52. 傷が癒えて
「サタン様っ、どうでしょう? 似合いますでしょうか?」
真新しいメイド服に身を包み、くるくるとその場で回って見せたボニー。
普段はお淑やかな彼女だが、今日は普段よりテンション高めなようだ。
フルカス邸から助け出し、意識を取り戻すのは早かったボニーとカリーナだが、怪我の治りは遅かった。
中でもボニーは最後まで医務室のお世話になっていたから、元気に動き回れることが嬉しいんだろう。
そんなボニーとカリーナを、この度魔王城で雇うこととなった。
即戦力のビルが入ったとはいえ、まだまだ猫の手も借りたい状態。
それでも最近は応募者も来る様にはなったらしく、ロナルドが喜んでいた。
「よく似合ってる。けど、張り切りすぎて無理するなよ?」
「ふふっ、カリーナが戻って来るまでに仕事を覚えて、彼女を驚かせてみせますわっ」
「それじゃあ、私もしっかり教えないとですね。では参りましょうか」
「はい!」
先輩メイドに連れられて行くボニーを笑顔で見送る。
ボニーより先に回復したカリーナは、彼女が言う通り今は城に居ない。一度実家に戻り、家族に元気な顔を見せるためだ。
半年前に連れ去られてぶりだと言うから、両親もさぞ心配していたことだろう。
カリーナにも聞いてみたが、自分は売られた側だから、と悲しげにしていた。
事情を知らなかったとはいえ、無神経なことを聞いてしまったことを今でも後悔している。
四人の内二人はメイドとして残り、マーガレットはアスタロトと結婚。
残るサラは今は俺の事で協力するために残ってもらっているが、それから先どうするかはカリーナの件で失敗した俺はまだ聞けていない。
そうそう、元の身体に戻るための魔法陣についてだけど、どうやら発動には魔力の他にも色々と必要らしくて、サラに頼んで用意してもらっている。
魔物の血とか龍の鱗とか、ヤバそうなものも混じってたんだけど、それを余裕で調達出来るって言うサラっていったい……
とにかく、サラが準備に取り掛かってくれている間、俺は嬉しいのを隠して普段通りの生活をしないといけない訳だが、これがまた難しい。
気が付けば顔は弛み、すれ違う人達に何度「何かいい事あったんですか」と聞かれたか。
「――それで、如何かと。……サタン様?」
「えっ、ああ何でもない。すまないが、もう一度頼む」
今日の謁見も終わり、そろそろ昼食に、と移動していた俺の元に、困り顔のロナルドがやって来た。
考え事に集中して全く聞いていなかった俺に、ロナルドは苦笑してもう一度繰り返してくれた。
「はい。今日の謁見の時間は終了したのですが、どうしてもサタン様にお会いしたいという方が見えられてまして」
「明日にしろ」
「まぁまぁ。いいよ、急ぎかもしれないし。今から向かうから、謁見の間に通してくれ」
「はい」
膠もなく断ったベルゼを宥めて、来た道を戻る。
腹ぺこの俺のために言ってくれているって分かってるから、なかなか怒れないんだよなぁ。
謁見の間に入ると、頭を下げたまだ若い男が。
若いっていっても、魔力で老け具合が左右されるから、本当のところは分かんないけど。
「――それで、今日はどうした」
「……はい。私の娘に、会いたいのです」




