第十三節 女の戦い。それは修羅場
―― 翌日
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
…………どうするんだこの沈黙。かれこれ10分ぐらいずっと無言なんですけど
放課後。俺の家に集まった天月、草凪、アリス、ガブリエル…先輩、姫島先輩、せりか先生の六人。
もちろん理由は昨日の告白の件だが……みんな凄いピリついた空気を出して黙っている。
大丈夫か、この話し合い……
そもそも話し合いが始まる前から何処に座るのかで揉めて席配置が…俺の右側にはガブリエル、左側にはアリス。テーブルを挟んで向かい側は、右からせりか先生、草凪、天月、姫島先輩となっている。
「……一応聞いておきますけど、どうして皆さんは榊君に告白したのですか?」
長い沈黙の中ようやく天月が口を開く。
だが第一声それじゃ無い方が良かったな。それとこちらを睨みながら言わないでください。
「私は……衝動的というか……体が勝手にというか……」
「長い間ずっと待ち焦がれていたんですよ。告白するなと言う方が無理があると思うんですけど」
「そうですね。修斗さんは私を愛していて私も修斗さんを愛していているからかしらですからね」
「修斗君は私と付き合う運命ですから」
「研修生とは言え教師として本来ならば駄目なんですけど、どうしても諦めきれなくて」
「……そうですか」
何だこの空気、更に悪化したぞ。
というか何だか言って天月が一番殺気放ってるな、一番怖いし。
「昨日転校してきたニューソルディアさんは仕方ないとして、他の人達は私が榊君に告白したのは知っていますよね? なのにどうしてですか?」
凄い挑発的だな。天月ってこういう人なのか?
「このタイミングだからですよ‼ 貴女に榊さんを奪われたくありません‼」
「同じく」
「い、一応同じく……」
「お、同じく……」
「修斗さんは私のものなので…」
「……だったら、さっさと告白すれば良かったじゃないですか。私がしたからするって、思いが弱い証拠では?」
あー、もう嫌だな、この超威圧感ある口論。と言うか天月の奴凄いな世界の大女優や生徒会長、一番の親友だと言うのに凄い攻撃的だ。
「そ、そんな事は無いぞ! 私だって美香に負けないぐらい彼を愛している!」
「おかしなこと言わないでください‼ 一番最初に会った私が誰よりも早く、そして長く愛していているんですから私が一番ですよ‼」
「私が一番に決まってます。愛情は長さより質です」
「ふふ、皆さん寝言は寝てから言ってください。私と修斗さんは相思相愛なのですから皆さんきっぱりと諦めてください。大丈夫ですよ私と修斗さんは絶対に幸せになります。皆さんも修斗さん以外の良い人と出逢える事を祈っていますから」
「えっと…私の方が、その榊君を皆さんより愛してます…」
「…………」
嬉しいようで嬉しくないな、この口論。
「……はぁ……いくら言い争っても無駄ですね。榊君」
「はい!」
「榊君の答えを聞かせてください」
遂にこの時が来たか。
凄いみんな血走った目で見ている。
俺は本当にこんな答えでいいんだろうか? 天月からラブレターを貰ったあの時からずっと悩んだ。悩んで悩んで辿り着いた答えがこんなで…いや、いいんだ。嫌われたって構わないから、だから俺はこの答えに辿り着いたんだ。
だが、その前に、
「…もし、俺がこの中で自分以外の人と付き合うって言ったらどうする?」
「他の女を恨み尽くす」
「……もの凄く凹む」
「その女を殺して、修斗を監禁・・・じゃなくて、榊さんと一緒に暮らして死にます‼」
「修斗君と心中かしら?」
「修斗さんを拉致して、駆け落ちですかね。ふふ」
「…泣きます。浪人します」
何だ、このクレイジー集団は‼ しかも三人ほど物騒な言葉が出てきたんだが。
アリスとガブリエルと姫島先輩が何てバットエンドどころかデッドエンドだ。
草凪は……可愛らしいが。せりか先生、さり気なく凄いこと言ってますけど。
でもこの答えを聞いて俺の答えは、間違ってないとわかった。
「俺が出した答えは……」
◆◇◆
「なあ、修。何て答えたんだよ」
「何がだ?」
昨日の修羅場な話し合いから翌朝。俺は隆也によって強制的にサッカー部の朝練に付き合わされクラブ棟を目指していた。
「何がって、天月たちの告白の件だよ」
「ああ、それは…ん? 天月たち? おい隆也、何で複数何だ?」
「そりゃあ、メールで信也が…あ」
「よし、信也に会ったら飛び膝蹴りを…」
「手加減してやれよ‼」
本当にあいつは、俺のプライバシーを侵害しやがって…まあ、俺の家にあんな美女、美少女達が集まったんだ。信也の耳にも嫌でも入るか。
だからと言って許す気など全くないが…ん?
