53. 父親
「娘に会いたいって……まさか監禁されているのかっ!?」
咄嗟に思い出したのは、先のマーガレットの事件。
誘拐、監禁等の事態ならば、急ぎで謁見したいという理由も分かる。
顔を青くしての大声に、男は一瞬呆けた顔をしたあと苦笑いを浮かべた。
「いえ、それは既に解決しているのです。慈悲深いサタン様によって」
「え?」
……どうしよう。
言っている意味が分からない。
ちらりとベルゼを見ると、ハッキリ言えとでも言いた気にイライラした様子。
でも俺が解決したって言うんなら、フルカスの件のことだよね?
「えっと……フルカスの?」
「はい! そちらに私の娘、サラが居たと聞き、迎えに参りました」
「サラの!? そうだったのか」
言われてみれば、この男も黒髪黒目。
親子と言われれば、似てる様に見えなくもない。
じっくり見すぎて、男は気まず気に視線を逸らしてしまった。
「サラなら確かにこの城に匿っている。ただ、今は少し出ていて、すぐに会わせてやることは出来ない」
「そう、なのですか……」
「彼女が戻って来たらすぐに知らせるから、客室で待っていてくれないか?」
「はい。心遣い、感謝致します」
会えないと聞いて沈んだ顔が、ほっと安堵したものになった。
迎えに来たまま後ろに控えていたロナルドに目配せして、今度こそ飯に行こうと腰を上げる。
「――名は名乗らないのか?」
後ろから聞こえたベルゼの鋭い声にハッとした。
事件性の方に意識が向いて、肝心なことを聞いてなかった。
男は深く頭を下げると、アンドラスだと告げた。
アンドラス――覚えやすい名前でよかった。
アンドラスが安堵する。……うん、覚えた。
急に浮かんだ洒落に、顔の筋肉を総動員させる。
こんなしょうもないことで笑うなんて、俺も年をとったものだ。
……とにかく、サラの今後が決まりそうで安心した。
迎えに来るくらいだから、ボニーの家みたいな状況じゃないんだろう。
サラ、戻って来たらびっくりするだろうなぁ、なんて驚く彼女の顔を想像して嬉しい気持ちになった。




