第十一節 正義との邂逅
ようやく帰路につくことができたが、まさかの告白五連続。胃が張り裂けそうでやばい。
取り敢えず薬局によって胃薬を買って早く寝よう。と、思ったんだがな。まだ誰か俺に用があるらしい。
「そこに隠れている奴、出てこい」
俺は靴箱からローファーを取り出しながら、物陰に隠れている人物に問いかける。
すると、柱の陰から一人の少年が出てくる。
「やあ、こうしてちゃんと話すのは初めてだね。榊修斗君」
「御託はいい。俺に一体何の用だ。どうでもいい話だったら帰らせてもらうぞ」
物陰から出えてきたのは、黒髪を綺麗に短く切りそろえたイケメン。ラノベ主人公のような存在で天月美香の幼なじみでもある榊原正輝だった。
「あはは、そんな釣れない事言わないで。まあ、聞きたいことがあってね」
「聞きたいこと?」
「そう、美香の告白についてどう答えるつもりなのかな?」
こいつも草凪と一緒か。どうしてこんなにも人の恋愛事情に付け込もうとするんだろうな。
シューズを靴箱にしまいながら、俺はため息混じりに答える。
「それをお前に答える義理はないと思うんだが」
「確かにそうだね。でも僕は美香の幼なじみだ。彼女を君は幸せにできるかい?」
こいつの言い分は最もだ。だがな、幼なじみだからと言って「幸せにできるか」何て質問しない。こいつは天月の父親じゃないんだからな。
「そんなのわかるかよ。じゃあ逆に聞くがお前は天月を幸せにできるのか?」
「できるよ。僕ならできる。絶対にね」
そうか、そういうことか。つまりこいつは…
「お前は、俺に天月の告白を断って欲しいだな」
「…どうしてそんな結論に至るのかな」
「簡単だ。お前は天月に恋をしている。つまり好きなんだろう天月のこと」
俺の言葉に榊原は固まった。まあ、図星なんだろう。
だが安心しろ正義。今日五回連続告白されたが、俺の中で答えは決まっている。
この答えが間違っているのか、それとも正解なのか、俺にはわからない。でもこの答えは、俺にとっての最善だ。
俺は固まった正義をそのままに帰路につく。
「ま、待ってくれ‼ まだ話は終わってない‼」
後ろで正義が叫ぶが、俺は無視して歩き続ける。
榊原正輝。俺はお前が苦手だ。どうしてお前が嫌いなのか、理由はよくわからない。
だけど、これだけはわかる。俺とお前はわかり合えない。それだけは、何故かわかるんだ。
Side out 榊 修斗
Side 榊原 正輝
僕は、朝のサッカーの練習後に部活仲間から興奮気味に話された。僕は、昨日のゲームの話かと思ったが違った。
「正輝知ってるか‼ 学院のアイドル天月美香が一年B組の榊修斗に告白したって‼」
「え…」
僕はそれを聞いた瞬間、頭をハンマーで殴られたような感じがした。
誰が、誰に告白した? 美香が、あの美香が告白した。誰に? 榊修斗に。どうして? 榊修斗、彼については知っている。銀髪紅目の少年で色んな部活に助っ人として出ている。
僕は、頭の中が真っ白になり、友達の話何て耳に入ってこなかった。
「おい馬鹿。そんな事、正輝は既に知ってるだろう」
「そうだよな。何せ幼なじみだもんな。っておい‼ 正輝、どこ行くんだよ‼」
僕は、いつの間にか走り出していた。頭の中では、走馬灯の様に美香との思い出がぐるぐると廻っていた。
どうして、どうして、どうしてこんなにも心が痛いんだ‼ 何かが、何か大事なものが砕けて亡くなってしまった感覚。
今までに感じたことのない痛みが、余計に僕を狂わせた。
気がつけば僕は、美香の教室前に立っていた。僕は教室のドアを開けて中を見ると、美香の周りに沢山の生徒が集まり、質問責めに合っていた。
僕は、話しかけようとした時、運悪くチャイムが鳴ってしまい渋々諦めた。
休憩時間になって、僕はもう一度美香の所に行こうとした。
「おい正輝‼ 隣のクラスにロシアから金髪美少女が転校して来たんだってよ‼」
また部活仲間が話しかけて来たが、今はそんなどころではない。一言謝って美香の所に行こうとしたが、次の言葉で僕は足を止めてしまう。
「何と‼ その転校、転校早々に榊修斗に告白したらしいぜ」
「え…」
どういうことだ。何で転校生が榊修斗に告白を…もう、訳が分からなかった。
僕は、美香に話を聞こうにも聞きに行けずに気がつけば放課後になっていた。
練習も身が入らず、監督やコーチ、チームメイトにも心配をかけてしまった。
練習が終わり、早く帰って美香に事情を聞こうとした。L○NEで連絡しても既読も返信が来なかった。一応美香の妹にも連絡しよとしたが辞めた。
何故なら、生徒玄関に榊修斗が居たからだ。僕直ぐに柱の物陰に隠れて様子を伺おうとした。
「そこに隠れている奴、出てこい」
彼は、僕が居ることに気が付いていたようだ。僕は物陰から出てきてできるだけ笑顔で話しかける。
「やあ、こうしてちゃんと話すのは初めてだね。榊修斗君」
「御託はいい。俺に一体何の用だ。どうでもいい話だったら帰らせてもらうぞ」
実際に彼と話したことはなかった。でも何故か、とても冷たく鋭い剣の様に感じた。
それでもここで引き下がるわけにはいかない。僕は笑いながら会話を続ける。
「あはは、そんな釣れない事言わないで。まあ、聞きたいことがあってね」
「聞きたいこと?」
「そう、美香の告白についてどう答えるつもりなのかな?」
僕の質問に榊君は少し驚いた表情をした。僕だって内心そうだ。何でこんな質問をしたんだ?
彼はため息混じりに、面倒くさそうに答えた。僕はそれに対して少し苛立った。ん? どうして僕は、苛立っているんだ?
「それをお前に答える義理はないと思うんだが」
「確かにそうだね。でも僕は美香の幼なじみだ。彼女を君は幸せにできるかい?」
どうして、僕はこんな質問をするんだ⁉
「そんなのわかるかよ。じゃあ逆に聞くがお前は天月を幸せにできるのか?」
「できるよ。僕ならできる。絶対にね」
何で、こんな答えが出る。何で僕はこんなににも焦っているんだ。
彼と目が合う。赤い、紅い瞳は、魔性を秘めたルビーの様に妖しく僕を見通すよに思えた。
「お前は、俺に天月の告白を断って欲しいだな」
違う‼ 僕は…そんな、つもり…あれ? どうして僕は安心しているんだ。彼が振られる事を僕は望んでいる⁉
「…どうしてそんな結論に至るのかな」
教えてくれ‼ この気持ちは一体何だ⁉ でも、彼は僕の心を見透かす様に簡単にこの気持ちの答えをくれた。
「簡単だ。お前は天月に恋をしている。つまり好きなんだろう天月のこと」
え、恋、僕が美香に恋をしている? 好きになっている? 僕と美香は幼なじみだ。いつも一緒にいた。だから気付かなかったのか? いや本当は、心のどこかで気付いてたんだ美香が好きだって…
気がつけば彼は、僕を放って歩いていた。
「ま、待ってくれ‼ まだ話は終わってない‼」
僕が呼び止めても彼は立ち止まったりしなかった。
僕は美香の事が好きだと分かった。でも美香は彼、榊修斗君のことが好き。
この行き場のない気持ちは、どうすればいいですか?
Side out 榊原 正輝




