07. 水周りのアイツ
虫やゴミの描写があります。
苦手な方はお気を付けてお進み下さい。
俺とベルゼ、ラーナの三人で手分けしながら自室を片付けていく。
思うんだけど、ベルゼ達って仕事何してんの?
俺もこっちに来てから仕事らしい仕事してないんだけど。
思い立ったら吉日って事で、早速近くにいたベルゼに問いかけてみた。
いや働かなくていいなら嬉しいけど、元が日本人だからか凄い不安になってくる。
「お仕事ですか?」
「ああ」
「そうですね……私はサタン様の行動の補佐、ベルフェゴールは書面での仕事がほぼですね」
「俺は?」
「サタン様は玉座の間にて希望者と謁見して頂きます」
「おお!」
お、なんか王様っぽいぞ。
テンションが上がりかけて、ふと気付く。
仕事がない=希望者がいない=人気がないまたは信用がない、じゃないのか?
「あー……最後に希望者が来たのはいつなんだ?」
「確か……百五十年は経っているかと」
「…………それだけ間が空くのは普通なのか?」
「いえ。昔はひっきりなしに訪れておりました。ただ……」
「ただ?」
「サタン様を怒らせた不届き者がおりまして、その者を公開処刑した所ぱったりと」
うん。途中からそんな気がしてた。
遠い目になった俺に気付いたのか、ベルゼが慌て出す。
どうせその理由だって、うっかりタメ口聞いたとか、唾が飛んだとか、どうでもいい理由なんだろ?
「ですが、あれは怒っても仕方のない事でした。何て言ったって、サタン様の御前に泥だらけで現れたのですから!」
泥だらけって……
そんな格好で魔王の前に現れるのもどうかしてるが、それくらい許してやれよぉ!
「確かに、最近は来訪者も減りましたが大丈夫です。諍いは絶えず起こります。じきにきっと、サタン様のご助力を求めてやって来ますよ」
「そう……だといいな」
来たら来たで困ってしまうが、流石に魔王がニートだとヤバいだろう。
っていうか百年以上ニートしてたのかよサタン。
あまりの衝撃にふらついて、近くのゴミ山を崩してしまった。
「だ、大丈夫ですか、サタン様!?」
「ああ……ん? これは……?」
「シャワールームでございます」
「えっと、何でガラス張り?」
「サタン様たっての希望でございましたので」
ガラス張りのシャワールームの中にも、びっしりゴミが詰まっていて、気が遠くなる。が、今言いたい事はそれじゃない!
マジかよ!?
ガラス張りのシャワールームとか恥ずかしすぎるんだけど!!
え、だって俺がシャワー浴びたり、便器に座ったりしてる時に誰か部屋に入って来たらどうすんの? え? 見せびらかせって事?
「な、なあベルゼ。あのさ、これ……作り変える事って出来る?」
「勿論でございます。サタン様がお望みであれば」
ベルゼの答えに安堵する。
もうこの際、俺の理想の部屋を作ってやる。
「よし! ベルゼ、部屋が片付いたら少し話がある」
「御意」
生で御意を聞けてほくほくした俺はすっかり忘れていた。
水周りには奴らが潜む事を――
積み上がったゴミを袋に詰め、シャワールームのドアを開く。
「やーっと開いぴぇえーッ!?」
すぐにやってきた何かの腐敗臭と、おびただしい数のカラフルな虫の大群に思わず叫んでいた。
基本的に虫無理なんだよ! こないだは踏み潰したけど、あれハイになってる時だけだから!!
「お任せ下さい!」
ベルゼが虫に向かって手を翳すと、虫は灰になって消えた。
もう大丈夫だと言うベルゼの言葉に、胸を撫で下ろす。
虫に驚いたのか、俺の声に驚いたのか、ラーナも離れた位置に縮こまっていた。
「――っはぁ、びっくりした……ありがとな、ベルゼ。助かったよ」
「い、いえこれしき!! ご無事で何よりでございます!」
大袈裟に聞こえるかもしれないが、本っ当に死を覚悟した。
ドアの脇にドロドロになった食べ物だった物が入った皿を見つけ、溜息を吐く。
一つ言わせてくれ……
――有機系のゴミはヤバいから!!




