その名も怪物新聞
世の中には不思議なことが多くある。
いや、まったく不思議でわからないことばかりと言った方がいい。
宇宙には宇宙人がいるようでUFOが各地に現れているし、エベレストやネス湖には得体のしれないUMA(未確認生物)がウジャウジャいるそうだ。墓場に行けば死ぬほど人魂を目撃できるし、目をつむればガッツリ予知夢を見れる。
この世は、一般人には分からない「闇」だらけだ。
その闇に生き、苦しみ、のたうち回り、そして消えていくもの、笑い、楽しみ、富や権力を得るものがいる。
このお話は、そんなオレが目撃した奴らを描く…コメディーだ。
俺の名前は森下零士、ある新聞社に勤務している。まあ、つまり新聞記者だ。
と言っても、いわゆる家に届くああいった新聞じゃない。
ここでキミたちに新聞業界のヒエラルキー(序列)を紹介しよう。
まず、なんと言っても頂点は五大紙。
朝のお日様の名前が付いたやつや、エブリデイなやつや、読んだり売ったりする名前のやつ、日本経済を語るような大きい新聞があるよな。
ああいうのをまとめて五大紙というのだが、あれは新聞界、いやマスコミ界の頂点に君臨する超貴族、業界のメジャーリーガー、オリュンポスの神々、このぐらい言えば嫌味に聞こえるか…この国の中枢に影響を与える超エリート集団だ。
その下に地方紙というのがある。
47都道府県に一つか二つあるいわゆる地元紙というやつ。超貴族の五大紙を落っこちたヤツが行くところだが、それでも彼らは地元の名士、地方豪族、藩の家老くらい、そんな偉い人たちがつくる新聞だ。
さらにもっと下、地域紙、タウン誌なんてのがある。
市町村の話題をポツポツ載せるようなご近所の新聞だ。
これらは下級武士、村の庄屋といったところだろうか。
いつでも、社員を募集していたりするが、そういう言うのはキツーイ広告営業をさせられるので注意しとけ。
さて、オレが記事を書いているのは、このどれにも属しない業界紙ってやつだ。
世の中には、いろんな種類の仕事がある。その仕事に関わる記事を専門に集めるのが業界紙記者の仕事だ。
最近はどいつもこいつも、新聞どころか雑誌する読まなくなっちまって、この業界でも不況の風が吹いている。
業界紙もご多分に漏れず、どこの会社も売り上げが減ってピーピー言っているのが実情だ。
まあ、しかしうちの新聞はちょっと違う。
「あんたが書いているのは何の業界の新聞か?」って聞きたいんだろ。
これが面白いんだ。
正式名称は「日本心霊新聞」。だが、ウチを知っている奴らはこう呼ぶ「怪物新聞」。