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06. 情報収集


 ラーナが用意してくれた甘味と紅茶を間に、向かい合って座る。

 ここまでくるのにも随分と苦労した。メイドは座っちゃダメなんだとか。そこを無理を言って座ってもらったんだけど、もう疲れたよ。

 食後にチョコケーキはちょっと重いと思ったけど、これからの心労を考えたら糖分補給に丁度いいのかもしれない。


「ラーナ」


 びくりと肩を揺らして怯えた彼女に苦笑すると、ゆっくりと口を開く。

 怖がらせないように、慎重に言葉を選びながら。


「知っての通り、俺には記憶がない。だからいろいろ知りたいんだ。どんな事でもいい。……俺に教えてくれないか?」

「ええ!? でも、その……」


 動揺して、ラーナの視線が俺から反れるが、そのままじっと見つめ続ける。

 そうする事数秒、覚悟を決めた顔でラーナは小さく頷き、「分かりました」と言ってくれた。


「それじゃあ、まずは……サタン――俺ってどんな印象?」

「ええ!?」

「あ、記憶がなくなる前の俺ね」


 ナンパしてるみたいになってしまって、慌てて言葉を付け足すが、ラーナは言いにくそうに口をもごもごさせている。

 本人の印象って言いにくいもんね。


「それじゃ、ベルゼは?」

「ベ、ベルゼブブ様ですか? えっと……」

「ここだけの話だから。な?」

「はい……。では――あの方は、その……凄くしっかりとされた方だとは思いますが……ええっと……」

「うん?」

「私共、使用人には冷たく……あまり良い印象は……」

「そっか。うん。確かに昨日の言い方、キツかったな」

「ああっ、でも! サタン様に関しましては何も問題なく忠実なしも――側近です!」


 忠実な下僕(しもべ)って言おうとしたよね、今。

 昨日のベルゼの態度を思い出して頷いていた頭が驚きで止まってしまった。

 下僕って……フォローしようとして逆に失敗した、的な?

 とにかく、ベルゼは俺にとって信用してもいい人みたいで安心した。


 慌てる彼女にお茶を勧めて、落ち着くまで待つ。


「し、失礼しました」

「大丈夫。俺は何も聞いてない」

「ありがとうございます!」

「じゃあ次はベルちゃん」

「ベルフェゴール様は……何と言いますか、掴み所のないお方です」

「うん?」

「普段は面倒くさがってあまり自室から出て来られないのですが、偶に行動的になられると言いますか……あと、女性の時は美しいのですが男性の時は……その……」


 オジさんだもんね。うん。気持ちは分かるよ。

 曖昧にされた部分を察して頷く。


「あとベルフェゴール様は人間嫌いで有名です」

「そうなのか!?」

「はい。前に人間界へ行かれた際に何かあったようです」

「……そうか。他の者については何も知らないんだが、何か知っていた方がいい事とかあるか? 要注意人物とか」

「それは勿論サ――……あっいえ、何でもございません!」


 ……そりゃあ(サタン)が一番要注意だろうね。

 中身入れ替わる前のサタンで、自分の事じゃないけど少しショック……って、落ち込んでる場合じゃなくて!


「それで、誰だ?」

「はいぃ! えっと、リリス様と……アドラメレク様でしょうか。どちらも鋭いと言いますか……そういえば、最近はあまり姿をお見かけしませんが、グラシャ・ラボラス様が過去や未来について詳しいという話を聞いた事がございます」


 はあ!?

 過去や未来が分かるってチートじゃん! 会ったら終わりだし。絶対会わないようにしないと!

 それにしてもアドラメレクの他にリリスってのも出てきたぞ……。

 名前は聞いた事あるけど……何だったかな。

 ベルゼブブやベルフェゴールなら、よくゲームにも出てきたから名前も知ってたけど、アドラメレクとかグラシャなんとかだとかは聞いた事ない。

 ……名前覚えるのも一苦労だ。


 遠い目になった俺を心配したのか、早く解放されたかったのか、そわそわし始めたラーナの「そろそろ」って言葉で、お開きになった。


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