「おい、隆也そっちは違うぞ。クラブ棟はこっちだ」
「ん? ああ、そうか修は知らなかったんだな。今クラブ棟は改修工事中だ」
「改修工事中? そんなの聞いてないぞ」
「前々から改修工事するのは決まってたんだけど業者の方でトラブルがあって一昨日辺りから急遽始まったんだよ」
なるほど、そんな事情があったとはな。
俺は隆也から今日の練習のことを聞きながら。昨日の事について少し思い出す。
恐らく今日は少し過ごしにくいかもな。そんなことを思いつつサッカーコートに足を運んで行く。
おかしい。うん、おかしいぞ。
朝、少し過ごしにくいなとか思ってたけど…そんなの生ぬるかった。因みに今は昼休み楽しい時間の筈なのだが
「修斗さん、一緒にお昼食べましょう」
おかしな原因の一人……ガブリエルが老若男女問わず魅了する満面の笑みで両手に弁当をぶら下げながら 我がクラスへとやって来る。世界をまたにかける大女優なのにただの凡人である俺に堂々とやって来るのも凄いよね。
ガブリエルのファンが居たらまず襲いかかってくるな、嫉妬の炎を燃やしながら
そしてそのガブリエルの後ろには天月と姫島先輩、せりか先生も居る。そして前の席に座る草凪とアリスも俺の席へ歩み寄ってくる。その五人の手にも、弁当が二つ。
何故か、六人は昼休みにやって来て、俺と共に昼休みを過ごそうとしている。いや、おかしい。普通におかしい。昨日の俺の答えを聞いてなかったのかな?
「修斗さんの為に、愛情を込めて作りました。ちょっと焦げてしまいましたが残さず食べてください」
ガブリエル。これは焦げたとかのレベルじゃないぞ。お弁当の中身が紫色の物体になってるとか料理下手を越えてるぞ。ほら他のみんなもドン引きしてるし。じゃなくて‼
「いや、ちょっと待って。質問していいか?」
「はいなんでしょう?」
「どうして俺に関わる。俺はお前たちを振った(・・・)はずなんだが」
そう、俺は美女、美少女達の告白を蹴ったのだ。だと言うのに何故?
「だってそれは、修斗さんが私達の誰かを選んで選ばれなかった人のことを思ってですよね」
え? いや、何言ってんのガブリエル?
「ですから、決めたんです。最初は全員友達からスタートして、その上で修斗さんに決めて貰うと。ですからこれから私を含め皆さん修斗さんにアプローチするので覚悟してくださいね」
ウィンクするガブリエルにクラスにいた半数が気絶してしまう。
ああ、どうしてこうなったのかな? そう言う意味で言った訳じゃないってガブリエル、お前ならわかってるんだろ。
俺は内心ため息をつきながらガブリエルのお弁当を頂く。もちろん他の五人からも…
「わ、私も皆に負けずに作ってきた。さ、さあ!残さず食え!」
それは嬉しいけど、でもちょっと量が多いな。レタス弁当箱からはみ出してるし。胃からも溢れそう。
「今回はシンプルなサンドイッチにしてみました! それともお弁当じゃなくて私自身を味わってみる?」
おお、アリス(白)から急激にアリス(黒)に一気に変わったな、あと絶対に味合わないからな天月達が怖いからな・・・だから睨むのやめてくれません。
「私は少し平凡な感じになってしまったわ。ごめんね」
姫島先輩、平凡って何ですか? 何か見たことある黒いのがあるんですけど。これあれだよな?三大珍味の?
「みんな、個性を求め過ぎですね。お弁当は普通が一番何です。はい、榊君、どうぞ」
おお……流石天月。ザ・お弁当だな。でも何か嬉しくはなれない。
「私は…その他の人の量もあるので少し少なめで作ってきました。無理しないで食べてくださいね」
せりか先生…うん、この中でダントツで好感度は上だよ。俺の癒しはせりか先生だな
でも…
「……あのぉ、全部食わなきゃ駄目ですか?」
「駄目」
「駄目だ‼」
「駄目です‼」
「駄目ね」
「駄目ですよ」
「無理しないで…残しても構いませんから」
「……ですよねー」
本当に優しいなせりか先生。天使だ、いや女神か。
取り敢えず俺は懐から胃薬を…あれ何か箱が軽い…
俺はまだ知らなかった。三日後に俺達が大事件に巻き込まれ、俺の秘密を暴かれるとは知らずに。




