなのにスマートじゃないねえ」

「言うではないか。 よかろう、脆弱な人間が勇気を出したのだ。 交渉に応じてやろうではないか」


よーし、ひとまずいきなりぶん殴られたりはしないね。プライド高いだろうし悪魔的にも一度口にしたことを反故にはするめえ。第一段階はオッケーだ。


「それでは交渉というがそちらの要求はなんだね?」


・・・なにも考えてなかった。あちゃー失敗失敗。

とはいえ真たちのためにも少しは時間を稼がなくてはね。こういうときの時間っていうのは何よりも価値があるものだから。


「とりあえず実家にかえれぇ」

「ふははっ! それは無理な相談というものだ。 それよりも貴様が降伏するというのはどうだ? 今なら望むものをくれてやってもいいぞ? 自分のものにしたい人間がいるならばそやつでもいいぞ?」

「それ絶対同性前提でしょ。 異性愛者なんでお断りだねえ。 具体例あげると恋人にするならタキラみたいな可愛い娘がいいんだけれども」

「えっ!? ほ、ほんとなのカズ? さっきの告白流されちゃったしてっきり駄目なのかなって・・・」

「え? ・・・・・・あっ」


うわー!俺のバカバカ!なんで聞き流しちゃうんだそういうのー!

というかクリスタル入っていた箱といいシチュエーションといい思いっきりこ、こ、こ、告白じゃないかよ!なぜに気づかなかったし。


「ご、ごめんねえ? あ、あの時は驚きが強くて・・・」

「ううん、いいのよ。 言ったの突然だったししかたないわ」

「その、答えだけど嫌じゃないっていうか、うれしいっていうか・・・」

「そ、それって・・・!」


と、そこでパンパンと手を叩く音。

水を差された。


「・・・話は済んだかね?」

「あ、ごめんなさいね」


人前でやることじゃなかった。いやあいつ人じゃねえけれども。

恥ずかしいことは恥ずかしいので誤魔化すように咳ばらいしてゼミウルに向き直る。そんな俺とタキラを見てゼミウルは深いため息を吐いた。


「愚かな・・・男と女の愛だと? その感情は虚構でしかないというのに」

「その思考回路が限りなくキモい」


決めつけはよくないと思うんですよ。あとお前それ人のこと言えねえかんね?


「最後通告だ。 素直にピュアクリスタルを渡せ。 そうすれば無事に帰してやる。 それどころか望むのならこの私の愛人にしてやるぞ? そちらの裏切り者も悪いようにはせん」

「嫌です。 異性愛者だっつってるでしょ耳掃除してる? あとタキラに関しても信用できないからNGでーすよ」

「ふん、生意気な小僧だ。 ・・・だが嫌いではない。 少し私好みに教育してやるとしよう」

「むしろ嫌ってほし・・・のひゃっ!?」

「カズ!? きゃあっ!?」


ゼミウルが腕を振ると後ろに控えていた触手が一斉に襲ってきて俺達を拘束した。つーか、にゅるにゅるしてめっさ気持ち悪い!あっ、こらエロイ感じに巻き付いてくるんじゃない!


「和樹ッ!」


真の声が聞こえたが触手にぐるぐる巻きにされ返事することは出来ず、俺は触手に飲み込まれどこか深くへと沈んでいったのだった

後編に続く!

長くはならないです。(願望)

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