09. 秘密の部屋
秘密の部屋が気になりすぎて、結局あまり眠れなかった。
起きてからも何度か開けようとしてみたが開かず、そわそわしながらベルゼが来るのを待っていた。
待っている時は時間が遅く感じるが、それにしても今日は遅すぎる。
ここ数日、俺が起きたらすぐに部屋まで来ていたのに。寝不足かな?
「どうしたんだろうな」
ラーナに聞いてみても分からないらしく、俺は大人しく図書室から借りてきた他の悪魔についての本を読んで過ごした。
あ、ちなみにシャワールームもしっかり壁で覆われてたよ。これで周りを気にせずに入れる。
昼食を食べ終わってもベルゼは現れず、勉強の気分転換に図書室の掃除でもしようかと部屋を出ようとした時、ベルゼがやって来た。
「ベルゼ! よかった。待ってたんだよ!」
「申し訳ございません、サタン様。少々野暮用がございまして」
申し訳無さそうに頭を下げるベルゼを慌てて止める。
むしろ早く作ってくれて有難いくらいだ。
頭を上げさせて、本棚の前まで引っ張って行く。
「いろいろやってみたんだけど、開け方が分からなくてな……」
「それでしたら……まずこちらの背の赤い本を押し、その後こちらの黒い本を押します。そしてこちらを引き出し、引っ張ると――」
カコッと音がしたかと思うと、見た目と違い、本棚が軽い調子で動いた。
向こう側には壁があるのだが、よく見たら切れ込みがあり、押し扉になっているようだった。
「……開けるよ?」
「はい」
振り返ると生暖かい目をしたベルゼと目が合った。
馬鹿みたいにテンションが上がってるのは自覚済みだ。
慎重に、壁のドアを押す。
中には、簡易的なキッチンとテーブル、そして二人掛けのソファがあった。
「う、うおおお!!」
「ちなみに、寝室からの扉はベッドで隠れるように作ってあります」
「すごいぞ、これは! まさかこれもお前一人で?」
「いえ、今回は部下が」
「とにかくサンキューな! 早速、ここでお茶でも飲もうか!」
「かしこまりました」
ラーナがティーセットを取って来る間、あれこれと備品の説明を受ける。
入口の壁にある燭台には非常時のサイレンスイッチが付いているだとか、ソファの下には剣やナイフが隠されているとか……
使う日が来ない事を祈ろう。